●今日の一枚 86●
Keith Jarrett
The Koln Concert
「ケルン・コンサート」が好きだなどというと、硬派のジャズファンとはみなされない傾向があるのは困ったものだが、そんなことはどうでもよく、私は大甘メロディー満載のこの作品が大好きである。とはいっても、やはり大甘メロディーなので毎日聴き続けると飽きるという欠点をもっている。実際、このアルバムを聴いたのは数年ぶりである。しかし、数年ぶりに通して聴いて、この作品が傑作であり、真の名盤であることの確信を強くした。
1975年1月24日のケルンでのライブ録音盤である。1960年代後半にチャールズ・ロイドのグループで衝撃的なデビューを果たし、その後マイルス・デイヴィスのグループで腕を磨き、マイルスをして「俺のバンドではあいつのピアノが生涯最高だ」といわしめた天才が新しい音楽の方向性のひとつとして考えたのは、アコースティク・ピアノによるソロだった。ハービー・ハンコックやチック・コリアがエレクトリック音楽の道を模索したのに対して好対照だ。内藤遊人『はじめてのジャズ』(講談社現代新書)には、マイルス・スクールの生徒会長ハービー・ハンコックに対して、キース・ジャレットをマイルス・スクールの「首席」とする文章があるが、なかなかどうして言いえている。
キース・ジャレットがピアノに向う時、もちろんある程度の構想やイメージを持っているのだろうが、これほどの長い時間、美しく刺激的なメロディーを滞ることなくスムーズに、しかも自己満足に陥ることなく、聴衆に飽きさせずに聴かせるのは、当然のことながら並大抵のことではない。事実、キース以後同じような試みをしたピアニストは何人かおり、確かに作品として素晴らしいものもいくつかはあるが、彼ほど聴衆をひきつける演奏をしたものはほとんどいないのではなかろうか。
出だしから魅惑的なメロディーではじまり、5分03秒で悩殺フレーズが登場するPartⅠはもちろん大好きだが、今回聴き返してみて、ピアノ・ソロにそろそろ飽きるかなというところで登場するPartⅡ-c ののりのりメロディーは素晴らしいと思った。それにしても、LPにあったPartⅢがCDでは時間の関係でカットされているのは残念だ。新しいCDでは収録されていないのだろうか。
>これほどの長い時間、美しく刺激的なメロディーを滞ることなくスムーズに、しかも自己満足に陥ることなく、聴衆に飽きさせずに聴かせるのは、当然のことながら並大抵のことではない。
うーん、同感です!でもこんな風に言葉にする事が出来ませんでした!私のつたない記事をTBさせていただきます。
ブログも拝見し、勉強になりました。
大げさかもしれませんが、キース・ジャレットと同時代を生きていることを幸せに思っています。
チャールズ・ロイドのグループでの旋律のデビュー以来、マイルスグループ、アメリカンカルテット、ヨーロピアンカルテット、ピアノソロ、スタンダーズ・トリオと彼の音楽活動そのものが冒険的な即興演奏のように感じます。