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創作日記&作品集

作品集は左のブックマークから入って下さい。日記には小説、俳句、映画、舞台、読書、など…。そして、枕草子。

『一人称単数』村上春樹著

2020-10-05 17:07:30 | 読書
どれも素晴らしい短編である。
八つの小説の視座は変わらない。
一人称単数である。
確かに私たちは等しく一人称単数なのだ。
最初の『石のまくらに』は「性交」が必須である。
村上春樹の小説は性描写が過激だからノーベル賞が受賞できないという意見があると聞いた。
しかし、性描写がなければ『石のまくらに』は成立しない。
たち切るも/たち切られるも/石のまくら
うなじつければ/ほら、塵となる
この短歌もない。
『品川猿の告白』では、思わず声を上げて笑ってしまった。
新作である 『一人称単数』では、私達の唯一の拠り所である一人称単数の危うさ、そして、怖さが描かれていると思う。

😂『源氏物語』中 角田光代訳

2020-07-27 15:40:06 | 読書
第34帖『若菜・下』まで読み進めました。
それにしても『源氏物語』の登場人物はよく泣きます。
『枕草子』の登場人物がよく笑うのと対照的です。
中宮定子に仕えた清少納言。
中宮彰子に仕えた紫式部。
不遇の定子と絶頂期の彰子。
不思議です。
「をかし」と「あはれ」の世界観の違いですか。

😊『源氏物語』角田光代訳

2020-07-11 16:43:21 | 読書
読みやすい。
スラスラと読んで「葵」の段までやって来た。
コーヒーブレーク。
角田光代さんは、あとがきで、『源氏物語』に特別な思いはないと述べている。
ひょっとすれば、全段読み通したことがないのかもしれない。
私は、大塚ひかり全訳『源氏物語』で初めて読み通すことが出来た。
谷崎源氏も何度か挑戦したがあえなく挫折した。
窯変『源氏物語』橋本治著(図書館に14巻揃っていた)も少しだけ読んで、あまりの長さに諦めた。
そうまでして何故『源氏』を読もうとするのだろう。
それは私の場合、日本古典文学の最高峰という「ブランド」である。
一度は全部読み通さなくてはいけないという、脅迫概念のようなものでもある。
角田光代さんは現代語訳する「立ち位置」が分からなかったと言う。
それが分からなければ膨大な現代語訳は出来ないだろう。
そこで見つけたのは「読みやすさ」である。
ワーッと読める現代語訳である。
それを見事に具体化したのが角田光代訳源氏物語であると思う。
簡単なことではない。
至難の技である。
見事にやってのけた感じがする。
様々な名場面がワーッと読める現代語訳の中から蘇る。
長編小説の醍醐味である。




👀『死という最後の未来』石原慎太郎・曽野綾子対談

2020-07-01 10:40:01 | 読書
曽野綾子さんは達観していると言うか、終始一貫している。
バックボーンに宗教があるからなのかもしれない。
石原さんはポジティブである。
石原さんも法華経があるらしいが信心というより、哲学的な拠り所のような気がする。
石原さんがなぜ法華経に帰依するのか、『法華経を生きる』を読んだが、頭の悪い私にはよく分からなかった。
お二人と違って私はネガティヴ。
もうじき74歳になる。
自分が死ぬのが怖い。
それもだんだん近づいて来る気がする。
眼が覚めると、また一日が始まる、何もすることがないと途方にくれる。
咳なし、熱なし、コロナなしと声に出して言う。
コロナが気になってビクビクしている。
開経偈→般若心経→光明真言(三回)→南無大師遍照金剛(三回)唱える。
病気が怖い。
60代は少々体調が悪くても死ぬなんて思わなかった。
この頃はちょっと体調が悪いと死ぬんじゃないかと思う。
私はお二人には理解不可能な弱者かもしれない。
何らかの拠り所を求めてこの本を買った。
ほぼ図書館で借りているので、本を買うのは久しぶりである。
老人もお金がないのだ。
この対談はとても面白い。
九十前の二人が思い切り喋っている。
二人とも功成り名を遂げた人である。
有名な二人も無名の私も同じように死が訪れる。
その前の『病』が恐ろしい。
とりわけ認知症が怖い。
年をとるといいことなんか一つもない。
この二人の先輩の話を読んでいると、少し救われたような気がする。
願わくば苦しまずに死にたい。




🐱‍🚀『猫を棄てる』村上春樹著絵・高妍

2020-06-08 13:10:27 | 読書
猫を棄てる。
残酷な気がしたが、数ページで解消する。
捨てた猫の方が早く家に帰って来ていた。
しかし、猫を棄てる感覚(悔恨に近いようで、全く違うような不思議な感覚)はこの本に通底している気がする。
父親は息子にとって不思議な存在である。
母親とは全く違う。
一種のライバルであり、友達になることはない。
人生の先人であり、何よりも自分によく似ている。
私の場合一度だけ諍いがあった。
それが傷になり悔恨になった。
実に些細な諍いで、直ぐに忘れてしまうものだった。
そこにいた父母も忘れただろう。
父母が亡くなった今では、私以外誰も知らない些事だった。
しかし、私の中にはずっと残っている。
あの諍いはするべきではなかった。
村上さんの父もわたしの父も戦争に行っている。
村上さんもわたしも戦後生まれで父が戦死していれば今はなかった。
村上さんの父は、教師で俳句を詠んだ。
私の父は商売人で高等小学校卒である。
俳句も詠まないし学識もない。
たが、二人は同じ時代を生きた。
この本は、不思議と私の父の姿と重なる。
これをどう表現したらいいのだろう。
迷う。
父は亡くなって25年も経つが今も自分のそばにいる。
イラストも素敵だ。
「孤独」が美しい。

楽天ブックス限定お買いものパンダしおり

2020-04-14 13:54:53 | 読書

新型コロナウイルスの為遅れていた本が、やっと「楽天ブックス」から送られてきました。
嬉しいのは、「しおり」三枚です。
近頃の本は、糸栞がないのが当たり前のようです。
この栞はありがたいです。
本はまだ読んでませんが、嬉しくて紹介します。

『時間は存在しない』カルロ・ロヴェッリ(著 )冨永星(翻訳)

2020-02-11 14:25:18 | 読書
予約の順番が来て、図書館で借りた。
栞が約八分の一のところにある。
多分前に借りた人がこのあたりで読むのやめたのだと思う。
僕もやめようとそのあたりで思った。
進めていくとその気持ちは強くなった。
次の予約も入っていて、延長は出来ない。
とにかく読み進めた。
難解な本だ。
過去現代未来で語られる時間は存在しない。
読んでいる内に次々と疑念がわいてくる。
時間の主人公である自分とは何者だろう?
記憶とは?
生きているとは?
そしてこの一節に突き当たる。
『ちょうどポール・マッカートニーの「丘の上の愚か者」が沈む夕陽を見て、地球が回っていることを悟ったように、そして、自分たちが時間であることを悟り始める』

「謝肉祭(Carnaval)」・村上春樹著(2019年文學界12月号)

2020-01-13 15:59:57 | 読書
「彼女は、これまで僕が知り合った中でもっとも醜い女性だった-というのは……」で始まる冒頭は、ショッキングである。
「差別」という言葉がすぐに浮かぶ。
しかし、それはより深いところに読者を誘うための作者の手管である。
それ以外の言葉がなかったのかもしれない。
もともと人間の美醜とは何だろう。
F*で語られる女性は語り手の「僕」にとって「性」を越えたところに存在している。
醜いことが、「彼女独自のダイナミズムを立ち上がらせるのだ」と「僕」は語る。
シューマンの「謝肉祭」で意見の一致した二人は、性も美醜も離れたところでお互いを理解する。
シューマンの「謝肉祭」を聴き、語ることでより深くシューマンの世界に降りていく。
仮面舞踏会の世界へ。
勿論私は、音楽に無知である。
だが、何かしら分かる世界である。
もう今では、新作を心待ちにするのは、村上春樹だけになってしまった。
昔は、三島由紀夫や安部公房、つげ義春をはじめ沢山いたのに。

『枕草子のたくらみ」山本淳子著

2019-12-06 10:04:02 | 読書
「をかし」の世界には、一枚めくれば違うものが隠れている。面白うて、やがて哀しき「をかし」なのだ」(p294)
『枕草子』の日記的章段の背景には、中宮定子の悲惨な運命がある。その光と影を見事に解き明かしたのが本著である。
深い考察に満ちた一冊である。
私も『枕草子読み語り』という渾身の一冊を出版しております。
フリマは終わりましたが、『枕草子読み語り』はまだ、少し残ってます。
メール(ikekubohiromu@yahoo.co.jp)をいただければ数に限りがありますが贈呈します。