WATERCOLORS ~非哲学的断章~

ジャズ・ロック・時評・追憶

The Water Is Wide

2006年05月21日 | 音楽

786 Charles Lloydの The Water Is Wideについて、何か語りたい。言葉がでてこない。語れない。けれども、とにかくすごいアルバムだ。ことばが出てこないほどすごいアルバムだ。

Charles Lloydは、すごい奴だ。無名のキース・ジャレットを見出し、ミシェル・ペトルチアーニを見出した。このThe Water Is Wideでもまだ出始めのブラッド・メルドーを起用しているのだ。それだけでも凄いことじゃないか。おまけに、1960年代後半の名作『フォレスト・フラワー』の爆発的ヒットの後、「心の雑草を摘み取る庭師になろう」といって、音楽活動をやめてしまった。かっこいい。かっこいいではないか……。私はこういう話が好きだ(ちょっと恥ずかしいが……)。だから私は、ソニー・ロリンズも大好きだ(絶頂期に突然引退して橋の上で練習していたなんて、すごいじゃないか。かっこいい。)。

ところで、近年の傑作The Water Is Wide。深遠なアルバムだ。わりとポップで判り易い曲Georgiaからはじまるのだが、それ以降は豊饒で深遠な世界だ。哲学的雰囲気すら感じるが、全然小難しくない。

「静謐」……。私は、このアルバムを聞くといつもこのことばを思い起こす。神秘性すら感じさせる豊饒な音の世界を聞きながら、実は、音と音の間の無音の空間を感じている気がする。その世界は、まさしく「静謐」だ。そして、すべての演奏が終わった時、私はその静謐な余韻の中に、じっとたたずむことになる。そこには静寂だけがある。放心状態になり、いすから立ち上がれなくなってしまうこともある。しかし、それは至福の時間だ。解放された制約なき時間。

音楽を聞きながら感動し、聞き終わってからさらに感動する。まったく稀有なアルバムである。

CDの帯にはこう書かれている。「緩やかに流れる大河の如く」

その通りだ。

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↓↓加筆修正しました↓↓

http://watercolors.blog.ocn.ne.jp/watercolors/20068/index.html

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