「宮崎正弘の国際情勢解題」
令和三年(2021)6月7日(月曜日)
通巻第6938号
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ハンガリー首都で反チャイナ抗議集会。オルバン首相の親中路線を非難
[NO FUDAN](復旦大学分校反対)のプラカードが町に溢れた
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ハンガリーの首都ブタペストは中欧で緑豊かな美しい町である。
町の中心をドナウ川が悠然と流れ、漁夫の砦という城塞跡から市内の全景を見渡せる。またハンガリーは温泉とワインの国、平原が広く、マジャール人がやってきて、ローマ、フン族のあと「オーストリア・ハンガリー帝国」を築いた。
近代ではオスマン・トルコの影響を追いやり、堅牢な王国だったが、共産主義が侵入し、ソ連の全盛時代は、その衛星国家だった。
やがて民主革命への導火線が、反ソ暴動となり、世界の耳目を集めたが、全体主義の弾圧に沈黙を余儀なくされ、ソ連崩壊を待たなければならなかった。
人口は一千万人、ミニサイズの国家だが地政学的には重要な位置を占めるため、国際政治の発言力は大きい。
最近もブタベストの主要な四つの通りの名前を「ダライラマ通り」「香港自由通り」などと改称した。
自由化が促進され、親西欧路線が著しく、EU、NATOへ接近し、多数政党制の民主化を呼び込んだ。ところが、近年は強烈な個性のオルバン首相が親ロシア、親中国の外交に傾いていた。ユーロには加わらず断固として自国通貨フォリントを守る点ではポーランド、チェコなどの意固地と似ている。
さて、そのハンガリーで何がおきたか。
中国は欧州27国への文化的工作の橋頭堡を狙い、このブタペストに復旦大学分校を、18億ドルを投じて国際学部を設立し、外国人留学生のキャンパスを造成するという。
6月4日、「六四三二」(天安門虐殺から32年)に照準を合わせ、ブタペスト市民が立ち上がった。「中国の侵略を許さない」「復旦大学は要らない」。野党のゲルゲー・カラチョーニ(ブタペスト市長)が呼びかけ「天安門事件で多くを虐殺した国の大学を許せるわけはない」と訴えると数万の市民が「英雄広場」を埋め尽くしたのだ。
中国の復旦大学といえば、北京大学、清華大学、上海交通大学と並ぶ「四天王」。名門校である。復旦大学出身者には李源潮、李嵐清ら有力政治家がいる。
オルバンは復旦大学キャンパス誘致を強行しようとしているが、思わぬことで、ほころびが見えた。
中国の反応はまだない。
▲日本も孔子学院の実態解明へ方針を転換
中国の文化侵略の橋頭堡「孔子学院」は全世界で160ヶ国、500個所。アメリカは半分を閉鎖させたほか、カナダ、ドイツ、仏蘭西でも数校が閉鎖された。豪は「過去の契約であっても国益に反することが判明すれば廃棄できる」という新しい法律をつくり、孔子学院への介入を進める
バーンズCIA長官は「もし私が学長なら、孔子学院を直ちに閉鎖する」と議会証言で発言した。
日本政府は、やっとこさ、重い腰を上げる。
現在、孔子学院は日本全国の十四の大学に設置されているが、世論工作の拠点であり、同時に技術流出のセンターと化している。国家安全保障上、脅威以外の何ものでもない。
筆頭が早稲田大学で中国人留学生が2500名。立命館大学は京都と大分の「立命館アジア大学」の二つに設置されている。親中派の愛知大学や山梨学院大。文科省の留学生予算を狙ってだぼ鯊のように設置した新興大学もあり、伏魔殿のように実態が不明となっていた。
桜美林大、札幌大、北陸大、大阪産業大、岡山商科大、福山大、関西学院大学、兵庫医科大、武蔵野大学など。
(註 復旦大学の「復」は行人偏が不要)