創作日記&作品集

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「わたしなりの枕草子」#285

2012-01-14 08:01:56 | 読書
【本文】
二百四十四段
文ことばなめき人こそ
文のことばなめき人こそいとにくけれ。世をなのめに書き流したることばのにくきこそ。
さるまじき人のもとに、あまりかしこまりたるも、げにわろきことなり。されど、我が得たらむはことわり、人のもとなるさへにくくこそあれ。
おほかたさし向かひても、なめきは、などかく言ふらむとかたはらいたし。まいて、よき人などをさ申す者はいみじうねたうさへあり。田舎びたる者などの、さあるは、をこにていとよし。
男主(をとこしゆう)などなめく言ふ、いとわるし。我が使ふ者などの、「何とおはする」「のたまふ」など言ふ、いとにくし。ここもとに「侍り」などいふ文字をあらせばやと聞くこそ多かれ。さも言ひつべき者には、「人間の愛敬な、などかう、このことばはなめき」と言へば、聞く人も言はるる人も笑ふ。かうおぼゆればにや、「あまり見そす」など言ふも、人わろきなるべし。
殿上人、宰相などを、ただ名のる名を、いささかつつましげならず言ふは、いとかたはなるを、清うさ言はず、女房の局なる人をさへ、「あの御もと」「君」など言へば、めづらかにうれしと思ひて、ほむることぞいみじき。
殿上人・君達、御前よりほかにては官(つかさ)をのみ言ふ。また、御前にてはおのがどちものを言ふとも、聞こしめすには、などてか「まろが」などは言はむ。さ言はむにかしこく、言はざらむにわろかるべきことかは。

【読書ノート】
言葉づかいを細かく論じています。なめき人=無礼な人。なのめに=いいかげんに。我が得たらむは=自分が受け取ったのは。おほかた=大体。よき人などをさ申す=よき人のことをいいかげんに言う。をこ=滑稽。男主=旦那様。我が使ふ者=私の使用人が。「おはす」、「のたまふ」は敬語「おわします」「仰せになる。「侍り」=謙譲。「ございます」。人間の愛敬な=突然人間という言葉が出てきてびっくりします。人の住む世界。人当たりに可愛げない。→萩谷朴校注。人わろきなるべし=みっともないからでしょう。敬語と謙譲語の使い分けを言っています。昔から乱れていたのか……。かうおぼゆればにや=このように細かく言うからだろうか。
ただ名のる名=本名。いささかつつましげならず=何の遠慮もなく。かたは=片端。見苦しい。ぶざま。清うさ言はず=はっきり(本名)を呼ばず。女房の局なる人=局で使われている女。ここは「誰が」「誰に」かさっぱり分かれませんね。諸注を参考にしても分かりません。
おのがどち=仲間どうし。聞こしめす=主君がお聞きになる。かしこく=畏く。畏れ多い。日本語の使い方は難しいですね。敬語、謙譲語、丁寧語。「まろ」はくだけた言葉。前にありました。


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