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RSEPは「絵に描いた餅」。中国の誇大広告を真に受ける必要なし   インドと米国が加盟しない貿易機構が効果をあげると考えるのは面妖

2020-11-22 23:24:22 | 日記
「宮崎正弘の国際情勢解題」
令和2年(2020)11月16日(月曜日)弐
        通巻第6702号
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 RSEPは「絵に描いた餅」。中国の誇大広告を真に受ける必要なし
  インドと米国が加盟しない貿易機構が効果をあげると考えるのは面妖
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 11月15日、ベトナムで開催された首脳会議(菅首相などオンライン参加)は、RSEPのルールで合意に達した。「保護貿易主義への防波堤となる巨大経済圏」がアジアに誕生したとメディアは前向きに報じた。北京の宣伝をうのみにしているかのようだ。

 RSEPとは、「地域的な包括的経済連携協定」が日本語訳。なにしろ長い名前。加盟国も十五か国、TPPより広範囲で世界GDPの30%だなどとメディアはお祭り騒ぎをしている。
 ところが、米国とインドが加盟しておらず、日本は、この両国とは別個に対応し、米国とはFTA(自由貿易協定)に近い「日米貿易協定」を、インドとはEPA(経済連携協定)を結んでいる。

 まずはTPPを振りかえってみよう。
 オバマ政権のとき、突如アメリカが言い出した。「中国を抜きにして、世界的な貿易機構を創ろうではないか」。ところが中国が反対し、日本が消極的になる前に、トランプ政権に転換してから「加盟しない」と言い出した。
あたかも国際連盟を結成しようとアメリカが言い出し、途中で「加盟しない」と言い出したように、大国のわがまま。議会は批准しない。

 TPPは紆余曲折を経て、日本が主導しての「TPPイレブン」となった。
 加盟国はシンガポール、ブルネイ、ベトナム、マレーシア、日本、豪、NZ、カナダ、ペルー、チリ、メキシコである。環太平洋パートナーシップというわけだが、ここには中国と韓国が加盟せず、アメリカはもちろん冷ややかに見ている。「自由貿易主義」を標榜する国のご都合主義が露骨に出たとも批判された。

 さてRSEPだが、舞台裏で主導したのは中国で、今度は「アメリカを抜きにして」、大急ぎで結成へこぎつけた。米中摩擦の深刻化への焦りが中国の前向きな姿勢への変化に表れたのだ。

 RSEP十五か国とは中国と韓国が「TPP加盟国以外」で加盟し、バングラデシュ、カンボジア、タイ、フィリピン、ミャンマー。ここに「TPPイレブン」と重なるシンガポール、ブルネイ、ベトナム、マレーシア、日本、豪、NZ。他方で、TPP加盟のカナダ、ペルー、チリ、メキシコは加わらず、アメリカも加盟していない。

 注目はインドである。
 TPPイレブンにも、こんどのRSEPにもインドは加盟していないのである。インドが頑迷なのではない。国益を考えれば、RSEPは問題だらけだからだ。


 ▼問題は中国がルールを遵守するか、ということに尽きるだろう

 連携協定の中身はと言えば、関税の91%を段階的に撤廃するので、貿易はますます拡大すると謳われていることだが、工業製品、農業物産など、「いつものように」六年後とか、ニ十一年後とか、まるで美辞麗句を並べただけ。
 たとえば日本からの輸出品で日本酒としょうゆの関税撤廃は21年後。即刻撤廃は農業用トラクターと自動車エンジンだけ。
 「撤廃しない」のは重要なコメ、麦、牛・豚肉、乳製品,砂糖の五品目である。

 これじゃインドが加盟しないのは、むしろ賢明だったといえないか。
 インドは「農業保護」を表面の理由としているが、対中赤字が最大の問題で、RSEPに加盟したら対中赤字は膨張する危険性があるからだ。

 アメリカはWTOにも懐疑的となり、TPPから離脱したが、RSEPに関しても注目はしてはいるが、積極的に加盟に動くとは考えにくい状況である。

 まして各国の国会承認が必要であり、日本は2021年度中に批准を終えたい意向だが、アセアン加盟国は農業問題で国内対立がある。そのうち政権が変わったりすれば、白紙にもどす国もでてくるだろうし、最終的には数年はかかるだろう。豪、NZは英米から何らかの示唆を受けての加盟のように思える。

 中国の狙いは明らかで、「知財」と「デジタル」である。
 謳われたルールは「デジタル情報の自由な海外流通の確保」を求める一方で、「企業に対する技術移転の要求を禁止する」条項が入ったが、これらを「あの国」が順守すると考えるのはお人よしである。

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