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前回まで、中国語の語句の最小単位である語素についてみてきました。今回は、語素より1ランク上の構成単位で、文法上の最小単位である“詞”について、見ていきます。
詞と詞滙(語彙)
“詞”は一定の意味を有し、固定した語音形式を備え、独立して運用できる、文の最小の構成単位である。通常の文章の一句、一句は、“詞”、或いは詞を組み合わせた“詞組”で構成されたもので運用されている。例えば:
我応該感謝母親,她教給我生産的知識和革命的意志,鼓励我以后走上革命的道路。
この文を、詞で区分すると、次のようになる。
我 応該 感謝 母親 她 教給 我 生産 的 知識 和
革命 的 意志 鼓励 我 以后 走 上 革命 的 道路
どうしてこのように区分するのか。これは、詞の意味、語音構造、文法機能の三つの面から説明できる。
1.意味からの分析
詞は“実詞”と“虚詞”の二つに大きく区分される。実詞は主に語彙(“詞滙”)の意味を表すのに用いられる。つまり、通常これを用いて、完全な、確定した、他の詞と相対立する概念を表す。例えば、“我”、“応該”、“感謝”、“母親”、“革命”、“知識”などがそうである。
虚詞は主に文法的な意味を表す。つまり、通常これを用いて、実詞と実詞が語句の組合せの中での相互の関係を表したり、文の中での語気を表す。例えば、“的”、“和”、“嗎”などがそうである。
実詞であれ虚詞であれ、具体的な文の組織の中では皆、明確な意味を持っている。例えば、上記の文で言うと、“我”は「自称」を表し、“応該”は“応当”、“感謝”は“感恩”、“母親”は「子供のいる婦人」の意味である。“的”はここでは偏正構造(前後二つの「成分が修飾(限定)するもの」+「修飾(限定)されるもの」で結ばれている構造)の中での修飾関係を表す。“和”は聯合構造の中での並列関係を表す。
2.語音構造からの分析
詞は一般に完全な、固定した語音構造を備えている。同時に、このような語音構造は、一般にその末尾においてのみ、停頓、つまりポーズを入れることができる。例えば、上の例文では、それぞれの詞の間でのみ、このようにポーズを入れることができる。
我 応該 感謝 母親 她 ……
次のようにポーズを入れることはできない。
我応 該感 謝母 親她 ……
3.文法からの分析
文の組織機能において、詞は文法成分になることができる。実詞は単独で文法成分になることができ、虚詞はしばしば実詞といっしょに文法成分になる。実詞一つ一つは皆、最小の独立した単位として、語句組織の中の一つの成分に充当される。例えば、上の文の例では、“我”、“応該”、“感謝”、“母親”は何れもこの文を構成する要素である。虚詞については、しばしば文の構造の中で実詞と組み合わさり、その作用を顕示する。例えば、“生産的知識”、“革命的意志”、“成功的道路”の中の“的”は、このように用いることで、これら詞の組み合わさった“詞組”の中の修飾関係を表す。“生産的知識和革命的意志”の中の“和”は、このように用いることで、この“詞組”の中の並列関係を表す。
どれが“詞”であるかを確定するのに、最も重要なのは、詞が「独立して運用できる最小の構造単位である」という点である。「独立して運用できる」ことから、詞より小さい単位は排除され、「最小」であるから、詞より大きい単位は排除される。例えば、上の例文で、“意志”をもし“意”と“志”に分けても、現代漢語ではそれぞれ単独で使用できない。“生産”を“生”と“産”に分けると、“産”は単独で使用できない。“生”は単独で使用した時の意味が、“生産”と異なる。したがって、“意志”、“生産”は独立して運用できる最小の単位、詞である。
通常、詞を確定する方法は、次の通りである:
(一)単独で用いることができ、単独で回答となるものが“詞”である。
この基準でみると、上の例の“我”、“応該”、“感謝”は何れも“詞”である。しかし、二つの状況に注意しなければならない。一つは、二つ、或いは複数の語素が組み合わさったユニット(単位)は単独で使えないか、単独で使われるケースが稀である。例えば、例文中の“教給”、“以后”。また例えば、“人造”、“国際”、“越冬”、“多辺”、“可控制”などがそうである。これらはこの組合せで文法成分となることができるので、これらも“詞”である。
欧米の言語は、詞に区分することが容易であるが、語素に区分することは比較的難しい。一方、中国語では、語素に区分することは容易だが、詞に区分することは比較的難しい。これは、語素と詞はこれらの基礎は口語の中に存在するけれども、人々は書面に書いた時の区分を基準に考えるからである。中国語は、書面では漢字で書かれる。1漢字=1語素が基本であるので、語素がベースとして書かれていることとなり、詞に分けて書かれてはいない。これはまた、文の構造を詞に分けて議論する時、しばしば異なる見方が出てくる由縁である。
(二)一つの文の中の全ての単独で使うことができ、文法成分になることのできる単位を区分けした時、残った、単独で使うことができず、しかも一つの詞の構成部分ではないものも、“詞”である。
虚詞はこの方法で確定することができる。例えば、上の例文の“的”、“和”がそうである。
(三)拡大法(“拡展法”)で調べた時、ある一つの言語単位の中間に別の成分を挿入することができないものは“詞”である。
例えば、“白菜”は“白的菜”と言う(語を拡大する)ことはできない。同様に、“鉄路”、“掛図”、“信紙”なども中間に別の語を挿入して拡大することはできない。ここで注意しないといけないのは、拡大後、意味が変わってはならないということである。例えば、“馬路”は拡大できない。もし“馬走的路”としてしまうと、意味が明らかに変化している。よって、“馬路”は詞である。
以上が詞についての説明である。次に“詞滙”、すなわち語彙について述べる。
語彙はいわば言語の建築材料に相当し、言語中の詞と詞の等価物(固定詞組。熟語や成語のことである)の集合体である。語彙とは、ある一人の人の理解している、或いはある一冊の書物の中で使われている詞語(ことば)の総和である、と言うこともできる。言語中の個々の詞のことは、語彙とは呼ばない。
語彙を研究する学問を「語彙学」(“詞滙学”)と呼び、言語学の一部分である。現代漢語における語彙学は現代漢語の語彙を研究対象にしている。一般的に言うと、その研究内容は、現代漢語の詞の性質、詞の構成、詞の意味の性質、詞の意味と意味の間の関係、語彙の構成、辞典(“字典”の方である)の編集、などである。
語彙学の研究の重点は実詞である。
【原文】胡裕樹主編《現代漢語》重訂本 上海教育出版社1995年
以上、文を文法的に分析する時の基本単位である詞はどういうものか、そして漢字一文字で表わされる語素との関係を見てきました。次回は、この詞が組み合わさってできる“詞組”について、見ていきます。