創作日記&作品集

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人間の建設 岡潔・小林秀雄対談

2010-04-21 09:41:14 | 読書
○数学も個性を失う
岡 世界の知力が低下すると暗黒時代になる。物のほんとうのよさが分からなくなる。

難解です。でも、キーワードはわかります。個性と言葉でしょう。小林秀雄の言葉についての思索がこの後語られます。
友人と岡先生を訪れた時、数学は考える時間さえあれば他に何もなくてもできると言っておられました。数学も芸術も一人一人の人間と深く関わっているということだと思います。二人は初対面でお互いを知りました。だから何も隠すものもなく、10年の知己のように自由に話せるのだと思います。もともとそういう人だったのかもしれませんが。いや、何か垣根を超えればそうなるのかもしれません。この対談はとてつもないものです。百回読む価値のあるものです。二人が言っていることは端々は難解でも、中心は一つです。人間だと思います。

○科学的知性の限界
小林 私が音楽について書くときには、それを言葉にしましょう。バッハの世界はこうであろうとか、言葉でそれをあらわしますね。最後には言葉するわけです。
岡 言葉に直すのに、いかに苦心を払っていられるかというがわかります。その苦心を私は情熱といっているのです。
小林 けっきょくベルグソンの考えていた時間は、ぼくたちが生きる時間なんです。自分が生きてわかる時間です。そういうものがほんとうの時間だとあの人は考えていたわけです。
岡 感情ぬきでは、学問はといえども成立しない。
小林 あなたのおっしゃる感情という言葉は、普通いう感情とは違いますね。
岡 だいぶ広いです。心というようなものです。知でなく意ではない。
小林 ぼくらがもっている心はそれなんですよ。
岡 その感情の満足、不満足を直感といっているのでしょう。それなしに情熱はもてないでしょう。人というのはそういう構造をもっている。
小林 そうすると、つまり心というものは私らがこうやってしゃべっている言葉のもとですな。

言葉、情熱、時間、感情、直感。確かに難しいが人一人が生きるとは何かを語っているように私は思います。一言一言に含蓄があります。これは一回ではとうていわからない。わかったとき、自分はどう生きるべきがみえてくると思います。余談ですが、二人の対話を写していると、日本語の書き方の勉強になります。対談を日本語に直した人のひらがなの美しさが難解な対談をほっとさせています。


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