カンボジアだより シーライツ

国際子ども権利センターのカンボジアプロジェクト・スタッフによるカンボジアの子どもとプロジェクトについてのお便り

ポルノ被害からカンボジアの子どもを守るために ~岡田外相にメッセージ

2009年10月20日 20時05分33秒 | カンボジアの子ども
こんにちは。甲斐田です。
10月2日にカンボジアの少年たちの裸の写真を撮影した日本人男性の有罪判決の記事を紹介しました。

これまでもカンボジアの子どものポルノ写真を撮影した日本人が何人か逮捕されていますが、ブログを読むと、同様のことをして取り締まられることなく日本に帰国した人は数多くいることが想像されます。

昨年、ブラジルで開かれた「第3回子どもの性的搾取に反対する世界会議」では、日本で子どもポルノに関して2つの点において規制がされていないことが全体会議でも名指しで批判されました(注1)。
1つは、日本で、「子ども買春・子どもポルノ禁止法」により、子どもポルノを製造・販売することは禁止されていても、持っていること(単純所持)が禁止されていないということです。この「所持」が禁止されていないのは、主要8カ国(G8)の中では日本とロシアだけです(注2)。

子どもポルノの被害は世界的に深刻な問題になっていますが、日本でも今年上半期の子どもポルノ事件の被害に遭った子どもの数は、218人に上り、過去最高となりました。

ブラジル会議で日本が批判された2点目は、日本で子どもを性的に虐待する画像(マンガ、アニメ、ゲームなどの表現物)が規制されていないことです(アメリカ、ドイツ、フランスではすでに規制)。会議最終日に、「リオ協定」という宣言と行動計画が採択されたのですが、こうしたバーチャル画像に関しても、製造、提供、所持、閲覧などを犯罪と見なすことがその行動計画に盛り込まれました。

また、2009年9月16日に開催された、第12回国連人権理事会では、ブラジル会議のフォローアップの一環として、「児童の売買、児童買春、児童ポルノに関する特別報告者のレポート」が発表されました。

 このレポートのなかでは、子どもポルノの定義にバーチャルな画像や18歳以上が演じる擬似ポルノも含まれること、こうした画像を含む子どもポルノの所持・アクセス・閲覧についても処罰化すること、すべてのインターネットのプロバイダーへのブロッキング(注3)の義務化などが提言されています。加えて、インターネットには国境がなく、世界中のすべての子どもを保護するためには、国際的な協力関係の構築が必要であるとレポートでは指摘されています。そのほか具体的な提言として、各国政府に対し、「子どもを搾取するバーチャルな(仮想の)画像や描写を含む子どもポルノの製造、提供、意図的な入手および所持、また、たとえ子どもとの身体的な接触がなくとも、そのような画像の意図的な使用、アクセス、閲覧の処罰化」を含む法律の整備を求めています。

10月3日、カンボジアを公式訪問された岡田外相と、カンボジアで活動するNGOの間で懇親会が開かれました。シーライツは、ほかのNGOとともに岡田外相へメッセージと資料を提出しました。一言メッセージでは、子どもポルノに関する規制強化を新政府に期待していることを伝え、より詳しい資料では、カンボジア政府が人身売買業者など子どもの人権を侵害する加害者を法にのっとって処罰できるように、法の執行力強化において日本政府がさらに支援することを要請しました。鳩山首相の新政権のもと、一日も早く法改正がなされ、カンボジアやほかの国で子どもがポルノの被害に遭うことがなくなることを願っています。

写真は、ブラジル会議でインターネット上の子どもポルノ被害について報告する人々です。©シーライツ

(注1)詳しくは、シーライツ発行の「子ども買春・子どもポルノ・子どもの人身売買をなくすために ~ブラジル会議報告書」をご覧ください。
http://www.c-rights.org/shiryou/book/index.html

(注2)これに対して、日本ユニセフ協会が中心となり、「子どもポルノ問題に関する緊急要望書」の署名活動など「なくそう!子どもポルノ」キャンペーンを実施しています。シーライツも呼びかけ人・賛同団体としてかかわっています。
http://www.unicef.or.jp/special/0705/index.html

(注3)ブロッキングとは、ネット利用者やNGOから問題サイトの通報を受けて警察がブラックリストを作り、それをもとにプロバイダー各社が接続を遮断する制度。
 日本の警察もこの導入を検討している。警察庁の「No!児童ポルノ」ページhttp://www.npa.go.jp/safetylife/syonen/no_cp/ 

ストリートチルドレンのためのチャイルドセーフ・センター ―ストリートチルドレンを助けることとは?―

2009年10月16日 18時23分32秒 | カンボジアの子ども
こんにちは、筒井です。今回はストリートチルドレンについて、少し深く考えてみたいと思います。早速ですが、みなさんの中には、きっと以下のような経験をお持ちの方が多くいらっしゃるのではないでしょうか?

「海外旅行中に、特に途上国の都市の路上で、物売りや物乞いをしている子どもたち―いわゆるストリートチルドレン―に会ったけれど、どう接していいか分からなかった。」

私も学生のときに同様の経験をし、非常に大きなショックを受けました。過酷な環境で食べ物にも困っているのだから、売り物を積極的に買ったり、お金を恵むことはいいことだ。いや、お金をあげるのは倫理的によくないので、かわりに食べ物を渡すのがいいだろう。ストリートチルドレンを助けるとはどういうことなのか、いろんな意見や考え方があると思います。

そこで、今回ご紹介したいのが、ストリートチルドレンの保護や社会復帰を目指して、彼らと共にユニークな活動を展開しているフレンズというNGOのチャイルドセーフ事業です。チャイルドセーフ・センターでマネージャーを務めるマオさんにお話を伺ってきました。(写真はマオさん。チャイルドセーフ・センターにて。)

*チャイルドセーフに関する情報は、以下のサイトをご覧下さい。
http://www.childsafe-international.org/CAMBODIA/CSCambodia.asp


あなたならどうしますか?


「私たちは、子どもが危うい状況に置かれている場面をしばしば目にすることがありますが、問題はその危険性を認識できないこと、あるいは対処の方法を知らないことです。」チャイルドセーフ・センターのマオさんは、真剣な眼差しでこう話してくれました。

カンボジアでは、観光産業の拡大に伴い、法の未整備や汚職につけこむかたちでセックスツーリストが流入しました。その中には多くの子ども買春者も含まれており、性的搾取の被害にあうリスクが高いのがストリートチルドレンです。また、路上生活を続けることは、健全な成長を妨げるような仕事に追いやられたり、教育の機会を奪われることにつながります。

一般の旅行者でも気がつかないうちに路上での児童労働に加担してしまうことがあります。たとえば、物売りや物乞いの子どもに直面したら、お金はもちろんのこと、クッキーやキャンディなどの食べ物も渡してはいけないとマオさんは言います。子どもが路上で稼げたり食べていけることになり、子どもの路上生活を助長することになるからです。

「そういうときは、笑顔で話しかけ、チャイルドセーフ事業のことを教えてあげてください。もし知らない子どもがいたら、すぐにセンターまで電話してください。」
センターでは、カウンセリングや家族との再統合、刑事訴追、医療支援、補習授業、職業訓練など、緊急に必要なサポートや適切なサービスの紹介を行っています。また、観光客を対象に情報提供を行い、ストリートチルドレンを助ける方法を伝えています。

ストリートチルドレンを性的搾取や児童労働などの様々な危険から守るために、フレンズは旅行者向けに7つのアドバイスとホットラインの番号を載せたリーフレットを配布しています。また、旅行者と接する機会の多いホテル、レストラン、インターネットカフェ、タクシードライバー、旅行代理店などを対象に研修を提供し、ネットワークを構築することによってストリートチルドレンを取り巻く様々な危険を取り除く活動に努めています。トレーナーは各業者の職場に直接赴き、実地研修を行います。研修を終えた業者たちは、認定メンバーとしてフレンズのウェブサイトなどで紹介されるようになり、利用者の獲得につながります。C-Rightsは、旅行者向けリーフレットの日本語版作成と研修費を支援しています。

「子どもにとって危険なことに注意を払い、どうすれば子どもを守れるのか、しっかりと判断することが重要です。」2007年にオープンしたセンターは、心のこもったスタッフに支えられ、今日も活動に勤しんでいます。

ストリートチルドレンを助けるとはどういうことなのか、みなさんの答えは見つかりましたか?

1日30円からの国際協力・マンスリーサポーターお友達紹介キャンペーン実施中!
http://www.c-rights.org/join/monthly.html

人身売買レポートでカンボジア降格、後退の傾向

2009年10月13日 13時25分00秒 | 人身売買・性的虐待 被害者支援
こんにちは。甲斐田です。
毎年6月、米国務省は、各国の人身売買への取り組み状況を調査した結果を報告書にまとめて発表し、政府の努力に関する4段階でのランク付けを行っています。「ランク1」は、米国「人身売買被害者保護法」に基づく最低基準を十分に満たしている国、「ランク2」は、同基準を満たしていないが、同基準到達のため相当の努力をしている国、「ランク2監視対象」は、同基準を満たすために相当の努力をしている一方、成果が出ていない国、「ランク3」は、同基準を満たしておらず改善努力もなされていない国としてリストされています。
この報告書(通称:TIPレポート)に関しては判断基準があいまいなどの理由から批判もありますが、日本では、2004年に日本が監視対象国としてリストにランクされたことにより(ほとんどの先進国はランク1)、マスコミも政府も注目し、2005年、刑法が改正され人身売買罪の創設につながりました。

さて、ある国がランク3になると、米国の経済制裁の対象ともなります。実際、カンボジアが2005年にランク3に引き下げられたときは、ゆるやかなものではありましたが、経済制裁を受けました。その後カンボジアは、2年間、監視対象国としてランクづけされたあと、2008年は4年ぶりにランク2に格上げされました。にもかかわらず、今年は再びランク2の監視対象国として格下げされてしまいました。http://www.state.gov/g/tip/rls/tiprpt/2009/
今回は、それについての記事をボランティアの方が翻訳してくださったので紹介します。

 2008年に人身売買取締法が改正されたにもかかわらず、なぜカンボジアはランクが下がったのでしょうか? 詳しくは、今年のカンボジアについてのTIPレポートの和訳をシーライツのホームページに掲載しましたので、そちらを読んでいただければ詳しくご理解いただけると思いますがhttp://www.c-rights.org/6-1/、この法律について警官が十分理解しておらず、人身売買業者ではなく、路上で働くセックスワーカーばかりが逮捕されているという状況があります。さらにひどいことに、その拘留中に警官や社会福祉省のスタッフからレイプされたり、お金を強要されたりしているひどいケースも数件報告されているそうです。
セックスワーカーたちのネットワークは、TIPレポートがこの点を指摘したことを評価し、レポートの提言にそってセックスワーカーを逮捕するのではなく、人身売買業者を逮捕するようにすべきだという意見を出しています。
http://www.sexworkeurope.org/site/index.php?option=com_content&task=view&id=295&Itemid=186

人身売買取締法の執行の問題点については、今後もフォローしていきたいと思います。

カンボジアの子どもの人身売買を防止するためご支援ください。
詳しくは http://www.c-rights.org/join/donation.html をご覧ください。
http://blogimg.goo.ne.jp/user_image/4f/ab/95d0c05681ba28d60d5ab5f8b1c75861.jpg

図は、米国務省の人身売買報告書2008のカンボジアより
出所:www.state.gov/g/tip/rls/tiprpt/2008/


人身売買レポートでカンボジア降格、後退の傾向


カンボジア・デイリー紙ウィークリーレビュー2009年6月13-19日号
ベサニー・リンゼイ、ヌウ・ヴァナリン記者

 米国務省発表の人身売買に関する年次レポートにおいて、カンボジアは再度評価を下げられ、昨年の格上げからわずか一年での降格となった。
昨年は、人身売買を防止する最低基準の到達に向けた「めざましい努力」によりカンボジアは同省規定のランク2に格上げされていたが、2009年のレポートでは改善傾向の後退がみられ、ランク2の監視リストに載ることとなった。

 同レポートでは、人身売買に関与する者(共謀する役人を含む)の有罪判決・処罰、及び被害者保護に対してカンボジア政府の取り組みに進展がないと報告されている。
ランク2(※1)は、人身売買を防止する最低基準を満たしてはいないものの、基準到達の適切な努力は行っているとみなされる。
米国務省は、カンボジア当局に対し2008年に人身売買取締法が施行されて以来、有罪判決件数が減少していることを指摘。2008年4月から2009年3月までの間にわずか12名しか有罪判決を受けておらず、これは前年同期間の52名を大きく下回る。また警察内部および司法関係者の間においても汚職がはびこり、カンボジアの人身売買問題が深刻化していると言及している。

 レポートによると、警察や司法関係者を含む、多くの個人が直接的ないしは間接的に人身売買に関与しているという見方が一般的である。一部の地元警察や役人が買春宿の営業を黙認する見返りに金銭を強要したり、オーナーから賄賂を受け取っていたりすることは周知の事実であり、連日不正が行われていることもあるという。

 レポートでは様々な事例が報告されており、買春や使用人労働を目的として売られた子ども、カラオケバーや買春宿で売春を強いられた女性、タイの漁船やマレーシアのプランテーションで労働させられた男性などが挙げられている。
レポートが公表された同日に米大使館のスポークスマンであるジョン・ジョンソン氏のコメントはなかったが、米大使館によるプレスリリースでは、前年度に人身売買に対する取り組みに後退が見られたとしている。

 カンボジア内務省 人身売買対策局のビッス・キムホン局長は、新レポートの内容は認識していないが、警察は最善を尽くしていると述べている。「我々は、犯罪者を逮捕・起訴するために捜査及び取締りを強化している。人身売買の防止を目的として関連ニュースを放送して、人々に呼びかけている。」とも話した。
「2009年中に警察当局は、数多くの人身売買事例を取り締まり、防止してきた。」とキムホン氏は付け加えたが、外出先であったため具体的な統計は示されなかった。
閣僚評議会のスポークスマンであるファイ・シファン氏は、政府が人身売買に十分な措置をとっていないとする報告内容を容認できないとしている。「クメール文化では女性は尊重される」とし、政府は人身売買の防止に全力をあげているとシファン氏は話している。

 カンボジアの人権団体Licadho(Cambodian League for the Promotion and Defence of Human Rights; 人権の保護と普及のためのカンボジア連盟)のナリー・ピロージュ事務局長は、「Licadhoはレポートにまだ目を通しておらず」、米国務省がカンボジアの格下げをした理由を把握していないとして、レポート内容についてはコメントを避けた。

(※1)Trafficking in Persons Report 2009 Tier Placements より


子どもを性的虐待した元受刑者、被害者少年の母親と結婚か

2009年10月06日 18時39分30秒 | 人身売買・性的虐待 被害者支援
こんにちは。甲斐田です。

先日、子どもへの性的虐待の隠れ蓑に養子縁組という手口を使おうとしたスウェーデン人男性の記事を紹介しました。今回は、同じように少年を性的虐待したベルギー人男性が少年の母親と結婚しようとしているという記事を紹介します。

 カンボジアでは、子どもを狙う外国人が少年だけでなく、その親ともまず仲良くなり、物資の支援提供などをしたあとに子どもを性的に虐待するというやり方が報告されています。いったん支援を受けた家族は子どもが虐待されているのを知っても何も言えなくなってしまう状況になるようです。(このようにまず子どもと仲良くなり、その後、性的虐待をすることを英語ではgroomingと呼ばれていて、インターネット上でもこの手口が使われています。)
優しくしてくれたおとなを信用したあとに性虐待に遭ってしまい、その上、親が何も助けてくれなかった経験をした子どもたちは、どれだけ深い心の傷を負っているでしょうか。

その後、このベルギー人男性の結婚計画に対して、カンボジアのNGO数団体が抗議し、国外追放されることとなりました。その詳細についての記事は別途掲載します。

写真は子どもの性的搾取に取り組むNGO・APLEの報告書“Street Pedophilia” in Cambodiaより ©APLE

子どもの性的搾取をなくすためにご支援ください。
詳しくは、http://www.c-rights.org/join/donation.html

子どもを性的虐待した元受刑者、被害者少年の母親と結婚か

カンボジアデイリー紙 2009年6月6-12日ウィークリー・レビュー
プラック・チャン・トゥル記者

 バンテアイ・ミエン罪で実刑判決をうけた事件の被害者とされる少年と、近頃、同居を始めていた。
州警察の人身売買対策部門オム・サッス署長は、デザールが当時13歳の少年を性的虐待した罪による3年の服役を終え、4月5日にプノンペンのプレイ・ソー刑務所を出所したと伝えた。デザールは被害者少年の母親サオ・ニイさんと5月25日に婚約し、6月3日にカンボジアを後にした。「婚姻関係の書類」を作成するためにベルギーに向かったという。

 当初デザールは懲役18年の有罪判決を受けたが、控訴審で懲役3年に大幅軽減され、最高裁もこれを支持した。彼は6月1日に婚約者と共に同州セレイ・サオポアン郡トゥック・トゥラー集合村を出てプノンペンに向かったと、サッス署長は伝える。署長は、「この婚約が更なる子どもの性的搾取を目的とした隠れ蓑かどうかを調査中で、ニイさんの親族からは、村長やらが列席した婚約パーティーの写真を見せてもらった」と話している。先月、警察と地元のNGO、APLE(Action Pour Les Enfants=子どものための活動)は、デザールが現在16歳となる被害者の少年に引き続き虐待を加える懸念を表明、ともに暮らす少年の弟の安全も憂慮している。

 デザールは子どもへの性的虐待の常習犯で、1994年にベルギーで子どもをレイプし虐待した事件で有罪判決を受け、懲役5年の刑で3年間服役している。
サッス署長によると、デザールは日中にニイさん宅を訪れ、夜はゲストハウスに滞在したと、ニイさんの親族が話しているという。

 APLE カンボジア事務所サムレアング・セイラ代表は、APLEが他の子ども保護団体とともに、デザールのカンボジア再入国阻止に取り組んでいると伝えている。「デザールは好ましくない人物なので、彼のビザを発行しないよう働きかけている。デザールは養豚場を所有していて、カンボジアに永住するつもりだ」とも語った。

(翻訳・植田あき恵 2009年8月6日)



子どもポルノの罪で日本人男性に有罪判決

2009年10月02日 20時12分48秒 | 人身売買・性的虐待 被害者支援
甲斐田です。

先日、お伝えしたように、カンボジアでは昨年、日本人男性が子どもポルノの罪で逮捕される事件が起きました。この事件に対して判決が出たという記事をボランティアの方に訳していただきましたので、ご紹介します。

子どもポルノに関する情報は限られていて、実際は何件くらいの事件がカンボジアで発生しているのかを把握することは不可能ですが、ブログに掲載されることもあり、少なくない数の子供たちが被害にあっていることは確かです。記事の最後には、このように加害者に判決が出るのは、カンボジア政府が本気で処罰していこう姿勢の表れだとしていますが、判決による損害賠償金額はあまりにも低いものです。

取締りが弱く、わずかなお金で子どもを利用できるという理由で、カンボジアやその他の国で日本人が子どもを性的搾取しに旅行するのは、人権の観点からも倫理的にも容認しがたい問題です。

日本から海外に子どもを搾取しに出かける「子どもセックスツアー child sex tourism(注)」に対しては、シーライツとしてこれまでも反対してきましたが、もっと大きな効果的な運動にするにはどのようにすればいいか考えていきたいと思います。そのためにも、ひとりでも多くのみなさんが運動に参加してくださることを願っています。

(注)Child Sex Tourismをなくしていこうとする運動は1990年代から世界的に広がっています。詳しくは、シーライツ発行「ブラジル会議報告書」(700円)をご覧ください。

写真は子どもセックスツアーをなくす活動をASEAN諸国で実施しているオーストラリアのNGO、Child Wiseが作成したポスター。©Child Wise

子どもの性的搾取をなくすためにご支援ください。
詳しくは、http://www.c-rights.org/join/donation.html


子どもポルノの罪で日本人男性に有罪判決

カンボジアデイリー紙 2009年7月11-17日 ウィークリー・レビュー
プラック・チャン・トゥル記者

キム・エング裁判長によれば、プレア・シハヌーク市裁判所は、少年7人の裸の写真を撮影したとして、日本国籍中川俊一被告(32歳)に懲役6年の判決を下した。
エング裁判長は、2日にわたる公判で同被告に子どもポルノ製作に係る罪で有罪判決を言い渡したほか、被害者の少年(11歳から15歳)一人につき50万リエル(125米国ドル相当)の賠償金支払い命令を下したことを明らかにした。
被告は全面的に起訴事実を認め、少年がきれいだったため、個人的鑑賞のために撮影しただけだと主張しているという。公判では少年7人が揃って中川被告の関与を証言した。

地域住民は昨年8月17日に中川被告がオートレスビーチ付近で少年たちの裸を撮影し、2~5米国ドルをそれぞれに支払っているのを目撃し、これを警察に通報した。
警察によると、中川被告は自身が製作中の本のモデルとして少年たちを撮影したと主張していた。

子どもの性的搾取の問題に取り組むNGO「Action Pour Les Enfants(子どものための活動、以下APLE)」のペン・マネッス氏は、被害者の代理人として、少年たちの母親らが賠償金額を不服とし、上訴する意向であることを伝えた。
「少年の被った被害の大きさに比べ、一人あたり50万リエルはあまりにも不十分」とマネッス氏は述べている。

APLE カンボジア事務所サムレアング・セイラ代表によれば、中川被告は昨年改正人身売買取締法が施行されて以降、子どもポルノに係る罪で有罪判決を受けた初の外国人となる。
「本事件は、カンボジアが子どもポルノの製造及び提供行為を本気で罰するようになったことを示している」と同氏は述べている。

(翻訳・植田あき恵 2009年8月6日)

女性たちに「立ち上がって闘おう」と伝えている ~ソマリーさんインタビュー記事 その2

2009年09月25日 13時10分03秒 | 人身売買・性的虐待 被害者支援
こんにちは。甲斐田です。

前回に引き続き、シーライツが支援するアフェシップの創設者であるソマリー・マムさんに関する記事を会員の小味さんに翻訳していただきましたのでお届けします。今回はソマリーさんが、人身売買の被害に遭った女性たちをどのようにエンパワーしようとしているか、そして、彼女がドナーから支援を得るにあたってどのような苦労をしているかが描かれています。

8月にシーライツ主催のスタディツアーでアフェシップの施設の保育室(シーライツ支援)を訪問し、保育室を利用しながら職業訓練を受けている若いお母さんたちと交流をもちました。短い交流でしたが、訪問した私たちが、体験を乗り越えて力強く生きていこうとしている彼女たちを応援したいという気持ちが伝わったのか、別れるとき、女性たちは笑顔と涙で見送ってくれて、私たちもとても励まされました。

写真はそのときの様子です。

AFESIPのトムディセンターで保育サービスを利用する女性たち。右は保育士のニエットさん。ニエットさんはアフェシップの職員と結婚し、もうすぐお子さんが生まれます。©C-Rights

困難の中から立ち上がってきたヒーロー~ソマリー・マムとのインタビュー

An unlikely hero: Interview with Somaly Mam
2009年6月5日
INSEAD(訳注:フランスとシンガポールにキャンパスを持つビジネススクール・大学院)
出典:UNIAP Cambodia News Digest May 29,2009


ソマリー・マムは、努力家で、精力的で、影響力のある、疲れを知らないリーダーだ。これが、タイム誌の「世界に最も影響を与えた100人」さらにCNNヒーローに選ばれた理由でもある。
ソマリー・マムは、ヒーローっぽくない。彼女自身が人身売買の被害者で、12歳の時にカンボジアの買春宿に売られた。約10年後、あるフランス人の援助関係者の助けで逃げ出し、1993年にパリへ渡った。2年後、カンボジアに帰国して、「Agir Pour les Femmes en Situation Precaire (AFESIP)-困難な状況に置かれた女性のための活動」を創立した。39歳の今、彼女とその団体は、カンボジアや他のアジア諸国で、何千人もの子どもや女性たちを救出し、教育を保障し、職業訓練を提供している。世界中で、人身売買に対するキャンペーンも実施している。先日、ソマリー・マムはシンガポールのINSEADのアジア・キャンパスにおける講演会に先立って、'INSEAD Knowledge'(訳注:動画やニュースレターを配信しているサイト)のインタビューに応じた。


「私たちは(人身売買の被害者に)どうやったら立ち上がって闘えるのかを説明します。彼女たちに、立ち上がって世界中に希望があることを示そう、と話しています。」数々の困難を経験したにも関わらず、ソマリー・マムは希望に溢れている。彼女が最も苛立つことは、汚職への対処である。人身売買業者と組織だった犯罪グループは、裁判所や警察に影響を及ぼし、彼女の仕事を振り出しに戻してしまう。「彼らはお金があり、何でもお金で解決できてしまう」と言う。

マムの団体は、草の根レベルで活動し、人身売買被害者である女性や子どもたちを助けている。彼女は、地球規模の問題解決には、ローカルNGOと大きな国際機関の双方の協働が必要だと信じてはいるが、その調整には、行動する時間よりもはるかに話し合いの時間が多いと感じている。マムの時間の過ごし方は、大きなNGO職員の過ごし方とは違う。彼女にとっては一日一日が貴重だが、大きなNGOにとっては、1日も1年もそんなに長い時間ととらえられていない。「買春宿にいれば、1日はとても長いのです。」とマムは言う。

AFESIPはお金も必要だけれど、同時に、世界全体を啓発するボランティアや援助も必要としている。「どの女性もどの子どもも虐待されたくない」と彼女は言う。「もし風俗街で彼女たちとすれ違っても、見下さないでほしい。」それ以上に、人身売買との闘いで必要なのは、男性への教育だろう。「本当にこの問題を終わりにしたかったら、需要をなくさなければなりません。」

AFESIPによって救出された女性や子どもたちは、安心できる居場所、教育、職業訓練を得てやっと、永久に買春宿と縁を切ることができる。「彼女たちに法律家になってほしい。自らの大変な経験をふまえて、決して買収されることはないでしょう。」とマムは言う。
彼女は、Lexis-Nexisが、財団に貢献してくれたことを評価する。資金支援だけでなく、助成金申請書作成の専門技術、技術支援、専門家たちの時間も提供してくれた。ある中堅管理職は、仕事時間の半分を彼女のサポートに費やしてくれたそうだ。

マムと彼女の団体は、世界的なセレブ、アンジェリーナ・ジョリーやスーザン・サランドンなどからの世間の注目を引くサポートも受けている。こうした人の影響力と人脈は、多くの人の関心を集めるために役立つと、マムは言う。「私が欲しいのはお金だけではなく、みなさんに来てもらって、私の世界を見て欲しいのです。この世界はとても底が深くて、私は5千人の少女を救出したけれども、まだまだたくさんいるんです。」そして、より小さな子どもが人身売買業者に狙われるようになってきていると、マムは付け加える。

ドナーや援助関係者への対応は、死の恐怖より頭の痛いことだと、マムは言う。「分をわきまえて話さなければならないけど、私はそういう教育を受けることができませんでした。」「彼らに私を理解してもらうことは大変骨が折れますが、これは私の課題です。」
「私のゴール? 子どもたちを助けて幸せにすること」カンボジアの現場で、マムは少女たちを少しずつ、でも着実に助けている。

(翻訳・小味かおる 2009年8月2日)

就任のご挨拶

2009年09月18日 23時01分31秒 | カンボジアの子ども
こんにちは、カンボジア事務所長の筒井です。今日はいいお知らせがあります。ついに、念願の新しい駐在員がカンボジア事務所に着任しました!さっそく、彼女に自己紹介を始めてもらいたいと思います。これまでは、ブログの更新が滞っていましたが、今後は2人で協力して、定期的更新を目指します!

初めまして。8月末よりカンボジア事務所に赴任いたしました、長島千野(ながしま・ちや)と申します。今後、筒井と一緒に「カンボジアだより」を担当させていただきます。それでは簡単に自己紹介させていただきます。

米国の大学を卒業後、日本に帰国して半導体の企業で約5年働いておりました。そのかたわら、貧困・人権問題などに関心があり、自分に出来る些細なことでも、と思いNGOでファンドレイジング等のボランティアを行っておりました。シーライツで仕事をする決意をした理由は、もっと多くの時間を「大切」と思えることに費やしたい、企業で働いている自分は、自分らしさに欠けるという思いが積み重なったからです。児童労働反対世界デ-のイベントでシーライツと出会い、子どもの人身売買、性的搾取、児童労働などの被害を出さないようにする「予防」の活動の方に力を入れていること、また日本人が直接支援するのでなく、カンボジアの文化を良く理解している現地パートナーNGOと協働でプロジェクトを行っていることに共感し、現地で活動したいという気持ちから、カンボジア事務所で働こうと思いました。 カンボジアでの性的搾取の加害者に多くの日本人がいることも、シーライツのカンボジアの活動に関わりたいと強い思いを抱いた理由の一つです。

プロジェクト地やパートナーNGOを実際に訪問し、頑張っている子どもたちやパートナーNGOのスタッフの姿を見たとき、本当に嬉しく思いました!子どもの人身売買、性的搾取、児童労働を予防するネットワークメンバーの子どもたちは、自分自身とコミュニティーの人びとを守ろうと一所懸命活動していて、その姿がとても誇らしげでした。そんな子どもたちと周りの大人たちの力になれるように、頑張っていきたいです。

さて、カンボジアに来て早1ヶ月が経ちました。私は、米国とヨーロッパ諸国しか行ったことがなかったので、来る前は何かと不安だったのですが、不思議なことに着いた瞬間からあまり違和感がありませんでした。街は想像していたより栄えていて、交通手段(バイクタクシーとバイクに2輪座席がついたトゥクトゥクしかないので)以外はあまり不便さを感じません。そして会う人ほぼ全員(特にカンボジア人)に、「カンボジア人だと思った!」と言われ、いつもクメール語で話し掛けられ、なんだかここが自分の祖国のような気さえしてきた今日この頃です。

皆さまには、今後より多くの現地の情報配信を行っていけたらと思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。



買春の被害にあった少女たちを救出 ~ソマリーさん記事その1

2009年09月15日 18時52分41秒 | 人身売買・性的虐待 被害者支援
こんにちは。甲斐田です。
ボイス・オブ・アメリカ(カンボジア語ラジオ放送)のウェブサイトに掲載されたソマリー・マムさん(シーライツが支援するアフェシップの創設者)に関する記事を会員の小味さんが訳してくださったのでご紹介します。

先日、アフェシップのHIV/エイズ教育の担当スタッフに同行して、セックスワーカーたちの女性に会ったのですが、ピアエデュケーター(同じ仕事、状況をもつ仲間に教育をする人のこと。ほとんどがボランティア)の女性が誇りをもって活動をしている姿に胸を打たれました。

昨年、制定された新しい人身売買禁止法がセックスワーカーの女性たちに及ぼしている影響、人身売買の被害にあった少女たちの置かれている状況、アフェシップの活動、少女たちに対するソマリーさんの思いをみなさんに知っていただければと思います。

写真はHIV/エイズ教育を行うソマリーさんの様子です。
©AFESIP

子ども買春をなくすための活動を支援してください。詳しくは、http://www.c-rights.org/join/donation.html

セックスワーカーの救出、そして保護
Rescued Sex Workers Find Refuge
By Ker Yann, VOA Khmer
2009年5月21日

カー・ヤン VOAクメール(*Voice Of Americaカンボジア語放送)
出典:http://www.voanews.com/Khmer/archive/2009-05/2009-05-21-voa1.cfm

プノンペンのセックスワーカーはプノンペンの路上でも客をとっている。大規模な不法性産業を規制する近年のカンボジア警察当局の努力にも関わらず、このビジネスは盛んになる一方だ。閉鎖される買春宿がある一方、新たに違法な宿が営業を始めている。 カンボジアの法律では、売春は違法と明確に定義されていないが、性産業に難色を示す当局により、定期的に路上摘発が実施されている(訳注:公共の場での客引きは違法行為であるため)。カンボジアでは毎年、何百人もの少女たちが人身売買業者に誘拐され、買春宿に売られている。彼女たちの多くは長年の精神的・肉体的苦痛に耐え、1日に20人以上もの客を取らされる。

 同時に、セックスワーカーの増加は、ビアガーデンやカラオケクラブやバーにまで及んでいる。「バーガール」と呼ばれる女性たちの中には、貧困から脱却するためにセックスワークを選ぶ人たちもいるが、買春宿を拠点としたセックスワーカーの大多数は人身売買の被害者だ。

 自身も人身売買の被害者であったソマリー・マムが設立した団体(AFESIPアフェシップ)は、人身売買の被害者の救出と社会復帰を支援している。マムは、カンボジアの大規模な人身売買に関わる組織だった犯罪ネットワークや公務員の汚職を非難する。「犯罪組織のネットワークにより、人身売買のシステムが構築されました。ブローカーは村から村へ少女を探しに行きます。結婚ということで連れ出したり、プノンペンで高収入のいい仕事があると約束したりして、少女達をそそのかします。被害者の多くは、あまり教育を受けていないので、罠に陥り、都市に来ると、買春宿に閉じ込められるんです。」とマムは話す。

 ソマリー・マムの団体は、1996年の設立以来、カンボジア全土の買春宿から、4千人を越える性的奴隷にさせられた少女や女性たちを救出してきた。現在は3つのセンターで、250人を超える少女たちを保護している。半数以上は18歳以下で、多くの少女たちが長年にわたる買春宿での拷問や虐待に耐えた。

 ヴァン・シナーは、13歳の時にどのようにベトナムから誘い出され、カンボジアの売春宿に閉じ込められたかを泣きながら話す。「何度も叩かれ、多くの客を取らなければなりませんでした。拒否したら、電気ショックで拷問されるか、辛い唐辛子を食べさせられました。地下室に閉じ込められ、1日に15人から20人の客を取らないと、叩きのめされ、さらに拷問されました。」

 ソマリー・マムは、「買春宿は、生き地獄」と自らも耐えた長年の虐待を振り返る。

「苛酷な経験や劣悪な状況下で生きなくてはならなくても、あなたが悪いという意味ではないんです。私たちは、自らのおぞましい経験と向き合って、それらを何か前向きなことへと転化しなければならないけれども、自らの身に起こったことを決して忘れることはできません。いつも記憶がよみがえってきます。私たちは多くの犠牲者を救出しなければなりませんが、私たちも彼女らの愛に救われるのです。」

 セックスワークに巻き込まれた女性は、はかりしれない精神的・肉体的な障害を抱える。AIDSやその他の性感染症などと同様に、多くの被害者が心理的にも傷ついている。マ・ライ女医は、ほとんどの少女には長期セラピーが必要と話す。

「センターに来るほとんどの少女が深刻な精神障害を抱えています。すぐ怒ったり、頻繁に叫んだり、とにかく死にたがったりします。こうしたとき、彼女たちの体や命は大切な価値あるものだと話して勇気づける定期的なカウンセリングを行なっています。そうしたカウンセリングは非常に多くの時間を要します。」

ソマリー・マムのセンターは、少女たちが新しい友だちをつくり、失った子ども時代を取り戻せるよう愛らしい環境を整えている。精神面と肉体的な傷の両方から癒すように、ソマリー・マムの団体では、さらなる教育と職業訓練を行なっている。
少女たちがセンターを離れた後に就職できるよう、正規クラスに併行して職業訓練も提供されている。しかし、主たる目標は、少女たちが自らの人生に意味を見出すこと、明るい未来を描くことを教えることである。人身売買は、世界で第3位の収益性の高い犯罪ビジネス(profitable)で、今日では大西洋三角貿易(奴隷貿易)時代の最盛時よりも多くの奴隷が存在する。ここにいる少女たちは幸運を掴んだ一握りにすぎず、活動の輪を広げて性産業を撲滅に追い込まなければ、カンボジアや世界中で何千もの少女たちが待ちうける運命から逃れられない。
(翻訳・小味かおる 2009年8月2日)


スウェーデン人男性、子どもへの性犯罪で起訴される

2009年09月11日 13時53分40秒 | 人身売買・性的虐待 被害者支援

こんにちは。甲斐田です。長らく更新が滞っていてすみませんでした。
近々ごあいさつさせていただきますが、カンボジア事務所に新しくスタッフが入りましたので、これからは、頻繁に更新できるようになると思います。

カンボジアで子どもたちを性的搾取から守る努力は、政府、NGOによって続けられていますが、残念ながら、子どもの性的搾取の事件は後を絶ちません。カンボジアでは、近年、性的搾取をするために養子縁組という手段が使われることがあるのですが、最近も、スウェーデン人男性がその手口を使おうとして逮捕された事件がありました。その事件についての記事がプノンペンポスト2009年5月11日に掲載され、シーライツ会員の小味かおるさんに訳していただきましたので、ご紹介します。

なお、これから、子どもの性的搾取にかかわる記事を随時掲載していく予定です。

近々、この逮捕されていた男性が住んでいたとされる同じ場所のシアヌークビル(カンボジアのビーチリゾート)で数人の子どもの裸の写真を撮って逮捕された日本人についての記事も掲載します。

写真は多くの外国人が訪れるビーチ、シアヌークビル
出所:http://www.sihanoukville-cambodia.com/aboutbottomstuff/pics.html
写真は本文とは関係がありません。


スウェーデン人男性、子どもへの性犯罪で起訴される

プノンペンポスト2009年5月11日
チュラン・チャムロウン記者
Swede charged with underage sex crimes
The Phnom Penh Post: May 11, 2009


62歳男性は1981年スウェーデンで幼児性的虐待の罪で調査されていた――人身売買局員談。

プノンペン市裁判所はスウェーデン国籍の62歳男性を子どもに対する性犯罪の罪で訴追した。ヨハン・アブラヒム・エスコリは、有罪となれば10年の禁固刑となる。
プノンペン市の人身売買対策青少年保護局ケオ・ティア局長は、エスコリ容疑者は猥褻行為と少年3人との性交渉の2つの罪に問われていると語った(訳注:15歳未満の子どもとの性行為はカンボジアの人身売買禁止法で犯罪と規定されている)。

容疑者は水曜日、自分の養子と主張する9歳のカンボジア少年と部屋を共にしていたプノンペン市アンコール・インターナショナル・ホテルにて逮捕された、と局長は話し、「容疑者は、猥褻行為と未成年との性交渉の2つの罪で拘留中と聞いています」。

エスコリは1981年にスウェーデンで子どもへの性犯罪で告訴されたが証拠不十分で禁固刑にならなかった、また、2006年末にはカンボジアで3人の少年に対する犯罪が疑われていたと、局長は付け加えた。

フランスの子ども保護NGOのAction Pour Les Enfants(APLE=子どものための行動)のカンボジア事務所長サムレアン・セイラ氏は、逮捕前にエスコリは5人の少年と暮らしていたと語った。

APLEは、彼が定期的に複数の少年を連れてレストランへ来るという通報を受けて、2007年から彼のシハヌークビルの自宅を見張っていた。

「エスコリ容疑者は2007年に地元警察に尋問されたが逮捕には至らなかった」とセイラ氏は話し、昨年、彼が少年の養子縁組を申請したが当局の認可が得られず却下された、とも続けた。

「この男は一番好きな9歳の少年を養子にするために母親への依頼書に記入しました。これは他の外国人がとってきた手口で、母親は警察や地元NGOからの疑いを避けるために500ドルと引き換えに承諾しました」とセイラ氏は話している。


就任のご挨拶

2009年06月12日 09時00分58秒 | Weblog
 こんにちは!カンボジア事務所の筒井博司(つつい・ひろし)です。早いもので、私がカンボジアに赴任してから3ヶ月が経ちました。これからは、私が「カンボジアだより」を担当することになりました。今回は、初めての投稿ということで、同じく最近赴任したインターンのチュープとあわせて、私の自己紹介から始めたいと思います。

 私は、五島列島の北部に位置する小さな島で生まれ育ちました。島中の誰もが顔見知りのようなところであり、海に密着した生活を送っていました。高校を卒業してからは、当時の私には想像もできなかったくらい移動の連続です。カンボジアに来るまでは、愛知、米国、メキシコ、東京、ボリビアなどに住んだことがあります。

 大学2年生の終わりに、バックパッカーとして、ロサンゼルスを出発点とし、パナマ運河を目指して旅行したことがあります。私にとって、初めてのバックパック旅行でした。旅の途中で寄ったメキシコ・シティでのことです。ある日、私は次の旅路を計画しながら、喫茶店で読書に耽っていました。ふと、まわりに目を向けると、店の中には私のような外国人旅行者や裕福そうなメキシコ人がいる一方、窓の外には物乞いをする先住民の母子の姿がありました。「何かがおかしい。」私がマイノリティ問題に本格的に取り組むようになったのは、今になって振り返れば、この経験が大きかったと思います。

 大学卒業後、移民研究を志し米国に渡り、特にメキシコ・シティの先住民移民コミュニティに焦点を絞り、メキシコの国内移民について修士論文をまとめました。日本に帰ってからは、あるNGOの東京事務所にて、人身売買・性的搾取の被害者を保護するためのアドボカシー活動に取り組みました。ボリビアでは、協力隊員としてアンデスの渓谷地帯の先住民集落で農村開発に携わり、そこでは経済ブームを迎えた東部に出稼ぎに行く人々を目の当たりにしました。このように、私が関わってきたこれらの人々には、移動しているマイノリティであるという共通点が見出せます。

 私は、マイノリティの声に常に敏感でありたいと思っています。マイノリティとはその社会の権力関係において少数派に属している人たちのことであり、彼らが発する声とはその社会から排除された声です。少し大げさに聞こえるかもしれませんが、私がこのような意識を強く抱くようになったのは、私が離島出身であることがかなり影響したのではないかと、自分では思っています。

 今でこそ、私は自分の故郷に心から誇りを持っていますが、高校を卒業してしばらくは離島出身であることに対する劣等感を克服できずにいました。島に住んでいたころ、テレビや雑誌を通じてもたらされる情報に憧れを抱く一方で、親近感を覚えることはできず、それなのに追従しなければならないような違和感に苛まれていました。私たちが受け取る情報は、ある一定の人たちの意見が特別に強く反映されていて、その結果排除されている人たちもいるのではないか。私は、いつしかこのように考え始めるようになりました。視点をどこに置くかによって、世界は変わって見えてきます。

 ラテンアメリカからカンボジアに移ったことは、地理的には大きな変化だったかもしれません。しかし、カンボジアにおける子どもの人身売買、買春、危険な労働などをマイノリティ問題だととらえると、私の問題意識は一貫していたともいえます。また、日本、米国、メキシコ、ボリビアとカンボジアを比較することによって、カンボジアが抱える諸問題を相対的に理解することもできるでしょう。何より、新しい土地に飛び込むことは、不安がいつもつきまとうとはいえ、何事にも代えがたいわくわくする経験です。

 数ヶ月前までは、カンボジアで働くことは想像すらできませんでしたが、実は、留学中の大親友がカンボジア人であり、深い縁も感じているところです。「カンボジアだより」では、現地の息遣いが聞こえてくるような記事を意識し、みなさまにお届けしたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 続いて、4月からカンボジア事務所にインターンとして赴任いたしました、在日カンボジア人のチュープ・サラーンの自己紹介です。5歳の時、インドシナ難民として日本に渡り、日本の暮らしがかれこれ19年になります。現在、大学院博士前期課程の2年生で、カンボジア家族の子育てについて研究しております。また、日本では外国人青年による運営組織「すたんどばいみー」という団体で活動をしています。外国籍の子どもたちを対象に、学習補充を行っています。

 実は、私は2005年に10ヶ月間ほどカンボジア事務所で通訳や翻訳のお仕事をさせていただいた経験があります。当時、私がカンボジアで経験した多くのことが貴重であったと、今になって改めて感じています。今回、またシーライツと一緒にお仕事ができて大変嬉しく思っております。よろしくお願いいたします。