朝明けの 雑草(あらくさ)わけて 雉 行かむ
貌(かお)赤あかと 大見得(おおみえ)切りて
夢 蔡
もともとは、この近郊に、雉は棲息していなかった。
しかし、周辺開発まえの利根川水系の小河川・粕川は、
禁猟区の指定外であった。それに目を付けて、
20数年前に、ハンター愛好者が、雉をかなりの数、放鳥した。
毎年、猟期に入るや、愛好心を満たすため、小型ジープを
乗り入れ、猟犬を放した。その後で、猟銃の炸裂音が何度もした。
枯れ葎(むぐら) 鉄砲打ちの 影ありて
雉よ 逃げろと 無言にさけぶ
無 才
幸い、この一帯は、禁猟区となり、かなりの雉が生き残った。
最初の放鳥組からの生き残りは、その後、繁殖に成功する。
雉の寿命は、約10年とされている。
今、盛んに鳴いているのは、2~3世代目くらいかも知れない。
写真の 雉は、急ぎ足である。
2~3週間後に、ブロッコリー畑になる,荒起こしの土の中を横切る。
雉の行く先は、皆出ていった廃屋。いまは、雑草群落である。
廃屋跡とは言え、一応、村の内側である。
しかし、人影ほとんど無し。限界集落的でもある。--
故に、ここが、安全地帯ーーー
ちょっとした、皮肉な出来事である ーー
辺りを伺いつつ、この後、雑草群落の中へ入って行った。
時に、雌雄が走り出ることがある。土手際で、食事かー
【 雉も鳴かずば 撃たれまい 】
「 鳴くことがなかったら、猟師にきずかれず、撃たれまいに。
転じて、無用なこと言ったばっかりに、災難をこうむる。」
とかの”言い回し”に使われておりますが、
キジ曰く、「 迷惑で~すーーー 」
雉=オス雉は、鳴くことを義務付けられている。
① 「メスへのアプローチーー 」 声の大きさー
② 縄張り宣言ーー
「 これだけの面積(安全性‣食料)を確保しているーー!
故に、君を飢えさせることがな~い。
安心して、卵を抱いていなさい。ヒナをかえしなさい。」
故に ケン・ケーンと二声に鳴くのである。
いや、鳴かねば、男が、”すたる”のである。
ーーー 参考 添付
「 雉子(きじ)の雌鳥(めんどり)薄(すすき)のもとで
妻を尋ねて”ほろろ“打つ」
岩波文庫 「山家鳥虫歌」(近世諸国民謡集)より
*注 「ほろろ(を)打つ」 雉が羽ばたきして鳴くこと。
「春の野の繁き草葉の妻恋に
とびた立つきじのほろろとぞなく」
(古今集 1033 平貞文)
:*注 「ほろろ・・」 は、人の方では 涙流すこと。
雉子は、古来、親子・男女間の深い愛情の歌には、
欠かせない”アイテム”であったのです。
万葉・古今以来、日本人には、身近なと言うよりも
日常生活に接した鳥でした。
いま、雉の声に起こされ、藪の中の彼らの生態を
想像している。
「 自然は、あらゆる真理を、
おのおのそれ自身の中に置いた 」
( パスカル )
------<了>-------
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