左京区岡崎にある私設美術館・細見美術館で、
屏風ばかりを集めた屏風展が開かれていた。
「空間を彩る屏風・広がる大画面(ワイドスクリーン)」
というタイトルである。
細見美術館
https://www.emuseum.or.jp/
空間を彩る屛風びょうぶ―広がる大画面ワイドスクリーン―
https://www.emuseum.or.jp/exhibition/ex084/index.html
会期:2024年 2月20日(火) - 4月14日(日)
[前期] 2月20日(火) - 3月17日(日)
[後期] 3月19日(火) - 4月14日(日)
細見美術館は一階から地下へ降りてゆく独特の構造になっていて、
地下3階ほどある。(4階かも?)一室はそれほど広くない。
今回の展示はその広くない美術館においても、
思ったより展示品は少なく感じた。
しかも前期・後期で分かれているからよけい少なかったかもしれない。
全部で20点くらいだったかも。
こじんまりした展示だった。
それでも「屏風」に焦点を当てた展覧会で、楽しい企画だと思った。
屏風と言ってもいろいろあり六曲一双がスタンダードだと思うが、
他にも二曲一双とか八曲一双とか六曲一隻など、
大きさや用途によりさまざまな種類があるのだった。
大きさもさまざまで、枕元に置く小さなものから、
部屋いっぱいに広げて画題を楽しむものなど、
サイズは一定しておらず、さまざまな大きさの屏風が展示されていた。
もともとは間仕切りや風よけとして使われて来た実用品だった。
使い方は自由で、寝床の枕元に置いたり、
四方を屏風で囲んで間仕切りとして使ったり。
そこに描かれた絵は置く場所によってさまざまな画題が扱われ、
装飾的なものになっていった。
絵師たちは横長の画面に創作意欲を刺激され腕を振るったのだった。
展示は主に江戸時代の無名の作者か、作者不明の屏風が並んでおり、
それらがどのように使用されていたかも説明されていた。
平安期や室町時代にも使われていたらしいが、
実用品でもあったので消耗が激しく古い時代のものは残っていない。
江戸時代前期のものから昭和初期までのものが展示されていた。
画題として有名なのは「柳橋水車図屏風」、
「誰が袖図屏風」で1点ずつ展示されていた。
「柳橋水車図屏風」は宇治川が主題で大きな橋を屏風全体に描き、
橋の袂には水車が必ずあしらわれている。
定番の画題だった。
展示品は紙本に金地に着色され華麗なものだった。
展覧会のチラシにも使われている図だ。
「誰が袖図屏風」は部屋の片隅に置かれた衝立に、
今脱いだばかりと思われる女性の着物・装束だけが衝立に掛けられている。
人の気配はまったくないが、
着物の持ち主の残り香はあるような気がする。
着物だけが置かれた部屋が謎めいた雰囲気を醸し出しているという図だ。
この画題もよく屏風に取り上げられた。
もう一つ、「洛中洛外図屏風」も屏風絵の代表的な画題である。
狩野永徳が「洛中洛外図」を描いてから普及し、
数多くの洛中洛外図屏風が描かれた。
これなどはすでに実用品とか空間演出のためというより、
客人をもてなしたり、財力を示すものという感じになってる。
画題が豪華なので─
左隻には御所や貴族の住まい、右隻には祇園祭や清水寺、
など様式が決まって来ていた。
これも金地の華麗な雲が描かれていて豪華な作品になっていた。
ほかに洛外図屏風というのもあって、
清水寺や方広寺、三十三間堂など、東山の観光地を描いた、
洛中洛外図から派生した作品もあった。
祇園祭礼図屏風というのもあり、
これも洛中洛外図から派生したものだろう。
文字通り横長の(ワイドスクリーンの)画面に、
延々と続く祇園祭の山鉾巡行の様子が緻密に描かれていた。
祇園祭の時期には鉾町の家々では屏風祭と言って、
旧家(町家)に残る屏風を玄関に飾り、戸を開け、
道をゆく人に見せるという風習がある。
そうした風習に沿って祇園祭の屏風絵が描かれたのだろう。
洛中洛外図から派生した作品は、
洛中洛外図の影響を感じさせるものだった。
行ったのは後期だったので、
大好きな酒井抱一や神坂雪佳の作品が見られなかったのが
とても残念だった(>_<)が、
鈴木基一の作品が2つほど展示されていた。
ひとつは屏風ではなく軸装で、「花雛図」というもの。
(画像は細見のXより)
3月の節句の時に床の間に飾るものなのだろう。
菜の花と蓮華草を雄雛、女雛に見立てて立ち雛として描いていた。
床の間に飾る軸として粋な雛祭りの図だった。
もうひとつ基一の作品「白椿に藪柑子図(しろつばきにやぶこうじず)屏風」、
両者とも日本画によく見る画題だが
基一はいかにも琳派の流れを汲む画家として、
たらし込み技法で山の連なりを描いていて、絵の具の流し方が清々しかった。
展示品は少なかったが、今回の細見美術館の
屏風という調度品に絞って収集品を展示する方法はアイデアが魅力的だし、
なるほどそういうやり方もあるのだと思った。
屏風を装飾品や調度品として見てもいいし、美術作品としても眺められる。
企画次第で楽しく新鮮な展示が出来るのだと感じた。
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