このところ、録画していながらもなかなかじっくり観ることの出来なかった日曜日の各種討論番組ですが、今日は夜に時間が取れたので、久しぶりにじっくりと耳を傾けることができました。
今日は、NHKの「日曜討論」もテレビ朝日の「サンデー・フロントライン」も、民主党代表選挙に関する話題を中心に据えて、菅さんと小沢さん、それぞれのサポーター陣営から2名ずつの代表者をスタジオに呼んで、司会者やコメンテーターと主な政策ポイントについて議論を交わす、という形式を取っていました。
なかなか参考になる議論がなされていて、時間があればいくつかポイントをピックアップしてこの場でコメントをしたいところなのですが、それをやるとまた朝まで時間がかかりそうなので、ここでは一点のみ取り上げておきたいと思います。
それは、デフレを解消して経済成長を実現するために、何をしなければならないのか、という点です。
この問題についてはどちらの番組でも取り上げられていたのですが、私が特に興味を持ったのが、サンデー・フロントラインで慶應大学の岸博幸教授が指摘していた点です。岸さんは、特に菅さんが主張している「一に雇用、二に雇用、三に雇用」を取り上げて、「雇用を増やすためには、景気回復が先でしょう。雇用は経済成長の結果として生み出される派生需要なのです」という持論を訴えておられました。岸さんのお考えは、この記事にも書かれていますので、興味のある方はぜひ:
・岸博幸のクリエイティブ国富論 第105回「菅氏と小沢氏、どちらが首相にふさわしいか? 経済政策の観点から民主党代表選を考える」(2010年9月10日)
岸さんのご意見、私の考えとピッタリ合う部分も多いのです。例えば、今の最優先課題は「デフレを止めること」だという点は全くその通りだと思っています。これは、25兆円前後に及んでいる需給ギャップ(現在の供給能力に対して、需要が下回っていること)を埋めなければならない(それを埋めないと経済成長はない!)ということで、そのための政府の対策が一刻も早く必要だ、ということなのです。この点については、今まで私のブログをフォローしてきていただいた皆さんは、良くご理解をいただいていることと思います。
問題は、じゃあ需要を拡大するために何をしなければならないのか、という点です。
今回、政府は、景気の下振れリスクに対応して景気の回復を確実なものにする目的で、約9,200億円の予備費を活用した「事業規模約9.8兆円の緊急経済対策」を打ちました。その対策の中心に「雇用」を据えたわけですが、これぞまさに、雇用拡充を通じた国内需要の拡大によって需給ギャップを縮小し、景気回復を実現することを目指しているわけです。まあ、対策の中身、その実際の効果については私もまだ疑問を持っていて、今週、担当者から突っ込んだブリーフィングを受けて確認したいと思っていますが、この方向性は間違っていないと思います。
岸さんは、これを「順序が違う」と言って批判をされています。「雇用は経済成長の結果」という考えから行くと、そういうご意見になるのでしょうね。また、「今の政府の対応(雇用規制の強化、厳しい環境基準、高い法人税の放置、円高の放置)は、企業に対して『海外に出て行け』と言っているに等しい」というのも、まさに「企業の経済活動の拡大があってこそ雇用が守られる、だからまずは企業の経済活動に対する規制を取っ払って、もっと自由にさせなさい」という考えに基づくものなのでしょう。どこかで聞いた話、ですが。
復習になりますが、需要というのは主に「個人消費」「企業の設備投資」「政府の公共投資」によって構成されています。そのうち最大なのはやはり個人消費(GDPの約6割)で、ここを伸ばしていかなければ需要の総量は伸びていかないわけです。そして、ここが持続的に伸びていかないことには、企業の設備投資も増えてこないわけですね。だってそうでしょう? 需給ギャップが25兆円あるということは、それだけ今、企業の生産能力が過剰になっているわけで、それを上回る勢いの需要の伸びが見られなければ、企業は本気で設備投資をして来ないわけですから。つまり大事なのは、個人消費の持続的な伸びが企業の設備投資を引き起こして、それがまた個人消費の伸びにつながるという好循環を確立すること。そのために、「政府の公共投資」を使うこと、なのです(この点、岸さんが10兆円規模の財政出動を、と仰るのは正しいと思います)。
それではなぜ、個人消費がなかなか伸びてこないのでしょう?
皆さんも、すぐに二つの理由が思い浮かぶことと思います。一つは、「そもそも使うお金がないから」という理由ですし、もう一つは、「お金はあるんだけど、将来が不安で安心して使えないから」という理由ですね。この二つの問題に対処すること、それが政治の最優先課題になるわけです。ただ、個人消費が伸びない理由は実はもう一つあります。それは、「この先、モノやサービスの値段がもっと下がる(つまりお金の価値が上がる)から、今、お金を使うべきではない」という消費者・投資家マインドです。これがまさにデフレを長期化しているわけで、このマインドを打ち消すことも、政策課題の一つであることは言うまでもありません。
これを考えると、雇用を緊急経済対策の中心に据えることの正当性がお分かりいただけるのではないかと思います。今、「企業の設備投資を伸ばす」「企業が経済活動を自由にする」こと(だけ)をやってしまったら、かえって需給ギャップを悪化させてしまう、つまりデフレをさらに深化させてしまうことにつながってしまうと思うわけです。このことを忘れてしまったのが、まさに小泉・竹中改革であり、新自由主義改革ではなかったか、そのことを私たちはもう一度、思い起こす必要があると思います。
だからこそ、政府の経済対策が有効に「持続的かつ力強い需要増」に結びつくことが重要なわけですが、この点についてはまた別の機会に議論して見たいと思います。
今日は、NHKの「日曜討論」もテレビ朝日の「サンデー・フロントライン」も、民主党代表選挙に関する話題を中心に据えて、菅さんと小沢さん、それぞれのサポーター陣営から2名ずつの代表者をスタジオに呼んで、司会者やコメンテーターと主な政策ポイントについて議論を交わす、という形式を取っていました。
なかなか参考になる議論がなされていて、時間があればいくつかポイントをピックアップしてこの場でコメントをしたいところなのですが、それをやるとまた朝まで時間がかかりそうなので、ここでは一点のみ取り上げておきたいと思います。
それは、デフレを解消して経済成長を実現するために、何をしなければならないのか、という点です。
この問題についてはどちらの番組でも取り上げられていたのですが、私が特に興味を持ったのが、サンデー・フロントラインで慶應大学の岸博幸教授が指摘していた点です。岸さんは、特に菅さんが主張している「一に雇用、二に雇用、三に雇用」を取り上げて、「雇用を増やすためには、景気回復が先でしょう。雇用は経済成長の結果として生み出される派生需要なのです」という持論を訴えておられました。岸さんのお考えは、この記事にも書かれていますので、興味のある方はぜひ:
・岸博幸のクリエイティブ国富論 第105回「菅氏と小沢氏、どちらが首相にふさわしいか? 経済政策の観点から民主党代表選を考える」(2010年9月10日)
岸さんのご意見、私の考えとピッタリ合う部分も多いのです。例えば、今の最優先課題は「デフレを止めること」だという点は全くその通りだと思っています。これは、25兆円前後に及んでいる需給ギャップ(現在の供給能力に対して、需要が下回っていること)を埋めなければならない(それを埋めないと経済成長はない!)ということで、そのための政府の対策が一刻も早く必要だ、ということなのです。この点については、今まで私のブログをフォローしてきていただいた皆さんは、良くご理解をいただいていることと思います。
問題は、じゃあ需要を拡大するために何をしなければならないのか、という点です。
今回、政府は、景気の下振れリスクに対応して景気の回復を確実なものにする目的で、約9,200億円の予備費を活用した「事業規模約9.8兆円の緊急経済対策」を打ちました。その対策の中心に「雇用」を据えたわけですが、これぞまさに、雇用拡充を通じた国内需要の拡大によって需給ギャップを縮小し、景気回復を実現することを目指しているわけです。まあ、対策の中身、その実際の効果については私もまだ疑問を持っていて、今週、担当者から突っ込んだブリーフィングを受けて確認したいと思っていますが、この方向性は間違っていないと思います。
岸さんは、これを「順序が違う」と言って批判をされています。「雇用は経済成長の結果」という考えから行くと、そういうご意見になるのでしょうね。また、「今の政府の対応(雇用規制の強化、厳しい環境基準、高い法人税の放置、円高の放置)は、企業に対して『海外に出て行け』と言っているに等しい」というのも、まさに「企業の経済活動の拡大があってこそ雇用が守られる、だからまずは企業の経済活動に対する規制を取っ払って、もっと自由にさせなさい」という考えに基づくものなのでしょう。どこかで聞いた話、ですが。
復習になりますが、需要というのは主に「個人消費」「企業の設備投資」「政府の公共投資」によって構成されています。そのうち最大なのはやはり個人消費(GDPの約6割)で、ここを伸ばしていかなければ需要の総量は伸びていかないわけです。そして、ここが持続的に伸びていかないことには、企業の設備投資も増えてこないわけですね。だってそうでしょう? 需給ギャップが25兆円あるということは、それだけ今、企業の生産能力が過剰になっているわけで、それを上回る勢いの需要の伸びが見られなければ、企業は本気で設備投資をして来ないわけですから。つまり大事なのは、個人消費の持続的な伸びが企業の設備投資を引き起こして、それがまた個人消費の伸びにつながるという好循環を確立すること。そのために、「政府の公共投資」を使うこと、なのです(この点、岸さんが10兆円規模の財政出動を、と仰るのは正しいと思います)。
それではなぜ、個人消費がなかなか伸びてこないのでしょう?
皆さんも、すぐに二つの理由が思い浮かぶことと思います。一つは、「そもそも使うお金がないから」という理由ですし、もう一つは、「お金はあるんだけど、将来が不安で安心して使えないから」という理由ですね。この二つの問題に対処すること、それが政治の最優先課題になるわけです。ただ、個人消費が伸びない理由は実はもう一つあります。それは、「この先、モノやサービスの値段がもっと下がる(つまりお金の価値が上がる)から、今、お金を使うべきではない」という消費者・投資家マインドです。これがまさにデフレを長期化しているわけで、このマインドを打ち消すことも、政策課題の一つであることは言うまでもありません。
これを考えると、雇用を緊急経済対策の中心に据えることの正当性がお分かりいただけるのではないかと思います。今、「企業の設備投資を伸ばす」「企業が経済活動を自由にする」こと(だけ)をやってしまったら、かえって需給ギャップを悪化させてしまう、つまりデフレをさらに深化させてしまうことにつながってしまうと思うわけです。このことを忘れてしまったのが、まさに小泉・竹中改革であり、新自由主義改革ではなかったか、そのことを私たちはもう一度、思い起こす必要があると思います。
だからこそ、政府の経済対策が有効に「持続的かつ力強い需要増」に結びつくことが重要なわけですが、この点についてはまた別の機会に議論して見たいと思います。