細越麟太郎 MOVIE DIARY

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●『ハイネケン誘拐の代償』の想定外だった実状。

2015年04月11日 | Weblog

4月8日(水)10-00 六本木<アスミック・エース試写室>

M-038『ハイネケン誘拐の代償』" Kidnapping Mr. Heineken " (2014) Informant Media / Global Film Partners / Heineken Finans LLC

監督・ダニエル・アルフレッドソン 主演・ジム・スタージェス <95分> 配給・アスミック・エース

<ハイネケン>といえば、ビール好きに知らないひとはいない有名ビール銘柄で、そのさっぱりした味わいはビールの一級品。どこのバーにも必ず置いてある有名ブランド。

いまでも世界中のどこのバーにもあるが、そのビールの創始者だったミスター・ハイネケンを誘拐した事件は、1983年にオランダのアムステルダムで実際に起こった。

有名人を誘拐するという事件は、あの飛行家リンドバーグ家の娘を誘拐して迷宮入りした「オリエント急行殺人事件」のような創作ものがあったが、これはほぼ実話の再現だという。

ジムやサム・ワーシントンなど定職を持たない若者グループは、マジに働く気持ちのない連中で、ある日、遊び資金に困って、有名な富豪であるハイネケン老人の誘拐を思い立った。

もちろん、誘拐してからの人質を監禁する場所や、身代金の引き渡しから逃走経路などなど、このテの犯罪映画では必須条件となる課題は、それなりに緻密に計画してからの挙行だった。

たしかに過去の多くのキッドナッピング映画では、どのグループも周到な計画で実行に及ぶわけで、ハンパな思いつきで実行が成功するような単純な犯罪ではない。しかし迷宮もある。

旧知の若者たちは、それら過去の誘拐事件や映画の前例を検討したうえで、完璧な準備のあとに、ハイネケン老人であるアンソニー・ホプキンスを誘拐して監禁し、身代金を要求したのだ。

ここまでは、過去にも多くの映画で描かれて展開であって、別に新しい手口はなく、カレの運転手兼秘書の男とふたりは、準備していた隠れ家の隔離スペースに拉致して、事件は次のステップに移った。

ところが困ったことに、このハイネケン氏は慌てず騒がずに、個人的な要求をして、まるでホテルにでも泊まっているようにマイペースなのだ。これは全く想定外のことで、交渉も停滞するのだった。

映画は事実に忠実だというが、警察側の捜査や交渉は描かずに、もっぱら実行犯グループの動揺ぶりを描いて行く。まるで大学の教授を誘拐してしまった学生グループのように、実態は頓挫してしまった。

という次第で、映画の方も「フランティック」や「身代金」から傑作「アスファルト・ジャングル」のように、犯罪映画的な個性的な面白さはなく、呆気なくお縄となってしまうのだ。

 

■左中間を抜けるヒットと思ってセカンドを狙い封殺。 ★★★☆

●6月13日より、新宿武蔵野館などでロードショー