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鍛冶俊樹の軍事ジャーナル (2023年2月14日号) *広域強盗事件の本当の怖さ

2023-02-14 20:51:33 | 日記
鍛冶俊樹の軍事ジャーナル
(2023年2月14日号)
*広域強盗事件の本当の怖さ
 大学で情報科学論を学んでいた私は、将来、人間は巨大な情報組織の一部品に過ぎなくなるのではないか、と本気で懸念したものだった。卒業後、航空自衛隊に入って訓練用シミュレーターを目にして、その思いはいよいよ強くなった。

 当時のものは、高額なわりには、ちゃちで実戦訓練を補強するのが精々だったが、すでに本格化しつつあったインターネットと連結して高度化すれば、将来、一般の民間人を動員して戦闘マシンに変身させる事ができるだろうとSF的な期待と懸念を抱いたものだった。
 冷戦が終了して予算が削減されつつあった当時の自衛隊には、インターネットの導入がやっとのことで、それに伴って必然化するサイバー戦争にすら対処する余裕がなかった。従って、夢見がちな若手幹部の「たわごと」などに耳を貸す上司などいるはずもなかった。

 ところが、懸念は次第に現実のものとなった。若者はもはやテレビも見ないし漫画も読まない。活字などは論外で、彼らの目には古代エジプトの象形文字と変わらない。彼らが熱中するのは、CG化されたゲームだ。
 これらのゲームは、もともと軍事用に開発された訓練用シミュレーターをアレンジしたものに他ならない。若者はこれをSNSから入手している。つまり、上述したように訓練用シミュレーターをインターネットに連結しているのだ。

 今回の広域強盗事件では、若者たちは、フィリピンにいて会った事もない人物からSNSで指令を受けて、強盗殺人マシンに変身した。情報技術はコンピュータ、インターネット、IT、AI、メタバースと進化して、今でもバラ色の幻想を振りまいている。
 だが私は、情報技術の本質は情報戦争の兵器そのものだと考えている。この本質から目をそらせば、その瞬間に我々は情報戦争の犠牲者になることを、今回の事件は立証したのである。


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