日本の弱腰外交は近隣諸国の大迷惑
世界から尊敬されるためには、批判を恐れず核武装すべき
2010.09.24(Fri) JBpress
池東旭(ち・とんうく)氏(右)
ジャーナリスト 韓国慶尚北道大邱生まれ。韓国日報勤務を経て、1981年『週刊韓日ビジネス』を創刊。経済、国際問題など朝鮮半島の諸問題に関する論評を展開する。
日本の民主党政権は、韓国では自国に宥和的だと思われています。今回の菅代表再選についても歓迎ムードですが、個人的にはこういう弱体政権が続いてもらっては困る。日本が弱腰だと韓国まで迷惑するんです。
最近、尖閣諸島付近で中国漁船が海上保安庁の巡視船に衝突した事件にしてもそう。日本はもっと毅然としないとダメですよ。
そもそも駐在大使を4回も5回も、それも夜中に呼び出すなんて失礼千万。日本も同じことをやり返せばいいのに、全然やらないでしょ。だからますますなめられるんです。
今、東アジアで中国がどれだけいばっているか?
先日は黄海で合同演習をしようとした米海軍と韓国海軍に、ここは我々の領海だからと抗議しました。結局、演習が日本海で行われたのはそのせいです。
韓国の領海にはしょっちゅう中国漁船が入ってきて漁をしていますが、中国に文句を言われるからと取り締まれずにいます。尖閣諸島問題で日本が譲歩したら、韓国への圧力もさらに強まるしょう。
日本人は何かというとすぐに謝り、金を出します。日本人同士ならそれで丸く収まっても、国際社会では謝った方が負けです。
戦後、米国に刷り込まれた自虐史観から早く自由にならないといけません。私は歴史に善も悪もないと思います。今の物差しで見れば悪でも、当時としては当然だったということがある。昔のことを、今になってどうこう言うのはおかしいんです。
■日本が目指すべきは武装中立。核も保有した方がいい
日本は武装中立を目指すべきです。軍隊なのに軍隊じゃないというヘンな存在=自衛隊を放置しておくのではなく、しっかりした自国の軍備を持つ。核兵器も保有すべきだと思います。それでこそ国際社会で言いたいことを言えるんです。
普天間問題にしたって、米国に自分の国は自分で守るから出てってくれと一言言えば済む話でしょ。それが言えないのは、米国に軍備を丸投げしてるからです。
自国の防衛力を持たず、核を持たずに、米国と対等の関係を築くなんておこがましいって言うんです。
国土が狭いのに核を持てば、外国から一発打ち込まれたらおしまいだという話がありますが、やられたらやり返す姿勢を見せていれば相手だって二の足を踏みます。
日本の核保有は米国もいやがりますし、韓国も中国も当然反対しますけど、イザ持てば国際社会から尊敬されますよ。政府開発援助(ODA)なんかで金をばらまかなくても、核保有国なのだからとそれなりに遇される。常任理事国にもなれるかもしれません。
そういうことをせずに、きれいごとばっかり言っているからバカにされるんです。私は金正日は大嫌いですが、彼が核保有にこだわる気持ちはとてもよく分かります。
■金にクリーンでなくても仕事のできる政治家を!
日本にも戦前は、命をかけて国のために尽くす政治家がいました。しかし今は見当たりません。世論に戦々恐々とするばかりです。
景気がいつまでも低迷しているのも、世論を気にして思い切ったことができないからじゃないですか。今回の為替介入も、2兆円程度ちびちび出したって効果は一時的だと思いますよ。
朝三暮四という言葉があります。猿に餅を、朝3つあげて暮れに4つあげたら怒り、朝4つ、暮れ3つにしたら喜んだという故事です。
世論なんてそんなものなんですから、あまり気にしなくていい。だれが何を言おうと己を貫くという、信念のある政治家が出てこないものかと思いますね。
日本では能力がある人ほど足を引っ張られますし、金にクリーンであることが必要以上に求められる。このへんも力のある政治家が育たない理由だと思います。
一番大事なのは仕事ができる、能力があるということであって、クリーンかどうかは本来二の次のはず。早い話、女性が夫を選ぶ時だって、多少浮気してもよく稼ぐ男の方がもてるでしょ。
もちろん同じくらい稼ぐなら品行方正の方が良いに決まっていますが、クリーンな人というのは往々にして仕事ができないものです。
先日、ある座談会で、韓国の官僚は賄賂を取るが日本の官僚は取らないという話が出た時、私は反論しました。
日本の役人は一生安泰だけど、韓国では天下りしても政権が変わった途端に首が飛ぶ。だから現職のうちに賄賂を取るのであって、日本も天下りをなくしたらそうなるんじゃないか、と。
政治家の世界も官僚の世界も、クリーンなことばかりじゃありません。それがいいとは言いませんが、どうしたってダーティな部分はあるのです。
■韓国の弱腰の背景には「戦争だけはしたくない」気持ちがある
日本ばかりをやり玉に挙げましたが、弱腰なのは韓国も同じです。北朝鮮に幾度となく攻撃されているのに、歴代政権はやられっぱなし。一度として反撃したことがありません。
背景には韓国の人たちの「戦争だけはしたくない」という気持ちがあります。何しろソウルは、休戦ラインからわずか30キロしか離れていません。ひとたび戦争になれば、せっかく復興して、今や高度成長下にある首都がめちゃくちゃになってしまう。
盧武鉉政権の太陽政策を支えていたのも、そういう事態を防げるのなら多少金を払ってもいいじゃないかという、言うなれば掛け捨て保険のような気分でしょう。
ただ、北朝鮮はそれをちゃんと見越してるんです。少々無理なことを言っても結局は金を出してくるだろう、やり返してはこないだろうと。
だからこそ、こちらとしては口先だけではなく行動で、イザとなれば戦争も辞さないという姿勢を見せないといけません。
ちなみに南北統一を巡る韓国の世論は、少しばかり微妙です。もちろん武力によるのではなく、平和的統一を望む人が大勢を占めますが、現実問題として今はご免被りたいという空気が強い。
東西ドイツが統一した時の経済格差は3対1ほどでしたが、韓国と北朝鮮は10対1ですからね。当時の西ドイツ以上の負担を強いられるのは目に見えています。
先日、大統領が南北統一に備えて統一税を作ろうとしたのに、みんな猛反対したのもそんなムードの表れでしょう。