2025年5月23日
政権交代なら世襲規制も
江藤拓農相が「コメは買ったことがない。支援者がたくさん下さる。売るほどある」と述べ、辞職に追い込まれました。「たくさん頂いているので、『こども食堂』や施設などに寄付しています」とでもいえば、「さすが」となったことでしょう。世襲で楽して当選できた凡庸な政治家の典型なのかもしれません。父親の隆美氏は建設相、運輸相を務めました。
驚いたのは、後任に小泉進次郎氏(父親は純一郎・元首相)が就任し、官邸で石破首相(父親は元自治相)、林官房長官(父親は元蔵相、厚生相)の3人で撮った写真です。3人とも世襲議員です。辞めさせらたは江藤氏も世襲、新たに就任した小泉氏も世襲、選んだ石破氏も世襲、介添え役の林氏も世襲という構図に私は強い違和感を持ちました。
これほど日本政治の行き詰まりを象徴するケースは滅多にありません。もっと違ったアングルで撮る知恵が働かなかったのでしょう。政治感覚の鈍さを立証しました。世襲の彼らには自然のことであっても、一般の有権者は首を傾げます。
江藤氏の凡庸さ、石破首相の政治感覚の鈍さに比べれば、林、小泉氏は政治的能力はあるのかもかもしれず、世襲政治家だから全て凡庸ということではないでしょう。私が懸念するのは、日本政界の世襲議員比率は主要国で突出して高いという点です。自民党議員の世襲比率は約40%です。ChatGPTに質問しましたら、韓国10ー15%、米国5-10%(州議会を含む)、英国数%などと答えました。
世襲は地盤(後援会組織)、看板(知名度)、カバン(政治資金)を継げるので、特に小選挙区では圧倒的に有利です。第一回目の立候補での当選確率は世襲の60-70%に対し、非世襲は20ー30%と大差がついています。自民党が圧倒的に世襲比率が高く、「親から子へ」「跡継ぎないなければ、婿を迎えて事実上の世襲」などでこのままでは世襲議員がどんどん増えていくに違いない。
世襲の問題として、非世襲に比べ「知名度で有利になる」、「親の政治資金を継げる」、「親の後援会組織をフルに使える」ので、非世襲で立候補する人にとっては、高い参入障壁になる。さらに「世襲議員は似たような家庭、経済環境で育ち、多元的な価値観が政界に持ち込まれない」ことも問題です。
経済界、官界、学界、文化関係などに比べ、自民党政界は特異な閉鎖的、家業化した世界です。このことが凡庸な政治家でも出世でき、凡庸な閣僚が次々に起用され、日本の政治が劣化する大きな原因になっています。岸田・前首相当時、自分の総理秘書官に、議員でもない自分の息子を疑問にも思わず起用し、ひんしゅくを買いました。一般の人たちと世襲の人たちの感覚の違いが分かりました。
「親と同一選挙区からは立候補できないようにする」、「政治資金の承継に規制をかける」、「政界に新しい風を吹き込めるよう、多様な人材が参入できる道を開く」などが必要です。そうはいっても、世襲議員は既得権益を持ち、首相、閣僚、党幹部になるほど世襲議員が多く、自ら政治改革を進めようとしません。政権交代があれば、世襲規制のいいチャンスとなります。
夏の参院選に向けた世論調査(読売新聞、5月19日付)によると、「自公政権が過半数を維持するのがよいと思いますかー思う39%、思わない50%」、「自民中心の政権の継続の望みますかー望む36%、野党中心の政権に交代がよいー48%」、「石破内閣を支持する31%、支持しない56%」となりました。ネット戦略を駆使する政党、政治家も増えており、ネット世代が政治を大きく変える可能性が高まっています。
この流れのままなら、自公大敗、政権交代の実現がありえます。そうなった場合、新政権は目先の選挙対策の大衆迎合的なポピュリズムを避ける。トランプ氏のような強権的、独裁的な政治トップが各国で台頭している政治環境の中で、日本の国際的地位をどう確保していくかという高い次元の政治が求められます。
小泉・新農相は「コメ担当大臣として頑張る」と語りました。当面の問題はコメ価格の引き下げにしても、コメ価格の高止まりを本音では歓迎している「コメ農家、コメ議員、農水省」のトランアングルの改革という大作業に取り組み、さらに食料安全保障政策の再構築を望みます。
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