WATERCOLORS ~非哲学的断章~

ジャズ・ロック・時評・追憶

大王世宗

2012年04月03日 | つまらない雑談

 LaLa-TV放映で先日最終回を迎えた韓国ドラマ『大王世宗』に数か月間はまっていた。何と、86話もある長編ドラマで、私がたまたま視聴しはじめたのはちょうど真ん中あたりからだが、そのめくるめくプロットの展開に、毎週土曜日9:00~14:00までの4話連続放送にもかかわらず、ビデオ録画によって律儀にずっと見続ける有様だった。

 ともすると、最終回が唐突に、しかも取ってつけたように終わってしまう傾向の強い韓国ドラマの中にあって、この作品の最終回は感動的であった。静かにじわじわと身体に沁み込んでくるような種類の感動である。

 大王世宗は李氏朝鮮の第4代国王であるが、「訓民正音」=ハングルを創製した国王として名高い。86話もあるドラマなので要約するのは不可能だが、その最後の数話は朝鮮文字、すなわち「訓民正音」創製をめぐる物語だ。大王世宗は朝鮮民衆が自らの意思を表明する手段の必要性を痛感し、漢字ではないより平易な文字の創製をめざして研究に没頭するが、漢字の使用を文明国のあかしとする当時の風潮の中で、表音文字を野蛮人の文字として排斥しようとする反対派の様々な妨害工作に直面する。その中心が「集賢殿」の副堤学であるチェ・マルリである。また、朝鮮を属国扱いする中国も、朝鮮国内の反対派と結んで圧力をかけてくる。大王世宗とその協力者たちは、様々な困難を乗り越え、多くの犠牲者を出しながらも、秘密裏に文字の研究を続け、ついに朝鮮文字を完成する。しかし、大王世宗は研究に没頭する余り健康を害し、失明してしまう。最終話では、大王世宗のもとを訪れた反対派の中心人物チェ・マルリが、国王が失明していることを知り、その熱意に打たれて文字創製を容認するのだが、その帰り道、彼が空を見上げ、涙を流しながら心でつぶやく言葉が、筆舌に尽くしがたいほどに感動的である。

     ※     ※     ※

この時代は常に乱世。

王様と私は各々のやり方でその乱世をわたってきました。

しかし、私はどうしても王様が作られた文字を認めることができません。

ただ、あなたが注いだ心血は認めざるを得ません。

たとえ、後世の歴史が私を称え、あなたが間違っていたと判断しても、今日の私はあなたに敗れます。

肉体が衰え、視力を失うことになっても、決して歩みを止めなかった祖国朝鮮を思うあなたの、その熱意に敗れるのです。


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