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脱炭素のカギ握る鉄鋼と石炭火力 経産省、2,620億円を投じ大転換促す 202108

2021-08-27 23:22:00 | なるほど  ふぅ〜ん

脱炭素のカギ握る鉄鋼と石炭火力 経産省、2,620億円を投じ大転換促す
  EnergyShift編集部  より 210827

 日本のカーボンニュートラルの実現にとって欠かせないのが、鉄鋼と石炭火力の脱炭素だ。いずれも多くの石炭を使うため、CO2の排出量が多い。経済産業省は8月24日、脱炭素技術の開発を支援する総額2兆円の基金から、水素や電気から鉄をつくる製鉄技術に対し1,935億円、石炭火力にかわるアンモニア発電に688億円をあてる方針を決めた。

⚫︎産業部門でもっともCO2を出す鉄鋼業界
 鉄鋼業界は自動車や鉄道、建設などあらゆる産業に鋼材を供給している。
戦後、海外にも輸出を拡大させ、2018年時点での国内総出荷額は19兆円、22万人の雇用を抱えている。最大手の日本製鉄は、前身の新日本製鉄から3人の経団連会長を輩出するなど、鉄鋼業界は長らく日本の経済成長を支えてきた。

日本経済を支える鉄鋼業界が抱える最大の課題が脱炭素だ。

 製鉄の過程で多くのCO2を排出するため、日本全体の排出量のうち14%を占めており、産業部門でもっとも排出量が多い。

 日本の製鉄技術は「世界でも最高水準」とされ、普通鋼板の3倍の強さを持つ超ハイテン鋼板やEVモータの性能を左右する電磁鋼板など、高級綱で高いシェアを持つ。

 また日本が強みを持つ高級綱は、脱炭素社会においても欠かせない。IEA(国際エネルギー機関)は、2050年における自動車分野での鉄鋼需要は年間約2〜3億トンと予測し、また洋上風力の基礎などで大きな鉄鋼需要が見込まれている。

 一方、トヨタ自動車が直接取引する主要部品メーカーに対し、2021年のCO2排出量を前年比3%減らすよう求めるなど、サプライチェーン全体の脱炭素化を目指す企業は増加中だ。トヨタに連なる素材メーカーは3万社ともいわれており、日本の鉄鋼各社はたとえ高級綱であっても、グリーンでなければ取引先から外され、ビジネス機会を失うかもしれないという危機感が高まっている。

 IEAでは、製造工程で排出されるCO2が実質ゼロである「グリーンスチール」の市場が、2050年時点で約5億トンになると予測。2070年にはほぼすべてがグリーンスチールにとって代わるという。
 鉄鋼業界にとって、脱炭素は喫緊の課題なのだ。

⚫︎1トンの鉄をつくるのに、2トンのCO2が発生
なぜ、鉄鋼業界はCO2排出が多いのか。その理由は製鉄技術の「高炉法」にある。

 日本では鉄鉱石に石炭を原料とするコークスを混ぜて、酸素を取り除く「還元」で製鉄する高炉法から、粗鋼生産の70%が生産されている。高炉設備は耐久性があり、高級綱の大量生産が可能だというメリットを持ち、日本の製鉄技術の根幹である。

 しかし、この高炉法には、1トンの鉄をつくるのに約2トンのCO2を発生させてしまうという大きな課題がある。そのため、「不変の製鉄法」とされた高炉法からの大転換を図らなければ、日本の脱炭素は実現できないとさえ言われている。

政府は2020年12月、グリーン成長戦略をまとめる。その中で、石炭を使う高炉と比べ70%削減できるとされる、鉄スクラップを溶かして再利用し、電気を使って鉄をつくる「電炉法」の技術革新や、高炉排ガスからCO2を回収し、再利用するCCUS、そして石炭からつくるコークスに代わって、水素から鉄をつくる「水素還元製鉄」を脱炭素の切り札に掲げた。

 政府方針を受け、鉄鋼業界も対応を迫られている。

 2021年2月、鉄鋼連盟はCO2実質ゼロ目標を従来の「2100年」から「2050年」へと50年前倒しした。3月には、業界最大手の日本製鉄が2050年脱炭素の目標を掲げ、研究開発に5,000億円以上を投じると発表し、JEFホールディングス、神戸製鋼所も相次ぎ2050年脱炭素を表明した。

 政府や鉄鋼各社が、脱炭素への切り札と位置づけるのが、先の電炉法と水素還元製鉄の2つだ。

 水素から鉄をつくるには4〜5兆円が必要
まず電炉だが、鉄スクラップには不純物が含まれているため、生産する鉄の品質が低いという課題がある。そこで、不純物を除去する技術開発によって、電炉でも自動車向けなどの高級綱を大量生産しようというもの。日本製鉄では2030年までに年間の粗鋼生産能力400万トンと高炉に匹敵する電炉を建設する計画だ。

 水素還元製鉄は、水素で鉄鉱石から酸素を取り除くため水しか発生しないため、「ゼロカーボン・スチール」の実現に向けた切り札として期待値が高い。しかし、水素による還元は熱を吸収するため高炉が冷える、あるいは生産性が落ちるという課題があり、300年以上の歴史を持つ製鉄法を根本から変える「史上初のチャレンジ」とされている。

 実用化に向けては、世界に先駆け2008年から日本製鉄やJFEスチール、神戸製鋼所などが共同で研究開発を進めている。COURSE50(CO2 Ultimate Reduction System for Cool Earth 50)と呼ばれるプロジェクトでは、コークスと水素の両方を使う方法で、CO2排出量の10%削減が可能だと検証済みだ。

 政府も、世界に先駆け水素還元製鉄などを確立し、グリーンな高級綱に特化した生産・供給体制を構築することが、日本の鉄鋼業の「勝ち筋」だと定めている。

しかし、これら革新技術の開発には、新たな設備の建設など巨額な投資が必要だ。また、海外メーカーとの開発競争も激化しつつある。

 世界大手のアルセロール・ミッタルは水素還元製鉄などの実用化に向け、およそ5兆円の投資を行うと表明している。アルセロールを抜き、世界最大手となった中国の宝武鋼鉄集団も水素を使った製鉄技術の開発に取り組む。

 日本製鉄の橋本英二社長は4〜5兆円の費用がかかるとし、経産省の基本政策分科会などで「カーボンニュートラルの実現は、どれだけ研究開発に費用とマンパワーをかけられるかだ。政府の理解を得て支援をいただきたい」と繰り返し述べてきた。

 こうした中、経産省は8月24日、第5回 産業構造審議会 グリーンイノベーションプロジェクト部会 エネルギー構造転換分野ワーキンググループにおいて、脱炭素技術の開発を支援する総額2兆円の基金から、鉄鋼の脱炭素に向け、総額1,935億円を支援することを決めた。2026年までに小規模試験炉で約50%のCO2削減を実現させるといった目標を掲げている。

 アンモニア発電に688億円
経産省は鉄鋼への支援とともに、石炭火力にかわるアンモニア発電に688億円をあてる方針を決めた。

 石炭火力もまたCO2排出量が多く、ヨーロッパを中心に全面廃止の動きが広がっており、フランスは2022年、イギリス2024年、ドイツは2038年までに廃止する方針だ。
 日本においても、2030年までに効率の悪い石炭火力を廃止する方針だが、2020年7月時点でもまだ150基の発電所があり、電源の32%を占めている。さらに、天候などで出力が変動する再生可能エネルギーを調整する役割があるとして、2030年時点でも19%の電源を残さざるを得ない状況だ。そのため、石炭に代わり、燃焼時にCO2を排出しないアンモニア発電の実用化が急がれている。

 アンモニアは多少の圧力を加えれば常温で管理できるため、大量輸送や貯蔵に既存のインフラが使えるという利点がある。政府は2016年ごろから世界に先駆け、石炭にアンモニアを混ぜて発電させる実証試験を支援しており、大手電力会社の石炭火力すべてにアンモニアを20%混焼すれば、CO2排出量を1割削減でき、100%にすれば電力部門の5割を削減できると試算する。

 また発電コストも、水素発電が10%混焼で1kWhあたり20.9円、100%で97.3円に対し、アンモニアは20%混焼で12.9円、100%で23.5円と安い。そのためアンモニアは、水素発電が本格実用されるまでの切り札とされ、2030年の電源構成にはじめて水素・アンモニアで1%を目指すことが盛り込まれた。

 2030年の実現に向けては、石炭火力6基で20%混焼を行うことが必要だ。そこで2021年度から、JERAが持つ愛知県の碧南火力発電所で20%混焼の大規模実証がはじまっており、2024年度までに成功させる計画だ。
(参考1: 実証事業を行う碧南火力発電所(愛知県碧南市))

⚫︎20%混焼だけで、年間2,000万トンのアンモニアが必要
 しかし、アンモニア発電には課題も多い。
 そのひとつがアンモニアの生産量の少なさだ。世界全体の生産量は年間約2億トンで、貿易量は約2,000万トンにとどまる。日本のアンモニア消費量は2019年で約108万トン、そのうち2割をインドネシアやマレーシアなどからの輸入に頼っている状況だ。

 一方、20 %混焼だけでもアンモニアの消費量は約2,000万トンにのぼり、世界の貿易量に匹敵する。100%になれば約1億トンと世界生産量の半分を消費する計算で、アンモニアの生産量がまったく足りない。

 本格導入に向けては、日本が世界規模で生産体制を拡大し、火力発電比率の高いアジア各国にも導入を働きかけながら、大規模な需要をつくり出さなければならない。政府はグリーン成長戦略において、世界のアンモニア生産、利用に向けてイニシアティブを取るという絵姿を描いている。

 また、アンモニアはその製造過程でCO2を排出してしまうという課題もある。

 天然ガスなど化石燃料から水素をつくり、窒素と反応させて合成するのが一般的だ。アンモニアを完全な脱炭素燃料とするには、再エネを使った電気で水を分解してつくった水素から合成するグリーンアンモニアの合成技術が欠かせない。

 さらにアンモニア発電には、燃焼速度が低く着火が難しい、多くのNOxが発生するといった課題もある。

 そこで経産省は石炭火力でのアンモニア混焼やガスタービンでの専焼技術の開発に456億円を投じるなど、合計688億円をあてることで、石炭火力の脱炭素を進める方針だ。

 鉄鋼と石炭火力の脱炭素が実現できなければ、日本のカーボンニュートラルの達成も危ぶまれる。

 しかし、水素還元製鉄やアンモニア発電などを日本発の脱炭素技術として確立できれば、新たな成長の原動力ともなる。経産省では約2,620億円の予算を投じ、鉄鋼と石炭火力の大転換を促す考えだ。

(Text:藤村朋弘)
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東芝ら4者、量子暗号通信技術と秘密分散技術を活用しゲノム解析データの分散保管の実証に成功 202108

2021-08-27 22:55:00 | 気になる モノ・コト

東芝ら4者、量子暗号通信技術と秘密分散技術を活用しゲノム解析データの分散保管の実証に成功
 BizZain より 210827

 東芝、東北大学東北メディカル・メガバンク機構(以下、ToMMo)、東北大学病院、情報通信研究機構(以下、NICT)は、量子暗号通信技術と秘密分散技術を組み合わせたデータ分散保管技術を開発し、大規模ゲノム解析データを複数拠点に分散して安全にバックアップ保管する実証実験に成功した。
 この技術により、長期にわたり機密漏洩やデータ改ざんを防ぐバックアップデータ保管が可能となり、ゲノム研究・ゲノム医療分野における安全なデータ管理への貢献が期待できる。

 4者は、量子力学の原理に基づきあらゆる盗聴や解読に対して安全な暗号通信を実現する「量子暗号通信技術」と、原本データを無意味化された複数のデータ片(シェア)に変換することで安全なデータ保管を実現する「秘密分散技術」を組み合わせた「分散保管技術」を開発し、大容量ゲノム解析データのバックアップへの適用を実証した。
 開発したデータ分散保管技術は、データの通信および保管の双方にて、情報理論的安全性を担保することができるという。量子暗号通信技術により、あらゆる盗聴・解読に対して安全な通信を実現すると同時に、秘密分散技術により、システム障害や自然災害等で保管データの一部が棄損あるいは漏洩しても、元データの機密性は確保され、かつ、棄損せずに残った保管データから元のデータを復元することが可能となる。

 ゲノム解析データの保管の際は、「XOR閾値秘密分散法」と呼ぶ高速秘密分散を可能とするアルゴリズムにより、元のゲノム解析データに対応した複数のシェア(無意味化されたデータ)に分散し、 量子鍵配送によって生成・蓄積した暗号鍵を用いたワンタイムパッド暗号通信によって、各シェアを異なる拠点に分散保管する。
 また、ゲノム解析データを復元する際は、同様のワンタイムパッド暗号通信によって各シェアを異なる拠点から1つの拠点に集め、「XOR閾値秘密分散法」アルゴリズムによって複数のシェアから元のゲノム解析データを復元する。

 この開発において、シェアデータの保存先を、各拠点におけるディスクのセクタ単位で指定することで高速にシェアデータの読み書きを行う「ダイレクトアクセス技術」、量子鍵配送によって生成した暗号鍵を大量に蓄積し、ソフトウェアの並列実行によって、情報理論的安全が保証されるワンタイムパッド暗号を高速に実行する「並列ソフトウェア技術」等を用いて秘密分散およびワンタイムパッド暗号通信の高速化を実現した。
 これらの高速化技術を活用することで、情報理論的安全性を確保しつつ、大容量のゲノム解析データを実用的な時間で分散保管する技術を確立している。

 東芝、ToMMo・東北大学病院、およびNICTは、開発した分散保管技術を利用し、東芝ライフサイエンス解析センター(LSA)、ToMMo、東北大学病院の3拠点でゲノム解析データを分散保管する実証実験を実施した。まず、ToMMoにおいてゲノム解析データに対してNICTが開発した秘密分散技術を用い、3つのシェア(シェアA、シェアB、シェアC)を計算。
 その後、シェアAはToMMoにて保管、シェアBは東芝の量子暗号技術による暗号化伝送で東北大学病院に伝送・保管され、シェアCは同様に量子暗号技術による暗号化伝送でLSAに伝送・保管される。オリジナルの解析データを復元する場合、3つのシェアのうち2つのシェアをToMMoの拠点に集め、秘密分散技術を利用して復元する。

 1検体のゲノム解析データ(約80GB)を対象に、分散保管および復元に要する時間とスループットを測定した結果、分散保管処理時は約30分(356Mbps)、復元処理時は約21分(502Mbps)だったという。
 これをToMMoにおける最小バックアップ単位(100検体)に換算した場合、およそ50時間となり、現状のテープ等のメディアを用いたゲノム解析データの遠隔保管地から物理的に運搬するユースケースと比べて実用的な速度に相当するという。
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世界初、日本が「人工光合成によるクリーンな水素」の製造実験に成功 202108

2021-08-27 22:13:00 | 気になる モノ・コト

世界初、日本が「人工光合成によるクリーンな水素」の製造実験に成功
 ナゾロジー より 210827  KAIN

NEDO,世界初、人工光合成により100m2規模でソーラー水素を製造する実証試験に成功(2021)

 CO2を排出しない次世代エネルギーとして、燃料電池などに利用される水素が注目されています。
 しかし現状の大規模な水素製造法はCO2を排出するため、温室効果ガスの削減においてはあまり意味がありません。

 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は、太陽光エネルギーを利用した光触媒によって水を分解することで、クリーンな方法で水素を生成・回収する実証実験に世界で初めて成功したと報告しています。
 このシステムは効率は悪いものの、太陽電池による電気分解よりも設計がはるかに単純で安価なため、広く社会に実装することに適しているとのこと。

この研究には、東京大学、富士フイルム(株)、TOTO(株)、三菱ケミカル(株)、信州大学、明治大学が参加しており、詳細は科学雑誌『nature』に8月25日付で掲載されています。

☆目次
クリーンな水素の生成
人工光合成システム

⚫︎クリーンな水素の生成
 燃料電池は水素と酸素を消費して電気を生み出し、排出されるのは水という夢のようなクリーンな電源です。
 しかし、その利用には1つ問題があります。それが水素の確保です。

 水素は宇宙でもっともありふれた元素ですが、純粋な水素というのは実は地球上にあまりありません。私たちが水素を利用しようと考えた場合、何らかの化合物から水素を分離する必要があります。

 現在もっとも広く利用されている水素製造方法は、天然ガスに含まれるメタン(CH4)から水素と二酸化炭素に分離するというものです。

 しかし、この反応を起こすためには多量のエネルギーが必要で、さらに副産物として温室効果ガスである二酸化炭素も生成してしまいます。

 これでは、クリーンな水素の生成方法としては好ましくありません。こうして作られた水素はブルー水素と呼ばれます。
 もう1つの水素製造法は,水(H2O)を電気分解して,水素と酸素を作るというものです。
こっちは生成されるものに問題はありませんが、水を分解するエネルギーをどうやって確保するのかがネックになります。

 化石燃料を消費して水素を生成するのでは、やはり意味がありませんので、この場合、再生可能エネルギー(風力、太陽光)を利用する方法が研究されています。
 こうして作られる水素はグリーン水素と呼ばれます。

 太陽光発電を利用した電気分解技術は、かなり実用的なレベルに到達しています。
ただ、実際に大規模な実用化は行われていません。
 その理由が、この方法は非常にコストがかかるということです。
太陽光発電の電気分解で生成した水素は、非常に高価な水素になってしまうのです。

 そこで、将来的に安価で大規模に展開できる太陽光を利用した水素精製方法として注目されているのが、今回の技術「人工光合成」です。
 これは電気分解ではなく、光触媒(太陽光で化学反応を起こす物質)を通じて直接水を水素と酸素に分解してしまうという方法です。

⚫︎人工光合成システム
 今回発表されたのは、人工光合成システムを利用した水素の生成プラントです。
これは、水を水素と酸素に分解させる光触媒パネル反応器と、生成された酸素と水素の混合気体を分離する分離膜を内蔵したガス分離モジュールで構成されています。
 光触媒パネル反応器は、透明なガラスの中にチタン酸ストロンチウム光触媒シートと呼ばれるものが格納されています。
 このシートとガラスの間の隙間(0.1mm)に水を流し込んで反応させ、水を分解させます。

⚫︎:NEDO,世界初、人工光合成により100m2規模でソーラー水素を製造する実証試験に成功(2021)
 この反応では太陽光のうちの紫外光しか利用しないため、太陽から水素(STH)エネルギー変換効率は1%程度と著しく低いのですが、設計が単純で安価であることが重要なポイントとなっています。
 このパネルの光触媒シートはスプレーによる塗布で製造できるため、大量生産が可能で相互に連結でき、長期間の使用も可能という優れものです。
 これは再生可能エネルギーを使った水素生成のコストが高いという問題を解決する可能性があります。
 また、紫外光の量子収率ほぼ100%で水分解ができ、実際は非常に優れた特性を持っています。
 こうして水を直接分解することで水素と酸素の混合ガスが生成されます。
これは分離モジュールによって水素と酸素に分けられ、水素だけを回収することにも成功したといいます。

 化学に詳しい人なら、ここで気になるのが、水素と酸素の混合気体って危なくないの? という点です。水素はよく知られているように可燃性の気体です。それが燃焼に利用される酸素と混ざると非常に危険な爆発物になります。
 この混合気体の安全性は、研究者にとっても課題とされています。

 しかし、今回のシステムを1年以上にわたって屋外試験した期間中、一度も自然発火・爆発の事故は発生しませんでした。
 また、研究者は意図的に各システムの構成部に着火を行いましたが、いずれも破損や破壊は発生しませんでした。

 容積3Lの混合気体を貯蔵するタンクも、内部を適切に仕切ることで着火による破壊は起こらないことが確認されたそうです。
 つまり適切な設計がされていれば、爆発性の高い酸素と水素の混合気体も安全に貯蔵して運用できることが示されたのです。

 今後研究グループは、さらに厳密な安全試験を行うとともに、現在は1%という低いSTHエネルギー変換効率を高める改善をしていくといいます。
 効率については紫外光しか利用していないことが問題なので、可視光も利用できるように検討するようです。

 化石資源に頼らずに、大規模に展開できるクリーンな水素工場が、いずれ日本から誕生するかもしれません。


⚫︎参考文献
世界初、人工光合成により100m2規模でソーラー水素を製造する実証試験に成功 https://www.nedo.go.jp/news/press/AA5_101473.html 太陽エネルギーと水からの水素製造(J-STAGE,学術の動向 2016) https://www.jstage.jst.go.jp/article/tits/21/7/21_7_70/_pdf/-char/ja
⚫︎元論文
Photocatalytic solar hydrogen production from water on a 100 m2-scale https://www.nature.com/articles/s41586-021-03907-3
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「自国民は食べない」小麦を輸入する日本の末路  202108

2021-08-27 19:06:00 | ¿ はて?さて?びっくり!

「自国民は食べない」小麦を輸入する日本の末路
  東洋経済 より 210827 鈴木 宣弘:東京大学大学院 農学生命科学研究科教授

 徹底した規制緩和で、食料関連の市場規模はこの30年で1.5倍に膨らむ一方、食料自給率は38%まで低下している。
 世界的な人口増による食料需要の増大や気候変動による生産量の減少で、食料価格が高騰し、輸出制限が懸念されるなか、日本は「食の安全保障」を確立できるのか。新著『農業消滅』は、日本の農業が今どのような危機にあるのかを伝えています。
 本稿は同書から一部を抜粋・編集しお届けします。

⚫︎「自国民が食べないもの」が日本に送られている
 アメリカの穀物農家は、日本に送る小麦には、発がん性に加え、腸内細菌を殺してしまうことで、さまざまな疾患を誘発する懸念が指摘されているグリホサートを、雑草ではなく麦に直接散布している。収穫時に雨に降られると小麦が発芽してしまうので、先に除草剤で枯らせて収穫するのだ。枯らして収穫し、輸送するときには、日本では収穫後の散布が禁止されている農薬イマザリルなどの防カビ剤を噴霧する。

⚫︎NG食品を見極める、商品ラベルの「裏読み」術
「これはジャップが食べる分だからいいのだ」とアメリカの穀物農家が言っていた、との証言が、アメリカへ研修に行った日本の農家の複数の方から得られている。

 グリホサートについては、日本の農家も使っているではないか、という批判もあろう。だが、日本の農家はそれを雑草にかける。
 農家の皆さんが雑草にかけるときも慎重にする必要はあるが、いま、問題なのは、アメリカからの輸入穀物に残留したグリホサートを、日本人が世界で一番たくさん摂取しているという現実である。
 しかも、アメリカで使用量が増えているので、日本人には小麦のグリホサートの摂取限界値を6倍に緩めるよう要請され、日本政府は2017年12月25日に、「クリスマス・プレゼント」と称して緩めてしまったのだ。残念ながら、日本人の命の基準値はアメリカの必要使用量から計算されているのであろうか。

 農民連食品分析センターの検査によれば、日本で売られているほとんどの食パンからグリホサートが検出されているが、当然ながら、国産や十勝産と書いてある食パンからは検出されていない。

⚫︎しょうゆからも検出
 また、大豆製品では、Rubio ほかがフィラデルフィアで購入した醤油中のグリホサート分析をし、検査した醤油の36パーセントで定量下限より多いグリホサートが検出された。有機醤油からグリホサートは検出されなかった(渡部和男氏のメモ、2015)。

 日本国内の醤油についての検査も不可欠と考えられる。日本人の毛髪検査からの輸入穀物由来とみられるグリホサート検出率も高い(28人中19人に検出、検出率68パーセント)。

 世界的にはグリホサートへの消費者の懸念が高まり、規制が強化されるなかで、日本は逆に規制を緩和しているので、日本での儲けに期待が高まることになる。

 2018年3月末に、消費者庁から「消費者の遺伝子組み換え表示の厳格化を求める声に対応した」として、GM(遺伝子組み換え)食品の表示厳格化の方向性が示された。

 アメリカからは、日本に対してGM表示を認めないとの圧力が強まると懸念されていたなかで、私はGM表示の厳格化を検討するとの発表を聞いたときから、アメリカからの要請に逆行するような決定が本当に可能なのか疑念を抱いていた。

 特にアメリカが問題視しているのは、「遺伝子組み換えでない」(non-GM)という任意表示についてである。すなわち、「日本のGM食品に対する義務表示は、対象品目が少なく、混入率も緩いから、まあよい。問題はnon-GM表示を認めていることだ」と日本のGM研究の専門家の一人から聞いていたからなのだ。

「GM食品は安全だと世界的にされているのに、そのような表示を認めるとGMが安全でないかのように消費者を誤認させるからやめるべきだ。続けるならばGMが安全でないという科学的証拠を示せ」という主張であった。

⚫︎そもそも緩かった「遺伝子組み換え表示義務」
 日本のGM食品に関する表示義務は、①混入率については、おもな原材料(重量で上位3位、重量比5パーセント以上の成分)についての5パーセント以上の混入に対して表示義務(注1)を課し、②対象品目は、加工度の低い、生に近いもの(注2)に限られ、加工度の高い(=組み換えDNAが残存しない)油・醤油をはじめとする多くの加工食品(注3)、また遺伝子組み換え飼料による畜産物は除外とされている。

(注1):GM原材料が分別管理されていないとみなし、「遺伝子組み換え不分別」といった表示が義務となる。
(注2):トウモロコシ、大豆、じゃがいも、アルファルファ、パパイヤ、コーンスナック菓子、ポップコーン、コーンスターチ、味噌、豆腐、豆乳、納豆、ポテトスナック菓子など。
(注3):サラダ油、植物油、マーガリン、ショートニング、マヨネーズ、醤油、甘味料類(コーンシロップ、液糖、異性化糖、果糖、ブドウ糖、水飴、みりん風調味料など)、コーンフレーク、醸造酢、醸造用アルコール、デキストリン(粘着剤などに使われる多糖類)など。

 これは、0.9パーセント以上の混入があるすべての食品に、GM表示を義務付けているEUに比べて、混入率、対象品目ともに極めて緩い。
 これに対する厳格化として、決定された内容を見て驚いたのは、①と②はまったくそのままなのである。

 厳格化されたのは、「遺伝子組み換えでない」(non-GM)という任意表示についてだけで、現在は5パーセント未満の「意図せざる混入」であれば、「遺伝子組み換えでない」と表示できたのを、「不検出」(実質的に0パーセント)の場合のみにしか表示できないと、そこだけ厳格化したのである(違反すると社名も公表される)。

 この表示義務の厳格化が、2023年4月から施行されれば、表示義務の非対象食品が非常に多いなかで、可能な限りnon-GMの原材料を追求し、それを「遺伝子組み換えでない」と表示して、消費者にnon-GM食品を提供しようとしてきた、GMとnon-GMの分別管理の努力へのインセンティブが削がれてしまう。そして、小売店の店頭から、「遺伝子組み換えでない」という表示の食品は、一掃される可能性が出てくるだろう。

 例えば、豆腐の原材料欄には、「大豆(遺伝子組み換えでない)」といった表示が多いが、国産大豆を使っていれば、GMでないから、今後も「遺伝子組み換えでない」と表示できそうに思うが、流通業者の多くは輸入大豆も扱っているので、微量混入の可能性は拭えない。

 実際、農民連食品分析センターの分析では、「遺伝子組み換えでない」大豆製品26製品のうち11製品は「不検出」だったが、15製品に0.17パーセントから0.01パーセントの混入があり、今後は、これらは「遺伝子組み換えでない」と表示できなくなる。

「GM原材料の混入を防ぐために、分別管理された大豆を使用していますが、GMのものが含まれる可能性があります」といった任意表示は可能としているが、これではわかりづらくて、消費者に効果的な表示は難しい。そこで、多くの業者が違反の懸念から、表示をやめてしまう可能性もある。すでにnon-GM表示をした豆腐などからの撤退が始まっている。

⚫︎割を食うのは消費者
 GM表示義務食品の対象を広げないで、かつ、GM表示義務の混入率は緩いままで、このようなnon-GM表示だけ極端に厳格化したら、non-GMに努力している食品がわからなくなり、GM食品ばかりのなかから、いったい、消費者は何を選べばよいことになるのだろうか。消費者の商品選択の幅は大きく狭まることになり、わからないから、GM食品でも何でも買わざるを得ない状況に追いやられてしまうだろう。

 これでは「GM非表示法」である。厳格化といいながら、アメリカの要求をピッタリと受け入れただけになってしまっている。
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🚶‍♀️…隠元橋…宇治川公園沿…巨椋大橋…伏見港&閘門… 210827

2021-08-27 18:26:00 | 🚶 歩く
🚶‍♀️…右岸河川敷…隠元橋…左岸堤防道…左岸47km…左岸河川敷…左岸堤防道張出46.4km…左岸45.8km左岸河川敷…観月橋袂…左岸堤防道:宇治川公園沿…巨椋大橋…東高瀬川右岸沿…宇治川右岸堤防道…伏見港…三栖閘門…右岸堤防道/河川敷…観月橋駅〜🚉…>
🚶‍♀️16162歩(35万歩越え)

☀️久々の晴天で陽射し強烈
 炎天下を広々な景観の中闊歩!
隠元橋36℃観月橋35℃

🌡30℃〜34℃〜


近鉄特急





ゴジラに見えなくもない

京都模型飛行機飛行場



巨椋大橋より宇治市一望

伏見一望





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