門は開かれていた。篝火が燃えていて、昼間のように明るかった。石畳を進むと、小さな池があった。その向こうに見えるのは本堂らしい。老婦人が「ない」と言っていた建物が整然とした趣で建っていた。
本堂に隣接した小さな建物があった。本堂と渡り廊下でつながっている。和助さんは、その建物に僕を誘導した。
部屋の隅に先客がいた。やせた小さな男だった。
「ここで、しばらくお待ち下さい」
和助さんは男のとなりの座布団を示した。男は僕の方をちらっと見たが、目を反らした。僕は小さく挨拶をして、隣に腰を下ろした。本心は不安で、来なければよかったと思った。僕は小心者である。男も同じようだ。身を縮めて、時々思い出したように、額をぬぐった。夏の夜なのにあまり暑さを感じない。特にこの部屋は涼しくさえある。部屋を見回したが冷房器具は見当たらなかった。
しばらくすると、人の気配がした。和助さんの後から入ってきたのは、はっとするほどの美女だった。年は二十歳になっていないだろう。最も離れた部屋の隅に坐った。俯いてじっとしている。浴衣を着ていた。紺の生地に朝顔が咲いていた。
和助さんは客の前に湯飲みを置いて、お茶を入れた。何とか焼きだろう、高級そうな湯飲みだ。誰も手を出さない。僕が最初に湯飲みを手に取った。茶の香が心地よかった。
ーこれから何が始まるのだろう?ー。熱い茶を飲みながら思った。
本堂に隣接した小さな建物があった。本堂と渡り廊下でつながっている。和助さんは、その建物に僕を誘導した。
部屋の隅に先客がいた。やせた小さな男だった。
「ここで、しばらくお待ち下さい」
和助さんは男のとなりの座布団を示した。男は僕の方をちらっと見たが、目を反らした。僕は小さく挨拶をして、隣に腰を下ろした。本心は不安で、来なければよかったと思った。僕は小心者である。男も同じようだ。身を縮めて、時々思い出したように、額をぬぐった。夏の夜なのにあまり暑さを感じない。特にこの部屋は涼しくさえある。部屋を見回したが冷房器具は見当たらなかった。
しばらくすると、人の気配がした。和助さんの後から入ってきたのは、はっとするほどの美女だった。年は二十歳になっていないだろう。最も離れた部屋の隅に坐った。俯いてじっとしている。浴衣を着ていた。紺の生地に朝顔が咲いていた。
和助さんは客の前に湯飲みを置いて、お茶を入れた。何とか焼きだろう、高級そうな湯飲みだ。誰も手を出さない。僕が最初に湯飲みを手に取った。茶の香が心地よかった。
ーこれから何が始まるのだろう?ー。熱い茶を飲みながら思った。
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