春からこう変わってます:年金 離婚時の年金分割 2007年5月1日 毎日
http://www.mainichi-msn.co.jp/kurashi/katei/news/20070501ddm013100036000c.html
◇「必ず半分」は早合点 割合は話し合い、裁判で--短い結婚期間、共働きは期待薄
大きな関心を集める離婚時の厚生年金の分割制度。4月1日以降に離婚した場合、専業主婦なら夫の厚生年金(報酬比例部分)の最高2分の1まで受け取れるようになった。しかし、「必ず半分がもらえる」と考えるのは早合点だ。
たとえ夫婦でも、夫の年金は夫、妻の年金は妻のもの。その大原則にメスを入れ、離婚時に夫の年金の一部を分割し、妻が自分名義で直接受け取れるようにしたのが今回の年金分割だ。
分割は必ずしも夫から妻への一方通行ではなく、報酬総額(月給など)の多い方から少ない方に分けるので、妻から夫へもありうる。
ただ、分割対象は厚生年金の報酬比例部分のみ。国民年金と共通の基礎年金部分は対象外。しかも、厚生年金の加入期間のうち、2人が結婚していた期間に限られる。
妻がずっと専業主婦(第3号被保険者)なら、夫の厚生年金だけが分割対象になる。共働きで妻にも厚生年金に加入していた期間があれば、2人の年金を合算したものが分ける対象になる。
分割上限は夫婦2人の合計額の50%。夫に月10万円の厚生年金(報酬比例)があり、妻は基礎年金以外はない場合、妻が分割を受けられるのは最高でも5万円だ。
年金を分割するか、またその割合は、夫婦で話し合って決める。それが難しければ、家庭裁判所の裁判手続きを利用する。話し合いや裁判の結果次第で割合が50%を下回る可能性がある。
なお、来年4月からは、専業主婦など第3号被保険者だけを対象に離婚時に自動的に2分の1に分割される制度が始まる。対象期間は来年4月以降から離婚時までに限られる。
妻が専業主婦と、共働きだった場合に分けて、シミュレーションした。(結婚期間中の賃金の変化は考慮していない)
◇ケースA 専業主婦
結婚30年。夫(62)は会社に40年勤め、厚生年金(報酬比例)は月12万円。妻(62)は30年間専業主婦。今、離婚すると、分割される額は?
→夫の40年の厚生年金加入期間のうち、結婚していたのは30年なので、12万円の4分の3で9万円が分割対象。分割割合が上限の50%なら、妻が受け取れるのは4万5000円となる。
◇ケースB 共働き
結婚30年。夫婦(ともに55歳)はそれぞれ60歳まで40年間働く予定。夫は月12万円、妻は月8万円の厚生年金(報酬比例)が見込まれる。今、離婚すると、老後の妻の年金は?
→夫婦の厚生年金は合計20万円。年金加入期間のうち結婚期間は4分の3なので、15万円が分割対象。分割割合を50%とすると、妻の分は7万5000円。
分割後に妻が受け取る厚生年金は、元の8万円から、分割対象分(8万円の4分の3で6万円)を引いた残りの2万円に、7万5000円を足し9万5000円となる。分割により、1万5000円増える。
◇社保事務所で試算も
社会保険労務士法人「アイアール」(大阪市)の社労士、樽谷かず子さんと田和瀬友恵さんに注意点などを聞いた。
50歳以上の人なら、年金分割した場合と分割しなかった場合の年金見込み額を社会保険事務所で試算してもらえます。50歳より前でも、分割の対象期間などの基礎情報が入手できます。その手続きは離婚前でもできます。夫婦一緒でも、どちらか一方でも大丈夫です。
厚生年金(報酬比例部分)は普通10万~13万円程度。結婚期間が長い場合でも分割で受けられるのは5万円ほど。結婚期間が短かったり、夫婦の給与の差が小さいと、分割の効果はあまり期待できません。
話し合いや裁判で分割割合を決めたら、証明する公正証書の謄本などを持参し、社会保険事務所で年金分割を請求することになります。ただし、手続きは離婚後2年以内が期限です。
元の配偶者が再婚したり死亡しても、分割後の年金に影響は出ません。
以前、年金分割の試算を受ける人が増えているという記事に対して、注意点を書いた記事を投稿したことがあるのですが、この年金分割について詳しく解説した記事があったので紹介します。
それにしても常々不思議に思うのは、加給年金がなくなることについて触れている記事が少ないこと。
夫が長年サラリーマンをしていて、妻が長年専業主婦をしている場合には、夫の年金の定額部分が支給される時期から同時に加給年金が支給されるケースが多いかと思いますが、この加給年金額が年額227900円、加えて受給権者の生年月日が昭和9年4月2日以降の方に対しては特別加算額が加算され、昭和18年4月2日以降に生まれた方に対しての支給額は年額168100円。(いずれも平成19年度価格) つまりこの両者を合わせると定額部分支給から妻が受給権を得るまでの期間限定とはいえ、年額39.6万円、月額に直しても3.3万円ものお金がいわゆる妻手当として支給されています。
当然ながら離婚すれば、この妻手当が打ち切られることになりますが、この金額の大きさをどれだけの方が認識しているのかとなると、案外心もとないものがありますし、また 仮にこの元夫婦が生活が苦しいのでやっぱりヨリを戻そうと、再び同じ相手と結婚してもこの加給年金と特別加算額は復活しないことは、ほとんどと言っても良いほど知られていないようです。
勿論離婚はお金だけでどうこうというものではありませんが、離婚後の生活をどう安定させるかは非常に重要な問題。この離婚時の年金分割も、知識として知っておくことは良いと思うのですが、実際に利用するかどうかは離婚するかどうかも含めて慎重に判断された方が良い(*注)のでは…というのが私の個人的な意見です。
*注 勿論度重なる浮気をされて、夫婦としての信頼関係がどうしても維持できないという場合や、DVが絡むようなケースでは夫の側に同情の余地はありませんし、離婚そのものを否定しているわけではありません。念のため。
http://www.mainichi-msn.co.jp/kurashi/katei/news/20070501ddm013100036000c.html
◇「必ず半分」は早合点 割合は話し合い、裁判で--短い結婚期間、共働きは期待薄
大きな関心を集める離婚時の厚生年金の分割制度。4月1日以降に離婚した場合、専業主婦なら夫の厚生年金(報酬比例部分)の最高2分の1まで受け取れるようになった。しかし、「必ず半分がもらえる」と考えるのは早合点だ。
たとえ夫婦でも、夫の年金は夫、妻の年金は妻のもの。その大原則にメスを入れ、離婚時に夫の年金の一部を分割し、妻が自分名義で直接受け取れるようにしたのが今回の年金分割だ。
分割は必ずしも夫から妻への一方通行ではなく、報酬総額(月給など)の多い方から少ない方に分けるので、妻から夫へもありうる。
ただ、分割対象は厚生年金の報酬比例部分のみ。国民年金と共通の基礎年金部分は対象外。しかも、厚生年金の加入期間のうち、2人が結婚していた期間に限られる。
妻がずっと専業主婦(第3号被保険者)なら、夫の厚生年金だけが分割対象になる。共働きで妻にも厚生年金に加入していた期間があれば、2人の年金を合算したものが分ける対象になる。
分割上限は夫婦2人の合計額の50%。夫に月10万円の厚生年金(報酬比例)があり、妻は基礎年金以外はない場合、妻が分割を受けられるのは最高でも5万円だ。
年金を分割するか、またその割合は、夫婦で話し合って決める。それが難しければ、家庭裁判所の裁判手続きを利用する。話し合いや裁判の結果次第で割合が50%を下回る可能性がある。
なお、来年4月からは、専業主婦など第3号被保険者だけを対象に離婚時に自動的に2分の1に分割される制度が始まる。対象期間は来年4月以降から離婚時までに限られる。
妻が専業主婦と、共働きだった場合に分けて、シミュレーションした。(結婚期間中の賃金の変化は考慮していない)
◇ケースA 専業主婦
結婚30年。夫(62)は会社に40年勤め、厚生年金(報酬比例)は月12万円。妻(62)は30年間専業主婦。今、離婚すると、分割される額は?
→夫の40年の厚生年金加入期間のうち、結婚していたのは30年なので、12万円の4分の3で9万円が分割対象。分割割合が上限の50%なら、妻が受け取れるのは4万5000円となる。
◇ケースB 共働き
結婚30年。夫婦(ともに55歳)はそれぞれ60歳まで40年間働く予定。夫は月12万円、妻は月8万円の厚生年金(報酬比例)が見込まれる。今、離婚すると、老後の妻の年金は?
→夫婦の厚生年金は合計20万円。年金加入期間のうち結婚期間は4分の3なので、15万円が分割対象。分割割合を50%とすると、妻の分は7万5000円。
分割後に妻が受け取る厚生年金は、元の8万円から、分割対象分(8万円の4分の3で6万円)を引いた残りの2万円に、7万5000円を足し9万5000円となる。分割により、1万5000円増える。
◇社保事務所で試算も
社会保険労務士法人「アイアール」(大阪市)の社労士、樽谷かず子さんと田和瀬友恵さんに注意点などを聞いた。
50歳以上の人なら、年金分割した場合と分割しなかった場合の年金見込み額を社会保険事務所で試算してもらえます。50歳より前でも、分割の対象期間などの基礎情報が入手できます。その手続きは離婚前でもできます。夫婦一緒でも、どちらか一方でも大丈夫です。
厚生年金(報酬比例部分)は普通10万~13万円程度。結婚期間が長い場合でも分割で受けられるのは5万円ほど。結婚期間が短かったり、夫婦の給与の差が小さいと、分割の効果はあまり期待できません。
話し合いや裁判で分割割合を決めたら、証明する公正証書の謄本などを持参し、社会保険事務所で年金分割を請求することになります。ただし、手続きは離婚後2年以内が期限です。
元の配偶者が再婚したり死亡しても、分割後の年金に影響は出ません。
以前、年金分割の試算を受ける人が増えているという記事に対して、注意点を書いた記事を投稿したことがあるのですが、この年金分割について詳しく解説した記事があったので紹介します。
それにしても常々不思議に思うのは、加給年金がなくなることについて触れている記事が少ないこと。
夫が長年サラリーマンをしていて、妻が長年専業主婦をしている場合には、夫の年金の定額部分が支給される時期から同時に加給年金が支給されるケースが多いかと思いますが、この加給年金額が年額227900円、加えて受給権者の生年月日が昭和9年4月2日以降の方に対しては特別加算額が加算され、昭和18年4月2日以降に生まれた方に対しての支給額は年額168100円。(いずれも平成19年度価格) つまりこの両者を合わせると定額部分支給から妻が受給権を得るまでの期間限定とはいえ、年額39.6万円、月額に直しても3.3万円ものお金がいわゆる妻手当として支給されています。
当然ながら離婚すれば、この妻手当が打ち切られることになりますが、この金額の大きさをどれだけの方が認識しているのかとなると、案外心もとないものがありますし、また 仮にこの元夫婦が生活が苦しいのでやっぱりヨリを戻そうと、再び同じ相手と結婚してもこの加給年金と特別加算額は復活しないことは、ほとんどと言っても良いほど知られていないようです。
勿論離婚はお金だけでどうこうというものではありませんが、離婚後の生活をどう安定させるかは非常に重要な問題。この離婚時の年金分割も、知識として知っておくことは良いと思うのですが、実際に利用するかどうかは離婚するかどうかも含めて慎重に判断された方が良い(*注)のでは…というのが私の個人的な意見です。
*注 勿論度重なる浮気をされて、夫婦としての信頼関係がどうしても維持できないという場合や、DVが絡むようなケースでは夫の側に同情の余地はありませんし、離婚そのものを否定しているわけではありません。念のため。