地福寺ブログ

地福寺は、宮崎県延岡市の山あいにある曹洞宗のお寺です。
永代供養のご相談も承ります。

虫供養

2012-06-30 23:42:37 | お寺の行事
今日は、近くの集落の「虫供養(むしくよう)」でした。
インターネットで虫供養を調べてみると、収穫を迎える秋に行われることが多いようですが、
私の住む地区では毎年、田植えが済んだこの時期に行われます。
その集落の各家の家門繁栄、子孫長久、および秋の五穀豊穣と、
田畑を起こした際に、知らず知らずと命を奪ってしまった虫達への供養として、
「虫供養」を行っています。
昨年は紙を切るところを紹介していますが、
今回はその続き、お札を印刷するところをご紹介しましょう。

各家へ二枚づつお配りするお札です。
「蜈蚣蚰蜒毒蛇之類(ごこうゆうえんどくじゃのるい)」と書かれています。
(虫編の文字が5つも並んでる…)


蜈蚣(ごこう)とは、多数の関節と足をもつ口から毒液を出して小昆虫を捕える…つまりムカデのこと。
蚰蜒(ゆうえん)とは、足が長く敏活な節足動物、つまりゲジゲジの類です。
毒蛇(どくじゃ)は、そのまま、ヘビの類ですね。

虫が苦手は私には、googleで「蜈蚣」と画像検索かけるだけで、
PCのディスプレイがとんでもないことになります…(汗)。

このような木の原版があり、これに墨を薄く塗って印刷していきます。
この木板は師匠曰く「いつから使っているのか分からない」くらい貴重なものです。
万一、破損したり紛失したりしても、替えはありません。


あまり墨を塗りすぎると、文字がつぶれてしまいます。薄く薄く墨を塗ります…。


バレンで押さえます。小学校の時の版画を思い出すなあ。


む、いい感じで写っているようです。


別に、ちょっと大きめのお札も作ります。こちらは一家に一枚です。


こちらには「金光明最勝王経」と書かれています。

このお経を読むことで、その国の安泰を願ったお経だそうですから、
それを転じて集落の無事を願ったのでしょうか…。(勉強不足ですいません)

私たちは実際に声に出して読むのではなく、お経本をめくって風を送ることで、
読誦(どくじゅ)することに替えています。

これらのお札を持って、地区の公民館や営農集会所へ赴きます。
今回はお寺で刷って持って行きましたが、本来はその地区の皆さんで作ってもらいます。
自分たちの地区のため、皆でお札を作ることに意味があるとも言えます。

写真中央に立ててある薄いお経本が「金光明最勝王経」です。
全部で10巻からありますが、どれも古いもので、壊れてしまっている巻もあります。

ちなみにその10冊を納める経箱には明治29年作(!)、と書かれていました。
西暦だと1896年です。日清戦争が終わった頃ですね~。「坂の上の雲」の時代そのままだ。
アメリカのヘンリー・フォードが世界で初めて大量生産される自動車を作った年だそうですよ。

その箱の写真はこちら。北方町の大工、山内さんがお作りになったようです。
旧暦5月の作、と書いてありますから、この虫供養の時期にあわせて新調したのでしょうかね♪
その年のお米の出来はどうだったんでしょうか。


思えば私自身、草刈りの際にマムシを見つけて、すでに今年だけで2匹、切っています。
朝のお勤めをしていると、ムカデさん達が本堂にトコトコ出てくることがありますが、
お引き取りを願う際に、命まで頂いてしまう場合があります。
もちろん噛まれたくありませんし、噛まれたら大変なことになりますから、
ある面では仕方がないのですが…。

しかし、私たちと虫たち、どちらが先にこの里に住んでいたかというと、
たぶん私たち人間の方が、彼らの生活圏に後から入ってきてるんですよね。
そう考えると、あまり大きな顔もできないのかなと思います。

そういうことに思いを馳せると、自然に謙虚な気持ちになります。
これも、毎日を過ごす上で大事なことなのでしょうね。

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2 コメント

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Unknown (中島)
2012-07-01 10:52:54
古い版木ですね。小学校の図工での版画を思い出すとありますが、いっそのこと御自分で新たに彫ったらいかがですか?文字だけですからそう困難ではないかもしれません。ハンディルーターを併用するとラクです。ご自分で作った版木は将来また寺の家宝になるかもしれません。
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なるほど (副住職)
2012-07-02 14:30:33
中島さん、いつもコメントありがとうございます。
そうですね…自分で作るというのも魅力的ですねぇ。
ただ、しみ込んだ墨汁に歴史を感じたりして、この古さもお札の御利益のうちのように感じております(笑)。
いつかは自作に挑戦してみたいですが、これが使えるうちは大切に使い続けたいと思います♪
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