犯罪被害者の尊厳や権利が、現在著しく損なわれていること自体は、社会全体の認識であると思う。とりわけ、報道機関による興味本位かつ過剰な取材及びその他の行動のために、犯罪被害者やその家族が追い討ちをかけるような目にあっていることは、看過し得ない事態である。これを受けて、政府は「犯罪被害者を支援する基本計画案」の中に、事件・事故の被害者を実名・匿名のいずれで発表するかの判断を警察に委ねる項目を盛り込んだのは当然の流れである。これに対して、マスコミや野党は「報道機関による警察の捜査へのチェックが行き届かなくなる」などと猛反発している。この問題では加害者にあたる報道機関がそんな言説を堂々と主張するなど、議論のすりかえであり、盗人猛々しいとしかいいようがない。
政府案では、被害者を報道機関へ通知する際に匿名か実名かは警察の裁量により個別具体的に、すなわちケースバイケースで決定するということである。この際に被害者やその家族の意向がどれほど反映されうるのかが課題として残るだろうが、政府案はそれほどおかしなものではないと思う。警察の裁量のみにかからしめることに若干の躊躇を覚えるのも確かに事実ではあるが、現状に比べればはるかに被害者の権利保護に資する。よって、最善とはいかないまでも評価すべきだとは認識している。
この問題の本質は、言うまでもなく、犯罪被害者の尊厳をいかにして守るかということである。全て匿名でいいではないかという気もするが、「犯罪被害者にはれっきとした名前があり、匿名報道されることは逆に人格を否定されることになる」という主義主張の人もいるという。それならば、何のことはない、被害者自身が決めればよいということである。もっと正確に言えば、全国民が犯罪被害者になる可能性がゼロでない以上、全国民があらかじめ意思表示しておけばよいだけの話である。そうはいっても、犯罪被害にあったことをみだりに公表されない権利というものを認めるのが本筋だと思うので、原則は匿名として、特に何も意思表明をしていない場合には匿名とすべきである。
具体的には、原則として全て匿名とし、自らが犯罪被害者となった場合に実名報道されることを希望する者はその旨を、ちょうどドナーカードのような形で表明しておくことを提案したい。偽造や悪用などの心配を減らすために、そのカードは公安委員会あるいは警察庁に番号とともに登録する制度にしておくべきであろう。そして、登録が警察において確認された場合に限り、実名で報道機関に情報を流すというシステムである。当然のことだが、警察官であれマスコミの者であれ、その過程で不正なことをすれば処罰の対象とする。未成年者に関しては、親あるいはその他の保護者が決定し、一定の年齢に達した後で変更できるというよにすればよい。住民基本台帳ネットワークを利用すれば、さらに効率的な運用をすることができるのではないかと思う。以上のような骨格に、微調整を加えていけば最も理にかなう制度になるのではないかと考える。ここでいう微調整とは、例えば公人に関しては例外扱いするとか、そういうことである。
私は、政府案よりも本私案の方が、裁量の少ない「法の支配」に立脚した制度だと思う。
なお、本エントリーは、ブログ『目本国の行方』様における「憲法上の新しい権利」に関する議論を通じて刺激されたところ大である。ここに特に記して謝意を表する次第である。
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政府案では、被害者を報道機関へ通知する際に匿名か実名かは警察の裁量により個別具体的に、すなわちケースバイケースで決定するということである。この際に被害者やその家族の意向がどれほど反映されうるのかが課題として残るだろうが、政府案はそれほどおかしなものではないと思う。警察の裁量のみにかからしめることに若干の躊躇を覚えるのも確かに事実ではあるが、現状に比べればはるかに被害者の権利保護に資する。よって、最善とはいかないまでも評価すべきだとは認識している。
この問題の本質は、言うまでもなく、犯罪被害者の尊厳をいかにして守るかということである。全て匿名でいいではないかという気もするが、「犯罪被害者にはれっきとした名前があり、匿名報道されることは逆に人格を否定されることになる」という主義主張の人もいるという。それならば、何のことはない、被害者自身が決めればよいということである。もっと正確に言えば、全国民が犯罪被害者になる可能性がゼロでない以上、全国民があらかじめ意思表示しておけばよいだけの話である。そうはいっても、犯罪被害にあったことをみだりに公表されない権利というものを認めるのが本筋だと思うので、原則は匿名として、特に何も意思表明をしていない場合には匿名とすべきである。
具体的には、原則として全て匿名とし、自らが犯罪被害者となった場合に実名報道されることを希望する者はその旨を、ちょうどドナーカードのような形で表明しておくことを提案したい。偽造や悪用などの心配を減らすために、そのカードは公安委員会あるいは警察庁に番号とともに登録する制度にしておくべきであろう。そして、登録が警察において確認された場合に限り、実名で報道機関に情報を流すというシステムである。当然のことだが、警察官であれマスコミの者であれ、その過程で不正なことをすれば処罰の対象とする。未成年者に関しては、親あるいはその他の保護者が決定し、一定の年齢に達した後で変更できるというよにすればよい。住民基本台帳ネットワークを利用すれば、さらに効率的な運用をすることができるのではないかと思う。以上のような骨格に、微調整を加えていけば最も理にかなう制度になるのではないかと考える。ここでいう微調整とは、例えば公人に関しては例外扱いするとか、そういうことである。
私は、政府案よりも本私案の方が、裁量の少ない「法の支配」に立脚した制度だと思う。
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ただしあと少し突っ込んでいただきたい。
「被害者を実名・匿名のいずれで発表するか」と、警察などの側のみを問題にして報道機関のことを棚上げにしているようですが、あの手この手を使い抜け駆けする報道機関も出て来ます。嘘や誘導尋問を駆使してさまざまな人たち、或いは機関から情報を入手するでしょう。
そのような場合、被害者の報道機関に対する責任追及の道を法律で確保しておくべきだと思います。
『続・犯罪被害者は原則匿名報道にせよ』http://blog.goo.ne.jp/idol510/e/398c9bc0303919a349dc35de917a9b63という記事にて補足説明しておきました。よかったらご覧ください。