新聞記者OBが書くニュース物語 中村仁のブログ

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CO2対策めぐる不可解な言葉

2015年01月07日 | 経済

  直訳の用語に誤った語感

                      2015年1月7日

 

  北日本を襲う豪雪被害を目にして、これも地球温暖化の影響だといいます。夏の台風、猛烈な低気圧の襲来のときの災害も、地球温暖化が人間社会に牙を向けたとされます。そうなのでしょう。それにつけて思うのは、地球環境問題の用語があまりにも不可解で、実感が伴わないどころか、正反対のイメージを持ってしまっていることです。早く、緊迫感がわいてくる言葉に変えてくれませんかね。

 

 「地球温暖化の原因となるCO2の排出量を抑制しよう」とか、「温室効果ガスの削減をしなければならない」とかいいますよね。これらの問題を扱う国際協議のことを「気候変動枠組み条約」の国際会議を呼びます。日本語に直すといずれも妙な語感を持つ言葉なのですね。

 

 「地球温暖化」は「global warming」の直訳でしょうね。産業革命以降の気温上昇を2度以内に抑えることが国際目標ですから、厳密にいうと「温暖化」の範囲に入るのでしょう。日本では「温暖な気候」、「気候温暖な土地」のように、肯定的にとらえる語感を持つ言葉ですね。豪雪のシーンにはいかにも、「温暖化」には違和感があります。「地球温暖化」が世界各地で猛威をふるう異常気象の原因だとすれば、せめて「気温上昇誘発」、あるいは「気象激変」を組み合わせた言葉にして欲しいですね。

 

 温室効果ガスはどうでしょうか。これも「greenhouse effect gas」からきているのでしょう。日本語では「温室」も肯定的な意味がこめられています。「温室」は果物、野菜を育て、恵みをもたらしてくれます。「温室効果ガス」なんて呼んでいたら、「いいことではないですか」が大方の反応でしょう。豪雪、台風被害に絡んで、「温室効果ガスが気候変動の原因」と解説するのは、どこか場違いな感じを与えます。「自然災害誘発」、「生態系破壊」ガスに変えたらどうでしょうか。

 

 気候変動もいけませんね。これはまさに「climate change」の英語の直訳でしょうね。官僚の用語は感情を排除し、刺激的な語感を避ける傾向があります。「気候変動」はいかにもやさしい語感です。「異常気象抑止枠組み条約」のほうがぐさりと胸に迫ってきます。「地球環境破壊防止条約」でもいいですよ。

 

 日本で薬物中毒事件に関連して、「危険ハーブ」という呼ばれ方がしばらく使われていました。「ハーブ」は基本的には人体にいいものなので、この呼称は緊迫感がありませんでした。今では「危険ドラッグ」ですね。「温暖化」、「温室効果」は、この「ハーブ」に似たような肯定的なニュアンスがあります。中国が苦しみ始めている「大気汚染物質」は、言葉を耳にしたとたん、いかに有害な物質であることが分ります。環境用語にも工夫が必要です。

 

 CO2抑制で注目される太陽光、水力、風力などを「再生可能エネルギー」と呼んでいます。これらは自然エネルギーで補充はいくらでもできますから、石油のように枯渇することはないにせよ、「再生可能」は一種の誤訳か超訳です。これは英語の「renewable energy」からきています。本来、「renewできる」には「再生」という意味はなく、正しく直訳すれば、「枯渇せず、補給できるエネルギー」でしょうね。

 

 日本語の「再生可能」には「リサイクル」という意味がはいっていますので、誤訳ですね。素直に「自然エネルギー」とすると、「石油、石炭も自然界にそのままの形で存在するから自然エネルギーだ」といわれかねません。石油、石炭と同じ扱いにするわけにはいかず、意図的な誤訳で通したのでしょう。「地球温暖化」や「温室効果ガス」こそ、意図的な誤訳、超訳が必要だと思いますね。他の国ではどんな呼びかたをしているのでしょうか。

 

 

 

 

 

 

 



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