遺伝屋ブログ

酒とカメラとアウトドアの好きな大学研究者です。遺伝学で飯食ってます(最近ちょっと生化学教えてます)。

漢方を和の最新科学で♪

2011-11-30 21:49:58 | BIONEWS
阪大など、レアプラント「甘草」の薬用成分を改変酵母で生産することに成功(マイナビニュース) - goo ニュース
大阪大学、理化学研究所、横浜市立大学、東京工業大学、常磐植物化学研究所、千葉大学で構成される研究グループの業績と紹介されていますが、記事中で実名が紹介された先生は大阪大学工学部の村中先生。彼が中心になされたプロジェクトだったんですかね。実は僕の出身学部ですが、村中先生を存じ上げておりません。申し訳ない。
さて、要点をまとめると、漢方薬として有名な甘草の有効成分を酵母で作ったってことです。昔から微生物を使って有用な成分を生産する試みはなされてきて、成果も出ているのですが、出所の違ういくつかの代謝酵素を組み合わせて目的の成分を作らせたところがすごいんだな。しかも、その代謝酵素をウラル甘草の根っこで作ったcDNAライブラリーから新たに特定し、別のマメ科植物ミヤコグサから単離していたβ-アミリン合成酵素遺伝子と組み合わせ、これらの遺伝子を酵母に導入して発現させて微量ながらも目的のグリチルレチン酸を生産したことを確認したそうな。

どうも中国はレアアース(希土類)に加えて、レアプラントの採取・輸出規制が始めているらしく、漢方薬の有効成分も自前で作る技術の開発に光が当たっています。植物の遺伝子を使って植物の酵素で植物の有効成分を作らせた酵母なら、「組み替えDNA」を施されたとはいえ、精製せずにそのまま喰ってもええんではないかなぁ・・・あかん? 出芽酵母ならベクターDNAが残らないように改変することも出来るよ。

とにかくすごく長い記事でした。しかも専門性が高すぎ。素人にも読ませようという努力も垣間見えますが、いきなりバキュロウィルスによる遺伝子産物生産系がでてきたんじゃ、普通の人にはなかなかついて来れんでしょう。しかし、素人相手の文章を書くと専門家にはさっぱりわけ分からんという本末転倒な状況になるので、書き手は『正しさ』と『詳しさ』を犠牲にすることを避けたのでしょうな。この春の原発事故関連のニュースもあえて素人を無視した専門性の高い情報発信が多く出されていたら、ずいぶん今の状況は変わっていたと思いますよ。混乱させまいという余計な配慮が状況のさらなる混乱を招いた一面があります。全てがそうじゃないですけど・・・。

本日のお酒:YEBISU 琥珀エビス + 宮崎そば焼酎 雲海
コメント
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