創作日記&作品集

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新編日本幻想文学集成 1 図書刊行会  安部公房「実在と虚構の間」

2016-08-29 16:11:05 | 読書
久しぶりに安倍公房を読む。30年ぐらい前は、はまっていた。文庫本で全部揃えたが今はない。狭い本棚の奥にしまわれ、やがて捨てた。
読み始めて驚いたのだが、実に読みやすい。こんなに読みやすい文章だったのか。
安倍公房はテレビのインタビューで、
「小説というのは、それ以前の、意味にまだ到達しないある実態を提供する。そこで読者はそれを体験するというもんじゃないかと思う」と語っている。
彼の提供する世界に理屈をこねても無駄だ。
小説の世界をただ歩くのがいい。
デンドロカカリヤは植物への変身譚。横道に逸れるが、「植物は偉い」とラジオ放送で聴いた。植物は動物のように動く必要がない。
「京都弁の先生」甲南大学 教授・田中 修さんです。 13回のラジオ講座は楽しく面白かった。植物への変身は進化かも知れない。
「詩人の生涯」はとても懐かしい気がした。39才の老婆が踏み続ける糸車は実在と虚構の間を行き来する。ユーキッタン、ユーキッタンと。
「家」。先祖が家に住んでいる話。私事だが、去年から95才の義母と同居している。この話を読んだ時、何故か真っ先に、義母の姿が頭に浮かんだ。健在なのにね。
突然現実が捩れる。社会が捩れる「チチンデラ ヤパナ」。自分の生活の場所の一角が消失する「カーブの向こう」。意味不明の言葉に小説の世界が立ち上がる。「鉛の卵」。「ユープケッチャ」。
中間言語「クレオールの魂」。引き継がれない言葉に哀愁が漂う。
To be continued  倉橋由美子「子宮で語る」