風化させられない事実『ユナイテッド93』(2006年12本目)

もうすぐ5年目のあの日

2001年9月11日・・・アメリカで同時多発テロ発生

アメリカの東海岸上空で4機の民間旅客機がハイジャックされ、
そのうちの2機があのニューヨークの貿易センタービルに突入。
未曾有の大惨事を引き起こした。
これは誰もが知っている事件だと思う。

さらにもう1機はワシントンのアメリカ国防省(ペンタゴン)に
突入。
これは日本だと意外と知らない人が多いかもしれないな。

残りの1機は自爆テロをせず、なぜかペンシルバニアの草原に墜落。
この飛行機の存在を覚えている日本人はかなり少ないのでは??
その飛行機ユナイテッド航空の93便こそがこの映画の舞台。
この飛行機が空港を飛び立ち墜落するまでの様子を描いたのがこの映画だ。

日本の飛行機が赤軍にハイジャックされた当時と違って、
現代は通信機器が非常に発達している。
機内の電話や乗客の持っている携帯電話から、乗務員、乗客が全員死亡してもこの飛行機の中で起きていたことの多くが記録となって残っているそうだ。

それを基に作られているのでフィクションとノンフィクションの
中間のような作品・・・というか限りなく真実に近い映画ということだろう。

監督のポール・グリーングラスはこの映画の製作にあたって乗客や乗務員の
遺族にあって映画製作の許可をとったとういうことだ。
この話を聞いて正直安心した。

あの事件を題材に曲りなりにも映画で公開となればお金が動く。
遺族の許可もなくそれで興行するのはどんなもんなの?
と思っていた懸念は消えた。

遺族はやはりこの事件を風化させたくないし、自分の家族が何をしていたのか
映画に記録として残してほしいという意見が多かったらしい。
だから登場人物はすべてあの飛行機の乗客名簿に忠実に設定されている。
たった一人だけいた日本人の乗客の役もちゃんと日本人の役者さんが演じている。

ぞして多くの乗客や乗務員を演じた役者は演じる役の遺族に会って
言葉を交わしているそうだ。

また最後のエンドロールを見ていると『Him Self』(彼自身)という
単語が多くでてくる。
空港の管制官や軍人の何人かの役で実際その場にいた本人が演じている。
さらにパイロットや乗務員も実際ユナイテッド航空の人が演じていたりと
できるだけ事実に近づける努力をしている。

犯人はこのユナイテッド93便をホワイトハウスに突入させようと
していたようだがそれを土壇場で救ったのは乗客の勇気。

単なるパニック映画としてなら展開にイライラするとかあるかもしれないが、
現実に事件に関わった人は情報不足でもっとイライラしていたと思う。
それを共有するのもこの映画の鑑賞することの要素の一つだ。

映画の核心部分はこのサイトで

一般的な映画と違って論評は難しい。
映画を見終わった後ショッキングな出来事とは認識していたけど、
どこか対岸の火事的な見方をしていたこの『同時多発テロ』に対して
初めて心から悲しみを感じ、怒りを感じた。

これは映画の力と素直に評価したい。
それでも決してプロパガンダ的な作りではないとオレは感じた。
真実を重視し誠実に作っている作品だと思う。

オレはハイジャック犯がテロの成功をイスラムの神に祈り
乗客や乗員は家族や愛する人のもとに帰れることを
キリスト教の神に祈るところがとても印象的だった。

同じ人間同士がまるで正反対のことを飛行機が地面に激突するその瞬間まで
それぞれの神に祈り続ける。
どうしてこんなに信心深い人たち双方が命を落とさなくてはならないのか?
そんなに大切なものってこの世にあるのか?

本当に神様がいるならこんな争いをこの星からなくしてほしいと
オレは祈りたい。

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