WATERCOLORS ~非哲学的断章~

ジャズ・ロック・時評・追憶

これはいい。だが……

2007年01月14日 | 今日の一枚(K-L)

●今日の一枚  113●

Karel Boehlee   

Last Tango In Paris

Watercolors_6  何というジャケット写真・・・・。気の弱い私などは、CDショップのレジにもっていくことがためらわれるような写真だ。いい写真だ。何をしているのかあるいはしようとしているのかは不明であるが、そのエッチな雰囲気は好きだ。女性の肌のなめらかな感じが何ともいえなくいい。

 ヨーロピアン・ジャズ・トリオの初代ピアニスト、カレル・ボエリーの新作。2006年録音盤、『ラスト・タンゴ・イン・パリ』だ(M & I)。ボエリーのリーダー作は初めて聴いたが、これがなかなかいい。Swing Journal 誌が盛んに宣伝をしていたので、かえっていかがわしいと思い、これまで聴いたことがなかったのだ。CDの帯には「静寂な響きと哀愁味溢れる表現」とあるが、基本的にはまったくその通りの作品だと思う。いい演奏だ。録音もいい。

 けれども・・・・、と思ってしまう。語弊のある言い方かもしれないが、録音が良すぎるのだ。楽器にマイクを近づけて録音している音だ。各楽器の音は鮮明で、音も大きい。けれども、一関のベイシーのマスター菅原正二さんの次のような言葉を思い出してしまう。

「何時の頃からか、ジャズの録音を物凄く”オン・マイク”で録るようになった。各楽器間の音がカブらないように、ということらしいが、もともとハーモニーというものは、そのカブり合った音のことをいうのではなかったか!?・・・・・実際のコンサートへ行っても駄目である。レコーディングとまったく同じマイクセッティングのPAの音は、やはりハーモニー不在で、”生”を聴いた気はしない。」

菅原正二ジャズ喫茶「ベイシー」の選択 僕とジムランの酒とバラの日々』講談社+α文庫)

 この作品を聴いて、音は鮮明だが、生々しくないと感じた。すばらしい演奏だと思うのだが、全体的に音が強すぎるような気がする。「静寂な響きと哀愁味溢れる表現」というには、あまりに音が明瞭すぎると思うのは私だけだろうか。


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