創作日記&作品集

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東京自叙伝・奥泉光著 2

2014-06-08 14:04:09 | 読書
今でも、自分は江戸時代にもいたかもしれないと思うことがあります。多分、貧乏な小作人だったとも。
大名や殿様ではないその他大勢ですね。自分は名もなき歴史の群衆の中の一人。
だが、歴史を作るのはその群衆ではないかとも思うのです。
鼠は群れの中の個という意識が希薄であり、ミミズにいたっては、群れと個のさかいもない。小説ではそんな風に書かれています。
鼠のイメージは繰り返されます。でも可。
主人公は輪廻転生するのではなく、同じ時に存在することもあります。鼠の群れであることもある。
そんなやり方で時代を渡って行きます。
確かに私もバルブの真ん中にいたことがあります。
只、バルブを動かす側でも翻弄される側でもなかった。だが、間違いなく歴史を作っていた。
それが先述した「その他大勢」や「群衆の中の一人」という意味です。
小説の主人公はそんな群衆のシンボリックな人々である。
主人公達には奇妙な共通点があります。感情が希薄なのです。(確かに歴史には感情がない)。
主人公は愛することも、恋することもない。只ひたすら時代と寝ている。そんな感じです。
そのような主人公を設定することにより、時代が俯瞰的に見えてきます。
狂信的に日の丸を振る人がある意味で先の戦争を起こした。無数の人が踊ったからバブルは来た。鼠の群れが去ったらバブルも去った。
私たちは自分が「その他大勢」や「群衆の中の一人」と言う認識を持つことにより、歴史の中の「今」が見えてくる。
この小説を読んでそんなことを感じました。
随分長い間、踊ってきたなあ。
まあ、死ぬまで踊りつつづけるでしょうけれど……。STAP細胞、2020年東京オリンピック、エクセトラ。


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