伊佐子のPetit Diary

何についても何の素養もない伊佐子の手前勝手な言いたい放題

魔女狩りの恐怖

2020年06月25日 | テレビ


最近、NHK BSプレミアムの「ダークサイドミステリー」に軽くはまっている。

録画しておいた、2020年5月2日(土)放送の「ダークサイドミステリー」は、
文字通り、16世紀から17世紀にかけて猛威を振るったヨーロッパでの、
「魔女狩り」を扱った番組だった。


途中、あまりにも恐くて、何度もVTRを止めて、
最後まで見る勇気が出ないくらいだった。
ようやく少しずつ、時間をかけ最後まで辿り着いた。

それほど、人間の狂気を扱った、
「魔女狩りの恐怖 ─なぜ人は隣人を追いつめたのか─」。




それに興味を持ったのは、かつて魔女狩りや「サバト」「魔女裁判」について、
具体的に冷静に、あたかも見て来たように書いていた澁澤龍彦の記述の影響による。


澁澤の名高い著書「黒魔術の手帖」

 


(河出文庫)748円



これの記述で、自分は黒魔術や白魔術、サバトなどが実際に行われ、
その理由も具体的に示してあったので、何となく信じ込んでいた。

なんと愚かであっただろうか。


もちろん、少数の集まり(集会)などはあったかもしれないし、
民間信仰的な、呪術的なものはあったかもしれない。
しかし、それと魔女狩りはまったく違う関連のない性質のものだった。



実際に起こった16世紀からの魔女狩りは、
まず自然現象による、天候不順による凶作、飢饉、伝染病に端を発する。
大勢の人が苦しみ、大勢の死者が出た。

なぜ我々はこのような不幸に見舞われるのかと考えた時、

1偶然
2神罰(神に罰せられた、人間の罪)
3魔女のせい


我々は悪いことをしていないのに、神に罰せられる理由はない、
我々に罪はない、
神のせいじゃない、裏切り者の魔女のせいだ・・・




当時はキリスト教の世界観が人々を支配していた。

悪魔(サタン)とはもともとは天界にいたが、神に逆らい、反逆した堕天使であり、
その手先が魔女とされた。

魔女は悪魔を崇拝する集会・サバトで、
悪魔との性的交わりによって契約を交わした裏切り者であり、
人に災いをもたらす、とされた。



凶作や飢饉や伝染病が人々に不安を呼び起こし、原因を求めた。
それが魔女のせいだと…。
災いをもたらす裏切り者を見つけ出せ。
そうして、知り合いを密告するようになる…。



罪のない者が次々と魔女として逮捕され、「魔女裁判」を受ける。


裁判では自白が重要な役割を果たした。

そのため拷問が行われた。




拷問は当時、刑事法で認められていたという。
拷問でのみ、罪を証明することが出来ると…。

なぜなら魔女の場合、証拠はない。
一応証拠がなければ罪に問うことは出来ないという決まりがあった。

自白は、重要な罪の証拠であった。
そのため、どのような残酷な拷問でも実行された。



自白すれば、悔い改めたと見なされ、天国へ行ける。
自白させれば天国へ導かれる。
そう信じて、裁判官は残虐な拷問を続けた。

それは悪魔と契約を交わし、災いをもたらす裏切り者を、
神と人間の側へと取り戻す戦いであった。



世の中の不安が無実の人への恐怖と憎しみへとなり、
魔女が仕立てられていった。




魔女裁判は司法制度の中で行われていたという。

罪のない者は罰してはならないという法が一応あった。
そのため、自白が必要であった。


それが自白の強要へとつながった。
(自白のための)拷問は正しいこと、
社会正義のためにしている、


番組では、それを「正義中毒」と呼んでいた。



裁判官は正しいことをしないと神罰が下る。
自分たちが魔女を野放しにしていたと判断されてしまう、
…自分を救済するため、自分に降りかかってくる神罰を避けるため、

という風に考えがエスカレートしていったと説明されていた。




拷問は残虐を極め、自白するまで続けられた。
そして、自分が魔女だと自白するだけではなく、
仲間の名を言わなければ許されなかった。

知らない、と言いとおすことは許されなかった。
知らない、と言っても単なる知り合いの名でも言う事を強要された。
拷問に耐えきれず、自分の知っている名前のみでも次々に言わされた。



そのようにして、無実の人間が次々に魔女に仕立てられていった。

自白した者は魔女として死刑に処せられた。
火炙りの刑である。…



ルネサンスをとうに経過した16世紀ころなのに、
社会危機、凶作などの社会不安のはけ口として、それらが魔女の仕業にされた。

きっかけは災害だ。

社会を守り合わなければならない。
正義のために、異端者がいると攻撃する。
それは現代でも同じことだと…。



異常気象など、よく分からない不安の原因を魔女に押し付け、
無実の人々に虐待を行ったのは普通の人々。

或いは、傍観者の立場を取る。
自分も攻撃する側に回るのが、自分の身を守る一番の術になってしまう…。





─18世紀、魔女狩りは急速になくなっていったという。

その原因は、魔女狩りをしすぎて、領民がいなくなってしまい、
領主がこのままでは働き手がいなくなると気づいたからという、
極めてお粗末な理由からであった。





魔女狩りの恐怖は、現代でもある。

SNSによるデマ、不安を煽るデマ、
不安によって、理性を失った時、いつでもそれは蘇る、と。



コロナのことを、連日テレビやSNSが取り上げ続ける今の状態を見るにつけ、
「正義中毒」という番組の言葉が浮かんで来る。

誰かを悪者に仕立て上げたい心理が今も人間にはあるからだ。







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