ここ約2週間のうちに、日米が相次いで提案した国連分担金の負担率見直しについて一瞥しておきたいと思う。
まず、日本の提案は、安保理常任理事国に対し、新たに「3%以上か5%以上」との下限を設定する案である。現行では、国連の分担金比率は基本的に国民総所得(GNI)に応じて決定される。この算定方法に基づき、安保理常任理事国5カ国の分担率は現在、米国22.0%、英国6.1%、フランス6.0%、中国2.1%、ロシア1.1%となっている。 日本の分担率は米国に次いで高い19.5%であり、これは、米国を除く常任理事国4カ国の計15.3%より高いということは再三指摘されている通りである。保有する権限に従って、常任理事国は一定の割合以上の負担をすべきだというのは、機能面から考えて理にかなっている。一言言うべきは、それ以前に、国連憲章に明記されている我が国に対する旧敵国条項を削除させることである。まかり間違っても、総会の決議により事実上空文化しているなどということで満足すべきではない。「敵国」の分担金となれば、今もって賠償金を払い続けているという意味合いを読み取ることもあながち論理の飛躍ではない。国民の税金をそんなものに使うのは筋が通らない。
米国の提案は、国民総所得ではなくて購買力平価に基づいて分担金の割合を決めろというものである。財やサービスの取引が自由に行える市場では同じ商品の価格は1つに決まる「一物一価の法則」が成り立つのだが、そのときに国内外において、同一商品の価格は同一価格で取引され、2国間の為替相場は2国間の同一商品を同一価格にするように均衡する。この均衡為替相場が購買力平価である。ややこしい経済学的定義はともかくとして、直感的にもっと分かりやすく言えば「ある通貨でどれだけのものを買うことができるか」を表す指標である。国連加盟国のうちデータがある国の03年のGNIを購買力平価で計算すると、その比率は米国が20.0%、日本が7.2%、中国の場合、12.7%になるという。ここで注目すべきなのは人民元の為替レートが現在、実勢とかけ離れて安くなっている(すなわち購買力平価が成り立っていない)点である。米国が購買力平価を持ち出してきた時点でピンと来た。国連分担金負担率の見直しに名を借りて、過小評価された人民元のレートに対して改めて切り上げ圧力をかけるというメッセージを読み取るべきなのである。米国のしたたかさには舌を巻くほかない。
もっとも、購買力平価を用いて分担金の負担割合を決定するというアイディア自体きわめて理にかなっている。購買力平価のデータがない国が約30カ国もあるなどの技術的な問題があるにせよ。
(参考記事1)
[米国、国連分担率で中国「狙い撃ち」の提案 中国は反発]
米国は13日、現在同国と日本が全体の4割以上を負担している国連の分担金比率について、見直し案を国連総会第5委員会に提出した。各国の通貨を換算する際に、実際にどれだけの物が買えるかという購買力にもとづいて計算するとの内容。試算では、現在約2割を負担する日本と、約2%の負担にとどまっている中国が逆転するともされ、「中国ねらい撃ちの提案だ」との声が出ている。
国連の分担金は現在、ドルに換算した加盟国の国民総所得(GNI)などによって分担比率が定められており、米国が22.0%、日本が19.5%、中国は2.1%となっている。
米国が提案で導入すべきだとしたのは「購買力平価」で、通貨の人民元の為替レートが現在、実勢とかけ離れて安くなっている中国には不利になる。世界銀行などの試算によると、加盟国のうちデータがある国の03年のGNIを購買力平価で計算すると、その比率は米国が20.0%、日本が7.2%、中国の場合、12.7%になるという。
ただ、現実には、国連加盟191カ国のうち購買力平価のデータがない国が約30カ国もあるなど、米国案の実現には技術的な問題が多い。途上国など多くの加盟国は、現行制度維持を支持している。
第5委員会に出席した中国の張義山国連次席大使は、「このような考えを受け入れる国はないだろう。まったく成立の見込みがない」と記者団に述べた。
国連分担金については、日本も安保理常任理事国の分担率に「3%以上か5%以上」の下限を設けるとの見直し案を提出している。この日の委員会では、現在の分担率がこの下限を下回っている常任理事国の中国とロシアが強く反発。中国代表は「安保理の議席は金で買う物ではない」と強く非難したという。
今年は3年に1度の分担率の算出方法の見直しを行う年にあたり、交渉は年末まで続けられる見通し。
--2006年03月14日11時51分(朝日新聞)
(参考記事2)
[国連分担率「常任理事国に下限を」 中ロ意識し日本提案]
外務省は10日、国連の分担金比率の見直しについて、安保理常任理事国に対し、新たに「3%以上か5%以上」との下限を設定する案をまとめた。国連で9日(日本時間10日)、分担金比率を協議するため開かれた国連総会第5委員会に提出した。常任理事国の中で分担率がこの下限より低い中国とロシアに負担増を求める内容になっている。日本が具体的な見直し案を示すのは初めて。
国連の分担金比率は国民総所得(GNI)などに応じて決まる。安保理常任理事国5カ国の分担率は現在、米国22.0%、英国6.1%、フランス6.0%、中国2.1%、ロシア1.1%。
日本の分担率は米国に次いで高い19.5%。日本は、常任理事国でないにもかかわらず、米以外の常任理事国4カ国の計15.3%より分担率が高いとして、負担軽減を求める姿勢を示していた。
日本側は「常任理事国の地位と責任が考慮されるべきだ」としている。
分担率は3年ごとに見直され、07年からの新たな率は年内にも決まる。今後の協議で中ロ両国が日本案に反発するのは確実だ。
--2006年03月10日14時28分(朝日新聞)
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まず、日本の提案は、安保理常任理事国に対し、新たに「3%以上か5%以上」との下限を設定する案である。現行では、国連の分担金比率は基本的に国民総所得(GNI)に応じて決定される。この算定方法に基づき、安保理常任理事国5カ国の分担率は現在、米国22.0%、英国6.1%、フランス6.0%、中国2.1%、ロシア1.1%となっている。 日本の分担率は米国に次いで高い19.5%であり、これは、米国を除く常任理事国4カ国の計15.3%より高いということは再三指摘されている通りである。保有する権限に従って、常任理事国は一定の割合以上の負担をすべきだというのは、機能面から考えて理にかなっている。一言言うべきは、それ以前に、国連憲章に明記されている我が国に対する旧敵国条項を削除させることである。まかり間違っても、総会の決議により事実上空文化しているなどということで満足すべきではない。「敵国」の分担金となれば、今もって賠償金を払い続けているという意味合いを読み取ることもあながち論理の飛躍ではない。国民の税金をそんなものに使うのは筋が通らない。
米国の提案は、国民総所得ではなくて購買力平価に基づいて分担金の割合を決めろというものである。財やサービスの取引が自由に行える市場では同じ商品の価格は1つに決まる「一物一価の法則」が成り立つのだが、そのときに国内外において、同一商品の価格は同一価格で取引され、2国間の為替相場は2国間の同一商品を同一価格にするように均衡する。この均衡為替相場が購買力平価である。ややこしい経済学的定義はともかくとして、直感的にもっと分かりやすく言えば「ある通貨でどれだけのものを買うことができるか」を表す指標である。国連加盟国のうちデータがある国の03年のGNIを購買力平価で計算すると、その比率は米国が20.0%、日本が7.2%、中国の場合、12.7%になるという。ここで注目すべきなのは人民元の為替レートが現在、実勢とかけ離れて安くなっている(すなわち購買力平価が成り立っていない)点である。米国が購買力平価を持ち出してきた時点でピンと来た。国連分担金負担率の見直しに名を借りて、過小評価された人民元のレートに対して改めて切り上げ圧力をかけるというメッセージを読み取るべきなのである。米国のしたたかさには舌を巻くほかない。
もっとも、購買力平価を用いて分担金の負担割合を決定するというアイディア自体きわめて理にかなっている。購買力平価のデータがない国が約30カ国もあるなどの技術的な問題があるにせよ。
(参考記事1)
[米国、国連分担率で中国「狙い撃ち」の提案 中国は反発]
米国は13日、現在同国と日本が全体の4割以上を負担している国連の分担金比率について、見直し案を国連総会第5委員会に提出した。各国の通貨を換算する際に、実際にどれだけの物が買えるかという購買力にもとづいて計算するとの内容。試算では、現在約2割を負担する日本と、約2%の負担にとどまっている中国が逆転するともされ、「中国ねらい撃ちの提案だ」との声が出ている。
国連の分担金は現在、ドルに換算した加盟国の国民総所得(GNI)などによって分担比率が定められており、米国が22.0%、日本が19.5%、中国は2.1%となっている。
米国が提案で導入すべきだとしたのは「購買力平価」で、通貨の人民元の為替レートが現在、実勢とかけ離れて安くなっている中国には不利になる。世界銀行などの試算によると、加盟国のうちデータがある国の03年のGNIを購買力平価で計算すると、その比率は米国が20.0%、日本が7.2%、中国の場合、12.7%になるという。
ただ、現実には、国連加盟191カ国のうち購買力平価のデータがない国が約30カ国もあるなど、米国案の実現には技術的な問題が多い。途上国など多くの加盟国は、現行制度維持を支持している。
第5委員会に出席した中国の張義山国連次席大使は、「このような考えを受け入れる国はないだろう。まったく成立の見込みがない」と記者団に述べた。
国連分担金については、日本も安保理常任理事国の分担率に「3%以上か5%以上」の下限を設けるとの見直し案を提出している。この日の委員会では、現在の分担率がこの下限を下回っている常任理事国の中国とロシアが強く反発。中国代表は「安保理の議席は金で買う物ではない」と強く非難したという。
今年は3年に1度の分担率の算出方法の見直しを行う年にあたり、交渉は年末まで続けられる見通し。
--2006年03月14日11時51分(朝日新聞)
(参考記事2)
[国連分担率「常任理事国に下限を」 中ロ意識し日本提案]
外務省は10日、国連の分担金比率の見直しについて、安保理常任理事国に対し、新たに「3%以上か5%以上」との下限を設定する案をまとめた。国連で9日(日本時間10日)、分担金比率を協議するため開かれた国連総会第5委員会に提出した。常任理事国の中で分担率がこの下限より低い中国とロシアに負担増を求める内容になっている。日本が具体的な見直し案を示すのは初めて。
国連の分担金比率は国民総所得(GNI)などに応じて決まる。安保理常任理事国5カ国の分担率は現在、米国22.0%、英国6.1%、フランス6.0%、中国2.1%、ロシア1.1%。
日本の分担率は米国に次いで高い19.5%。日本は、常任理事国でないにもかかわらず、米以外の常任理事国4カ国の計15.3%より分担率が高いとして、負担軽減を求める姿勢を示していた。
日本側は「常任理事国の地位と責任が考慮されるべきだ」としている。
分担率は3年ごとに見直され、07年からの新たな率は年内にも決まる。今後の協議で中ロ両国が日本案に反発するのは確実だ。
--2006年03月10日14時28分(朝日新聞)
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確かにそれもPPPの指標には違いない。「購買力平価のデータがない国が約30カ国」なんて言われてますが、そんなに技術的に困難とも思われないんですがねぇ。
>国連分担金もそうですが、個人的には国連自体ふざけた組織だと思っておりますので、日米英豪印加辺りでせ~の、一抜けた!とやりたいものです。
あ、言っちゃった…。国連をやめるかどうかはひとまず措くとして、まずは『環太平洋民主国家連盟』のような組織は必要ですね。
なるほどこっちからも絡み手という訳ですね。実際4月の米中首脳会談ではここら辺で具体的成果出さないとメリケンもやばいですものね。(汗)
めんどくさかったらビッグマックレシオで決めてもいいですが。(爆)
国連分担金もそうですが、個人的には国連自体ふざけた組織だと思っておりますので、日米英豪印加辺りでせ~の、一抜けた!とやりたいものです。
分担金見直し案ですが、日米両案とも実際は通る見込みはほとんどないものの、主張すべきは主張するというのは当然のことであります。日本こそ購買力平価基準案を推すべきだと思いますよ。P5に下限を設けるという日本案も悪くはないのですが、常任理事国入りが果たせなかった腹いせと露骨に映りますからね。購買力平価基準であれば「負担能力に応じて」という現行の考えのあくまでも調整の位置づけになります。まあ、米国は、あんまり本気で通そうとは考えてないかもしれません。数字を見れば分かるように22%が20%に減るだけですから。ここは中国の通貨政策がどうなるか、とりわけ米中首脳会談が要注目です。
これをナントカするという発言はまだ誰からも聞いてないように思うのですが、勘違いでしょうか?
>購買力平価に基づいて分担金の割合を決めろという
アメリカはうまいこと考えますよね。
中国がどうするか見ものですね。