遺伝屋ブログ

酒とカメラとアウトドアの好きな大学研究者です。遺伝学で飯食ってます(最近ちょっと生化学教えてます)。

ゲノムレベルで癌研究

2011-04-19 21:40:25 | BIONEWS
肝臓がんの全ゲノムを世界初解析-がんセンターなどが共同研究(医療介護CBニュース) - goo ニュース
70歳のC型肝炎ウイルスに感染した男性のゲノム配列を決定した。ゲノムというのはその生物の細胞を構成するに足るワンセットの染色体DNAをいいます。もちろん、癌細胞とはいえ、元は正常なヒト細胞だったはずなんで、そんな違わないはずなんですが、どこが違うのか分かれば癌の仕組みも分かろうというもんなのです。個々のゲノム異常とがん発症との関連は不明ですけど、こういうのは基礎データの積み重ねが効いてくるはずです。今までの科学分野では力づくの仕事といっても献身的な個人のがんばりで解決されてきたのですが、ゲノムプロジェクトレベルになると、もはや『サイエンス・ゼネコン』と呼ぶべき大組織による大規模解析が必要です。データもハードディスクにどかんと入れてなんとか運べるレベル。「解析結果はメールに添付してください」なんていうと恥かきます。

がん細胞:「老化」させ抑制 広島大教授ら物質突き止め

広島大学のグループが、癌細胞に老化を促進させると増殖や転移を抑え得ることを報告しました。癌細胞に老化を導入させるには「マイクロDNA」を使います。タンパク質をコードしていないRNAがある個別の遺伝子の発現を抑制していまして、それをマイクロDNAと呼んで遺伝子の発現の調節に関わっている因子として考えています。これは細胞の増殖や分化などさまざまな生物現象の調節に関係していると考えられています。このうち、癌細胞で特異的に減少しているマイクロRNA"mir22"に注目して、乳がんと子宮頸がんの癌細胞にmir22を加えてみると、細胞の老化が進み、増殖が抑えられることが確認されました。マウスを使った実験でも乳がんの転移が抑制されました。
癌というのは、細胞が増殖を止められなくなる病気なんだけど、細胞が増殖を穏やかに止める仕組みが『老化』なんです。「老化の研究をしています」というと、素人さんは「若返りの研究ですね」と勘違いされるのですが、あくまでも『正く老化』させるのが目標なんです。制御不能の若返りこそが、『癌』なのですよ。

放射性物質捕まえる粉開発 汚染水を浄化も 金沢大教授らが開発

これはバイオ関係の仕事じゃないですが、うちの大学の成果なのでご紹介♪
猫砂に使うゼオライトのような吸着剤を放射活性を持つ水の浄化に使う技術は既に福島の原発で試されていますが、これを機にどんどんよりよい吸着剤の開発が望まれます。この研究はその第一弾と言っていいのではないでしょうか。もうほとんどのセシウムを吸着できるようです。ヨウ素もストロンチウムも吸着できるというからすんばらすぃです。なによりもタイムリーにこういうのを出すところが素敵♪ どんな技術も欲されているタイミングで出されないと意味がないのですな。ここはポイントです。いやぁ、うちの大学はしょぼい地方大学のようでありながら、なかなか頑張ってます。

本日のお酒:SAPPORO オフの贅沢 + VINA MAIPO CABERNET SAUVIGNON RESERVA + NIKKA シングルモルト 宮城峡
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする