徐霞客 xu2 xia2ke4という人の名前をご存じでしょうか?中国・明代の旅行家で、彼の著作《徐霞客游記》は、中国の山野の自然を実際に踏破し、そのありのままの姿を文に残した、ということで画期的な意味を持っています。中国国家旅遊局は、この《徐霞客游記》の著述が始められた5月19日を“中国旅遊日”と定める、と発表しました。
以下、徐霞客の足跡について、調べてみました。
徐霞客 (1587年1月5日—1641年3月8日)明代の旅行家。江蘇・江陰の人で、裕福な家庭に生まれた。父・徐有勉は仕官を望まず、地方の有力者と交際し、また旅行し山水を愛でることを好んだ。徐霞客は父親の影響を受け、幼い時から地理、歴史の書物を読むことを好んだ。しかし、その当時の読書人の、科挙の試験に合格し、役人になるための学問は好まず、むしろ自ら各地を旅行し、書物に書かれたことを実際に自分の眼で見て確かめることを望んだ。
徐霞客は54年の生涯のうち、20年余りの時間、各地を旅行した。彼が足跡を記したのは、江蘇、安徽、浙江、山東、河北、河南、山西、陝西、福建、江西、湖北、湖南、広東、広西、貴州、雲南等の16の省で、東は浙江の普陀山、西は雲南の騰衝、南は広西の南寧一帯、北は河北・薊県の盤山を訪れ、当時の感覚では、中国全土の大半と言ってよい範囲であった。移動は、一部は船や馬も使ったが、大半が徒歩で、しかも彼自身が自ら荷物を背負ったそうである。
こうして生まれたのが、日記体で書かれた、260万字に及ぶ《徐霞客游記》であり、今日、そのうち60万字余りが伝わっている。
彼の旅行は、大自然の奥の神秘を探究するもので、20代には、先ず自らの生活圏の近くの太湖周辺、泰山などに足跡を残し、次いで28歳~48歳の間に、浙江、福建、黄山、北方の嵩山、五台山、華山、恒山といった諸名山を訪れた。晩年の51歳から54歳の間には、浙江、江蘇、湖広、雲貴の江南の山地や河川を見て回っている。
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次の文は、温家宝が2007年8月24日、徐霞客生誕420周年の記念活動の為に書いたもので、“中国旅遊日”制定報道の関連記事として、転載されたものです。
温家宝撰文: 紀念徐霞客
2011年04月13日 来源:人民網-《人民日報》
・撰文 zhuan4wen2 文章を書く。
■ 紀念徐霞客,心懐景慕。《徐霞客游記》対人類文化的貢献,在于徐霞客用人文精神与科学精神的文字,将中華民族頼以生存的山川大地予以逼真的描画;在人与自然,人与社会,人的自我意識等方面,完成了開拓性的全方位生態探討与審美観照。
・景慕 jing3mu4 敬慕(する)。慕い仰ぐ。“心懐景慕”で「敬慕の情を抱く」。
・予以 yu3yi3 “給以……”、“加以……”と同義で、「……してやる」の意味。
□ 徐霞客を記念し、私は心から敬慕の情を抱く。《徐霞客游記》の人類文化に対する貢献は、徐霞客が人文精神と科学精神の言葉を用い、中華民族がその生存の頼みとする大地を、真に迫って描写したことにある。また、人と自然、人と社会、人の自我意識等の面で、フロンティアとしての全方位的な生態の探究と審美的な観察を完成させたことにある。
■ 徐霞客行走大自然中的悠游自在、上下求索;追求真知中的堅苦卓絶、得心応手,是与他対大自然的礼敬尊崇和心印情懐分不開的。
・堅苦卓絶 jian1ku3 zhuo2jue2 [成語](艱難辛苦の中で)忍耐強さが人並み以上であること。
・得心応手 de2xin1 ying4shou3 [成語]思い通りの結果が得られる。事がすらすらと運ぶ。
・印 yin4 ぴったり合う。符合する。[用例]心心相~(心がぴったり合う。以心伝心。)
□ 徐霞客は、大自然の中を進んで行く時、ゆったりと自由気儘で、あちらこちらを探索した。彼が正しい知識を追求する時に並はずれて忍耐強く、予期した成果を得ることができたのは、彼の大自然に対する敬い、崇拝と、自然に寄り添う気持ちと切り離すことができない。
■ 作為中華文化滋養出的這位先哲,対地理的認識,対資源的愛護,尤其対水利的精心勘察,譲他本能地意識到人類生活中水的要義,人与人之間魚水和諧的要義,人的品性之上善若水的要義。
・精心 jing1xin1 苦心して。心をこめて。念入りに。[用例]~傑作jie2zuo4(入魂の傑作);~培植pei2zhi2(丹精込めて育てる)
・勘察 kan1cha2 採鉱や工事を行う前に、実地調査する。踏査する。
・要義 yao4yi4 大切な意味。重要な意義。“……要義”という句を3つ並べた表現技法に注目。これにより、文にリズムと躍動感を与えている。
・魚水和諧 yu2shui3 he2xie2 [成語]夫婦の仲の良いことなどが、まるで水魚の交わりのようであること。
・上善若水 shang4shanr ruo4shui3 《老子》の“上善若水,水善利万物而不争。”(《道経第八章》易性第八)から出た言葉で、「最高の善行というものは、水のように万物を潤すことができ、しかも名利を争ったりしない」という意味。
□ 中華文化に滋養を与えたこの先哲は、地理に対する認識、資源に対する愛護、とりわけ水利に対する渾身の踏査は、彼に本能的に、人類の生活の中での水の大切さ、人と人の間の関係が水魚の交わりのように調和していることの大切さ、人の品性は、水のように万物を潤すことができ、しかも名利を争ったりしないことが大切であるということを意識させた。
■ 《徐霞客游記》把三者圓融一体,潜移默化,沁入読者的心霊。中華経典的如此魅力,経受了時間的検験,歴史的審読。
・圓融 yuan1rong2 [仏教用語](この場合、yuan1と一声で発音するようである)頑なな気持ちを排し、円満で融通無碍な心持になること。
・潜移默化 qian2yi2 mo4hua4 [成語]感化を受けて、知らず知らずのうちに思想や性格が変化すること。[用例]文藝対人們思想起着~的作用。(文芸は人々の思想に目に見えない感化作用を与えている。)
・沁 qin4 気体や液体が、染み透る。染み込む。にじみ出る。[用例]沁人心脾qin4ren2 xin1pi2([成語]新鮮な空気や水分が体に染みわたること。転じて、すばらしい音楽や文学が人を清新で爽快な気持ちにさせること。)
・心霊 xin1ling2 心。[用例]~深処(心の奥底)
・審読 shrn3du2 文章を閲読して審査する。書類や文章を詳しく調べ、チェックすること。検閲する。“審閲”ともいう。
□ 《徐霞客游記》は、この三者を溶け合わせて一体にし、目に見えない形で感化し、読者の心に浸透する。中華の古典文学のこのような魅力は、時間の検閲、歴史の審査を受けたものである。
■ 時代進展到今天,人類如何生存,如何与自然和諧相処,如何維護全球的和平与発展,如何提高人類自身的人文与科学素質,依然是面臨的重大問題。多年来対徐霞客和徐学的研究,就是在這個人文大基礎与終極大方向上不断深化着的。
・相処 xiang1chu3 付き合う。生活や仕事を共にする。
□ 時代は今日のように進化を遂げたが、人類が如何に生存し、如何に自然と調和し共に暮らすか、如何に地球の平和を維持して発展するか、如何に人類自身の人文と科学の素質を向上させるかは、依然として我々が直面する重大な問題である。長年、徐霞客と「徐学」(徐霞客に関する学問)についての研究は、この人文の大きな基礎と終極の大きな方向の上を絶えず深化してきた。
■ 我由衷希望新世紀対徐霞客的紀念和対徐学的研究,能够gou4促進人們熱愛自然、熱愛生活,在領略祖国名川大山中増進対祖国的熱愛;使人們在伝承与開発中得到深刻啓悟,従而促進人們更加懂得保護資源、環境和生態。
・領略 ling3lve4 初めて知る。味わう。
□ 私は、新世紀が徐霞客への記念、「徐学」に対する研究により、人々の自然への熱愛、生活への熱愛を促進することができ、祖国の有名な河川や巨大な山塊を初めて知る中で祖国への愛情を増進させ、人々に伝統の継承と新たな開発の中で深い啓発と悟りを得さしめ、それにより人々がより一層、資源、環境、生態系の保護を理解することを促進することができるよう、心から希望する。
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温家宝自身、北京地質学院で地質構造を学んだ経歴から、徐霞客の実際に自分の眼で大地の姿を観察し、特に河川の水源地帯を実地に調べたという姿勢に共感を持たれていることが、この文から窺えます。
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