相国寺は御所の北門、今出川御門の北側にある、
臨済宗(禅宗)のお寺である。
臨済宗相国寺派の大本山であり、京都五山の第2位に列せられている。
足利義満によって創建された。夢窓疎石を開山とする。
(現在の建物は再建されたもの)
創建時は広大な境内だったが(現在でもかなり広いが)、
現在はかなり縮小されている。
金閣寺、銀閣寺はこの相国寺の境外塔頭となっている。
相国寺の北横に相国寺承天閣美術館があり、
相国寺とその塔頭に伝わる美術品を受託し展示している。
伊藤若冲の理解者・師であった大典顕常が相国寺の僧であったことから、
若冲の名作「動植綵絵」が相国寺に寄贈されたことは有名である。
また若冲が金閣(鹿苑寺)の障壁画を依頼されたのも、
金閣が相国寺の塔頭だったからだろう。
そんなわけで相国寺承天閣美術館に若冲の優品が残されているのである。
若冲による重要文化財「鹿苑寺大書院障壁画」は
一部が常設展示されている。
今回はその障壁画50面が一挙公開された企画展だったので、
噂を聞いて行くことにした。
承天閣美術館
https://www.shokoku-ji.jp/museum/
企画展
https://www.shokoku-ji.jp/museum/exhibition/jakuchu-ohkyo/
若冲と応挙
Ⅰ期 2023年9月10日(日)〜11月12日(日) /
Ⅱ期 11月19日(日)〜2024年1月28日(日)
会期延長 2024年2月1日(木)〜2月25日(日)
Ⅱ期は伊藤若冲の傑作、
重要文化財の《鹿苑寺大書院障壁画》五十面を一挙公開いたします。
本来なら「若冲と応挙」展は1月28日で終了だったが、
好評だったようで、会期が延長されたようだ。
展示替え後の2期の作品が2月25日まで開催されている。
自分が行って来たのも展示替え後の第2期のものだ。
承天閣美術館は靴を脱いで観覧する、寺院らしい小さめの付属美術館だ。
だが所蔵品は由緒あるお寺らしく若冲を中心に名品が並ぶ。
写真撮影は禁止だった(>_<)。
相国寺の広い境内を北に歩いてゆくと、
突き当りに承天閣美術館がある。
寺院と地続きなので美術館というより、靴を脱ぐこともあり、
まるで相国寺の建物の一つかと思ってしまう。
こじんまりした美術館の第1室では、
若冲の「動植綵絵」のコロタイプ複製がずらりと全作並んでいた。
突き当りの相国寺所蔵の釈迦三尊像のみは本物であった。
(普賢菩薩・釈迦如来・文殊菩薩)
カラフルな三尊像で、中国の原画の写しだったと思うが、
若冲らしい細部まで細かく神経質なほど描かれている。
上質な絵の具を使っていることが分かった。
(2月1日からは複製を展示)
動植綵絵の現物は現在は三の丸所蔵館にあり、国宝に指定されている。
もとは若冲が釈迦三尊像と共に相国寺に寄進したものである。
だから動植綵絵と釈迦三尊像を並べて展示するのは、
極めて正しい展示方法だ。
動植綵絵の本物は以前、この承天閣美術館で展示されているのを見た。
全作品並べて展示していて、
大盛況で美術館へ入るのに列を作って並んでいて、時間がかかったほどだ。
それくらい人気作品なので精密なコロタイプ複製を作成したのだろう。
今回複製を見て改めて心に残ったのは、芦雁図だった。
垂直に落ちてゆく雁が不安を掻き立てる。
寒々しい木の枝に積もる雪と地面の亀裂。
不安を増幅するような異色の絵であった。
もう一つ、残ったのが「雪中錦鶏図」。
木の枝に積もった雪の表現が神経症的で、だが美しくも感じられた。
コロタイプ複製とはいえ、
「動植綵絵」全図がずらりと展示されているのは圧巻だった。
第二展示室に「鹿苑寺大書院障壁画」(重要文化財)が展示されていた。
墨絵による淡彩。
普段は一部だけが常設展示されていたものが、
今回は50面、全図が公開されていた。
鹿苑寺とは金閣寺のことで、
若冲が金閣寺のために描いた障壁図を本山の相国寺が所有しているのだ。
大書院障壁画では葡萄図襖絵が好きだが、
今回は竹図襖絵や、芭蕉図なども展示。
竹図は竹の節が丸くはみ出ている若冲独特の解釈で描かれていて
ユニークな形をしている。
どの流派にも属さない独自の作風だ。
松鶴図襖はわりと普通の鶴の絵だと思っていたら、
鶴の足の細かい点描が神経症的なほど細かく、
それがやはり若冲らしいなと思った。
が何といっても大書院障壁画では葡萄図襖と、
一之間の床の間を再現した葡萄図がとても好きだ。
画像は↓より
http://inoues.net/club3/jyakuchu034.html
日本絵師は空間込みで全体をデザインするのが様式となっているが、
若冲もその例に漏れない。
日本画は襖絵、軸物とも画面全体に物体を描くことはなく、
空白部分を残し、そこを効果的に見せる。
若冲も同様。
葡萄の蔓を壁面の上部と下部に這わせたデザインが秀逸すぎるし、
つるの描き方は、
細い筆一本でくるりと回っている蔓をさっとさらっただけに見える。
それくらいラフに描いているのに、
全体として空間の中で絶妙な位置に配置されていて、
見ていて快感なのである。
若冲は墨絵を描いても陰影の出し方といい、
筆の使い方といい、ユニークでありつつセンスが抜群だ。
現物は迫力満点だ。
第3章として応挙の作品が展示してあった。
円山応挙は京都で活躍した絵師であるので、
承天閣美術館でも応挙作品をいくつか所蔵している。
第2期は応挙の重要文化財「牡丹孔雀図」が目を引いた。
長い尾を牡丹の咲く崖から垂らした華麗な調和の取れた作品だ。
若冲の作品を見て来た後では応挙作品は常識のある、
安定した作品に見え、見ていて安心感がある。
気持ちが和むというか。
それだけ若冲が尖っている感じがあるからだろうか。
応挙は写生に優れ写生を重視したと言われているが、
作品は多岐にわたり、どんなものでも描いたという印象がある。
大作にも優れたものはあるが、
より応挙の手腕が発揮されるのはやはり写生図だ。
写生帖に応挙の本領が発揮されていると思う。
今回の展示ではしかし、「大瀑布図」(重要文化財)という、
巨大な滝を描いた図(相国寺蔵)が目を引いた。
谷から流れ落ちる巨大な滝を淡彩で描いたダイナミックな作品で、
応挙の多彩な一面を見ることが出来た。
相国寺承天閣美術館はさほど大きな美術館ではないが、
所蔵する作品は優品揃い。
今回の展示も入館料は安いし、それほど多くの作品があるわけではないが、
じゅうぶん見応えがあった。
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