なのにオイラは京都へゆくの?

大阪の中年男が、京都の山に登った際の赤裸々(?)な公式日記帳やねん。
のはずが……京都・自己満足ブログとなりにけれ。

『恋文の技術』 森見登美彦

2011-05-03 09:54:35 | 
恋文の技術 (ポプラ文庫)
森見 登美彦
ポプラ社

 拝啓。 

 風薫る五月となりました。お変わりございませんか。

 小生、このたび森見登美彦氏の文庫本新刊を購入。ようやく読破いたしました。

 タイトルは何やらハウツー本ぽいのですが、れっきとした書簡体小説なのです。

 書簡体小説と言えば、その昔、宮本輝氏の『錦繍』を読んだことがあるのですけれど、あれは大人の男女の恋愛模様を描いた往復書簡体小説の名作でありましたが、今回読んだ森見氏の『恋文の技術』に至っては、我々が愛すべき腐れ大学院生の阿呆な手紙が延々と綴られているのでありました。

 主人公は守田一郎くん。森見氏の後輩なので京都大学の大学院生です。
 教授の差し金によって能登半島の寂しい海辺の実験所へ飛ばされた守田くんは、いかなる女性に対し手紙一本で籠絡できる技術を身につけ世界を征服すべく「文通武者修行」と称し、恋に悩む友人、守田くんの妹、研究室に君臨する女帝、かつて家庭教師をしていた小四の少年、森見氏に対して手紙を書いては送り続けます。
 相手からの返信は一切記述がなく省略されているので、守田くんが書いた手紙の内容から推察するしかありません。読み進めていくうちに彼らに起きている事の全貌が明らかになっていくという寸法です。

 「猫ラーメン」や「韋駄天コタツ」といった過去作のキーワードが出てくるので、『太陽の塔』『四畳半神話大系』『夜は短し歩けよ乙女』は最低限読んでおかないと、「この小説のオモチロさは半減」とまでは言いませんが意味がわからない部分が出てくることでありましょう。ですが、わからなくても大筋には関係ありません。わからずともオモチロイ小説なのでご安心を。

 詩人か、高等遊民か、でなければ何にもなりたくない貴方。もしくはおっぱい絶対主義と闘っている貴方のような人は必読です。

 ただし、教訓を求めるな。

 貴方がこの小説を読破したあかつきには、もう大文字山へ行っていることでしょう。

敬具

                    ○

 男女で歌うデュエット曲は数あれど、往復書簡体の歌詞で不朽の名曲なのが太田裕美さんが歌った『木綿のハンカチーフ』。

 さすがに名曲。いろいろな方がカバーされています。

 後日、この歌を作詞した松本隆氏が「ボブ・ディランの『スペイン革のブーツ』の歌詞の影響を受けた」と言ったとか。

 そんな松本隆氏が吉田拓郎氏とタッグを組んで作った往復書簡テイストの名曲が『外は白い雪の夜』。

 真心ブラザーズの『この愛は始まってもいない』も往復書簡テイストの好きな歌。作詞・作曲はYO-KING氏。バックコーラスで太田裕美さんが参加しています。