●8月18日(火)13-00 六本木<アスミック・エース試写室>
M-104『罪の余白』(2015)Tokyo MX / BS11 / イープロジェクト、エスタックス
監督・大塚祐吉 主演・内野聖陽 <120分> 配給・ファントム・フィルムズ
これもまた女子高校生の犯罪をベースにした芦沢央の原作小説を映像化していて、ふと「ソロモンの偽証」を思わせるが、こちらは二重性格的な魔性の単独犯。
学校の休み時間に、遊びのつもりで教室のフェンスに登っていた生徒が、突然バランスを崩して校庭に転落して、病院で死亡した。
突然に訃報を知った大学講師で父親の内野はショックで落ち込み、少女の出産時に妻もなくしていたダブルの衝撃で、行動心理学の教師の職を辞して自暴自棄に落ち込む。
そこまでは、ショックでウツ状態になった自堕落な父親の行動を同情的に描いて行くが、やはり生前の娘がパソコンに書き込んでいた日記を手がかりにして、その交友関係を探って行く。
あの高倉健の「ブラック・レイン」のプロデュースにも参加していて、松方弘樹とのアウトロー映画も手がけていたという大塚監督は、テレビドラマになりがちな画質を堅くしていく。
ちょっと大学の出向講師にしては、リッチでモダーンなインテリアのマンションに住んでいるのは、ま、どうかな、とは思いつつも、手堅い演出にはタフで好感が持てる。
学友だった吉本実憂の存在には、どうも二面性がある、と感じた父親の内野は、浴びるように飲んでいたアルコール依存症を断って、ドラマの後半は、その女子学生の正体を暴いて行くのだ。
パズルゲームのように、娘との交流のあった女子学生たちから、多くの証言を聞いて、次第に吉本の心にある悪性を引き出して罠をかけて問いつめて、父親は自らマンションのフェンスから転落する。
ちょっと、フィルムノワールによくあるような捜査の罠で、現実には危険すぎるのだが、これは主犯の女子学生の悪性を炙り出すには仕方のない映画的レトリック。
あの「氷の微笑」を思わせる展開、というとオーバーだが、女性の持つ悪性には多くのフリッツ・ラングの傑作やヒッチコックを引き合いにだすのも、ここでは大袈裟だろう。
ケチをつけて悪く言ったらキリがないが、ま、テレビドラマよりは、映画的な演出の余裕と工夫も見られるし、女子学生の心の孤独と魔性を描き出すという狙いは、それなりに面白く味があった。
■引っ張ると見せかけて、いきなりセカンド頭上へのプッシュヒット。
●10月3日より、TOHOシネマズ新宿他でロードショー