レーザー核融合で10兆ワットのエネルギーを生み出すことに成功、核融合発電の実用化へ大きく前進
GiGAZine より 210818
アメリカにある ローレンス・リバモア国立研究所が2021年8月17日に、192本のレーザーを用いて核融合を発生させ、10兆ワットを超える膨大なエネルギーを発生させることに成功したと発表しました。
National Ignition Facility experiment puts researchers at threshold of fusion ignition | Lawrence Livermore National Laboratory
https://www.llnl.gov/news/national-ignition-facility-experiment-puts-researchers-threshold-fusion-ignition
Lawrence Livermore Lab makes significant achievement in fusion
https://www.cnbc.com/2021/08/17/lawrence-livermore-lab-makes-significant-achievement-in-fusion.html
Lawrence Livermore claims a milestone in laser fusion
https://physicstoday.scitation.org/do/10.1063/PT.6.2.20210817a/
ローレンス・リバモア国立研究所は、8月8日に行った実験で、重水素とトリチウムでできた燃料ペレットにレーザーを照射して核融合反応を起こす レーザー核融合に成功したと発表しました。
サッカー場3面の広さを持つ 国立点火施設で行われた今回の実験では、合計192本のレーザーを直径が髪の毛1本分しかない狭い範囲に集中させて核融合反応を起こし、100兆分の1秒の間に10兆ワット以上ものエネルギーを発生させることができたとのこと。
ローレンス・リバモア国立研究所のKim Budil所長は、発表声明の中で「今回の成果は、 慣性核融合の研究分野にとって歴史的な一歩です」とコメントしました。
この発表で重要視されているのが、核融合の持続安定化につながる「点火」の達成に一歩近づいたという点です。ローレンス・リバモア国立研究所で責任者を務めるオマール・ハリケーン氏は、「点火とは、核融合から発生した熱があらゆる熱の損失を上回る、核融合の転換点です。点火が起きると、核融合で生じた熱が核融合を発生させ、それによってさらなる熱が生み出されます」と説明しました。
今回の実験では、1.3メガジュールという膨大なエネルギーが発生しましたが、レーザーの照射などに大きなエネルギーが使われたため、差し引きすると正味のエネルギー生産量はゼロに近いとのこと。
しかし、燃料ペレットが吸収したエネルギーの5倍以上の核融合エネルギーを発生させることができたことは、核融合を商用エネルギーとして実用化させる上で必要な「点火」の実現にとって重要なポイントであると、ハリケーン氏は指摘しています。
実験結果の詳細は、これから論文にまとめて査読付きの科学誌や学会で発表される予定ですが、初期の予備的な分析では、同研究所が2021年の春に行った実験の8倍、2018年に行った実験の25倍もエネルギー効率が改善したことが示されるなど、有望なデータが得られているとのことです。
実験結果の詳細は、これから論文にまとめて査読付きの科学誌や学会で発表される予定ですが、初期の予備的な分析では、同研究所が2021年の春に行った実験の8倍、2018年に行った実験の25倍もエネルギー効率が改善したことが示されるなど、有望なデータが得られているとのことです。