「宮崎正弘の国際情勢解題」
令和五年(2023)4月18(火曜日)
通巻第7711号 <前日発行>
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李尚福・国防部長。モスクワでプーチン大統領と直に会談した。
李が武器弾薬を取り仕切る装備部長を経験しているポイントが重要
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4月16日、李尚福(中華人民共和国国防部長)がモスクワへ入ると、プーチン大統領が待ち構えていた。プーチンは「中露は軍事技術協力のほか恒常的な情報交換を行い、極東だけでなく欧州方面でも陸海空軍が合同演習を実施している」と指摘した。
李尚福は、「国防相就任後最初の外遊先にロシアを選んだのは中露の戦略的関係の重要性を強調するためだ」とした。会談にはショイグ国防相が同席した。
異例という他はない。
李は中央軍事委員会メンバーであるが、ナンバー4,国務委員ではあるものの上席に三人が存在し、全国代表大会の代表委員の一人に過ぎない。プーチンがあうとすれば、ナンバーツーの張又侠(上将)か、何衛東(上将)がふさわしく、外交ルールの常識に照らせば、格下であって大統領がじきじきに会う必要がない筈である。
なぜプーチン大統領は李尚福をクレムリン宮殿に迎えたのか?
切迫した理由があるからだ。この謎は李尚福国防相の経歴である。装備部長を経験しているポイントが重要なのだ。武器・弾薬、兵站を司るポスト、すなわちロシアが不足している武器をいかに西側の目を誤魔化してロシアに供与するかという喫緊の課題がある。
中国共産党中央軍事委員会のメンバーは、主席が習近平(党総書記、国家主席)。ナンバーツーはふたりいて、張又侠(上将)と何衛東(上将)。そして委員に李尚福(上将)、劉振立(国務委員)、苗華(海軍上将)、張昇民(中央軍事委員会規律検査委員会書記)である。
李尚福は1958年四川省成都市生まれの65歳。国防科技大学卒。上将(=陸軍大将。2019年から)。2017年に張又侠の後任となって裝備発展部長をつとめ、ことし三月の全人代で国防部長に任命された。
さて中国軍とロシア軍、そしてイランという三角関係をみると軍事協力は固い絆がある。
げんに中国とロシア海軍は、昨師走に六日間の合同軍事演習を実施しており、中国海軍はミサイル駆逐艦や潜水艦などが参加、ロシア側からミサイル巡洋艦やフリゲート艦が参加した。
2023年二月には中露が南アフリカを加えての3カ国海軍の合同演習をインド洋の南ア沖で実施している。インドへの牽制である。
▲イラン沖で中国とロシアとイラン軍が合同演習を展開
そして2023年三月にはアラビア海のイラン沖で、ロシア、中国、イラン海軍による合同海上軍事演習を行い注目された。
露海軍から極超音速巡航ミサイル「ツィルコン」を搭載したフリゲート艦「アドミラル・ゴルシコフ」。中国海軍、イラン海軍からも駆逐艦やフリゲート艦が参加した。
ウクライナ戦争ではロシアがイランから調達した自爆型ドローン(無人機)を使用した。中国は侵攻以後もロシアから原油や天然ガスの輸入を増やしてきた。西側は中国がロシアへ本格的な兵器供与に乗り出すのではないかと懸念を表明してきた。
これらの軍事演習の経過から成り立つ推測は、プーチンvs李尚福会談で、中国が武器・弾薬、ミサイル、ドローン等をイラン経由でロシアへ供与する闇ルートに関して協議された筈なのである。
実際に中国とイランの軍事関係は異常なほど強い。かつて筆者、テヘランに取材したおりのイラン航空機は東京から北京経由だった。
北京で相当数の中国軍人が乗り込んできた。テヘラン空港へ着くと出迎えのイラン軍人が歓迎し、両国の軍人交流はこれほど強いのかと思った。
すでにイランはロシアにドローン、ならびに武器弾薬をカスピ海ルートでロシアへ輸送した「実績」がある。
イランのコンテナ船はカスピ海を北上し、ロシアの港へ直航、この抜け道の航路の観察を西側はやや怠りがちだったようだ。
令和五年(2023)4月18(火曜日)
通巻第7711号 <前日発行>
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李尚福・国防部長。モスクワでプーチン大統領と直に会談した。
李が武器弾薬を取り仕切る装備部長を経験しているポイントが重要
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4月16日、李尚福(中華人民共和国国防部長)がモスクワへ入ると、プーチン大統領が待ち構えていた。プーチンは「中露は軍事技術協力のほか恒常的な情報交換を行い、極東だけでなく欧州方面でも陸海空軍が合同演習を実施している」と指摘した。
李尚福は、「国防相就任後最初の外遊先にロシアを選んだのは中露の戦略的関係の重要性を強調するためだ」とした。会談にはショイグ国防相が同席した。
異例という他はない。
李は中央軍事委員会メンバーであるが、ナンバー4,国務委員ではあるものの上席に三人が存在し、全国代表大会の代表委員の一人に過ぎない。プーチンがあうとすれば、ナンバーツーの張又侠(上将)か、何衛東(上将)がふさわしく、外交ルールの常識に照らせば、格下であって大統領がじきじきに会う必要がない筈である。
なぜプーチン大統領は李尚福をクレムリン宮殿に迎えたのか?
切迫した理由があるからだ。この謎は李尚福国防相の経歴である。装備部長を経験しているポイントが重要なのだ。武器・弾薬、兵站を司るポスト、すなわちロシアが不足している武器をいかに西側の目を誤魔化してロシアに供与するかという喫緊の課題がある。
中国共産党中央軍事委員会のメンバーは、主席が習近平(党総書記、国家主席)。ナンバーツーはふたりいて、張又侠(上将)と何衛東(上将)。そして委員に李尚福(上将)、劉振立(国務委員)、苗華(海軍上将)、張昇民(中央軍事委員会規律検査委員会書記)である。
李尚福は1958年四川省成都市生まれの65歳。国防科技大学卒。上将(=陸軍大将。2019年から)。2017年に張又侠の後任となって裝備発展部長をつとめ、ことし三月の全人代で国防部長に任命された。
さて中国軍とロシア軍、そしてイランという三角関係をみると軍事協力は固い絆がある。
げんに中国とロシア海軍は、昨師走に六日間の合同軍事演習を実施しており、中国海軍はミサイル駆逐艦や潜水艦などが参加、ロシア側からミサイル巡洋艦やフリゲート艦が参加した。
2023年二月には中露が南アフリカを加えての3カ国海軍の合同演習をインド洋の南ア沖で実施している。インドへの牽制である。
▲イラン沖で中国とロシアとイラン軍が合同演習を展開
そして2023年三月にはアラビア海のイラン沖で、ロシア、中国、イラン海軍による合同海上軍事演習を行い注目された。
露海軍から極超音速巡航ミサイル「ツィルコン」を搭載したフリゲート艦「アドミラル・ゴルシコフ」。中国海軍、イラン海軍からも駆逐艦やフリゲート艦が参加した。
ウクライナ戦争ではロシアがイランから調達した自爆型ドローン(無人機)を使用した。中国は侵攻以後もロシアから原油や天然ガスの輸入を増やしてきた。西側は中国がロシアへ本格的な兵器供与に乗り出すのではないかと懸念を表明してきた。
これらの軍事演習の経過から成り立つ推測は、プーチンvs李尚福会談で、中国が武器・弾薬、ミサイル、ドローン等をイラン経由でロシアへ供与する闇ルートに関して協議された筈なのである。
実際に中国とイランの軍事関係は異常なほど強い。かつて筆者、テヘランに取材したおりのイラン航空機は東京から北京経由だった。
北京で相当数の中国軍人が乗り込んできた。テヘラン空港へ着くと出迎えのイラン軍人が歓迎し、両国の軍人交流はこれほど強いのかと思った。
すでにイランはロシアにドローン、ならびに武器弾薬をカスピ海ルートでロシアへ輸送した「実績」がある。
イランのコンテナ船はカスピ海を北上し、ロシアの港へ直航、この抜け道の航路の観察を西側はやや怠りがちだったようだ。
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