細越麟太郎 MOVIE DIARY

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●『悪党に粛清を』デンマーク製ウェスターンの必殺銃魂。

2015年04月19日 | Weblog

4月15日(水)10-00 六本木<アスミック・エース試写室>

M-042『悪党に粛清を』" The Salvation " (2014) Zentropa Entertainments 33 / Black Creek Films デンマーク

監督・クリスチャン・レヴリング 主演・マッツ・ミケルセン <93分> 配給・クロックワークス

いまどき珍しくマジな西部劇だが、これがデンマーク製だというところが面白い。あのジョン・フォードの決闘西部劇を、そのまま北欧の感覚で作ると、こうなる。

時代はもちろんアメリカ西部の開拓時代の1864年。デンマークで戦争によって追われたマッツは、命からがらアメリカに渡り、家族との生活を復活すべく土地を買った。

そしてカウボーイとしての地盤をかため、家族の妻と息子を新天地である西部に呼んだのだ。ところが、やっと家族と再会して自分の農地へ駅馬車に乗った途端に不幸が始まる。

乗り合わせた酔っぱらいのカウボーイたちは、美人の妻を強姦して、それに抵抗した息子共々に虐殺されて、マッツも重傷を負ってしまう。最悪の無法なスタートだ。

あとは西部劇のリベンジ・パターンで、その無頼漢たちや、彼の牧場の土地までも悪辣な手段で強奪してしまう、その開拓地の悪徳実力者たちの腐敗ぶりに、さすがの移住者もキレた。

という話は、古典的なウェスターンの常套であって、それ見ろ、だから移住なんてやめとけよ、と同情してしまう。が、それからが、この映画の復讐ボルテージが上がって行くのだ。 

あのクリント・イーストウッドの名作「アウトロー」や、アカデミー受賞の「許されざる者」などと同じパターンになるのだが、やはりデンマーク人の感覚は、もっとアグレシブなのだ。

たしかにセルジオ・レオーネなどのマカロニ・ウェスターンのような容赦ないバイオレンス・シーンにも新鮮味はあるが、イタリアと北欧では、その感覚にユーモアは微塵もないのだ。

おまけに、最近「偽りなき者」でも繊細な演技を見せたマッツは、あのリチャード・ウィドマークも顔負けのシリアスなリベンジを、かなりマジに、執拗に展開していくから、眼ははなせない。

タイトルの「サルベーション」というのは、ある種、宗教的な福音の意味もあるのだろうが、ここでは「眼には眼を」という、遥かに宗教を越えた動物的な逆襲心がブローアップしていく。

という意味では、監督が尊敬していたというジョン・フォードの名作などにない、実感的なバイオレンスが炸裂し、そこにあの西部劇の情緒的詩情などは、サラサラになく、ペキンパーよりも残酷だ。

古きウェスターン映画ファンには、ちょいと辛口すぎるが、ぜひ、クリント・イーストウッドにも見てもらって、コメントを聞いてみたい気がする。

 

■バットが真っ二つにへし折られた強打で、ショートのグラブを弾く。 ★★★☆☆

●6月27日より、新宿武蔵野館ほかでロードショー