WATERCOLORS ~非哲学的断章~

ジャズ・ロック・時評・追憶

民衆の歌

2009年02月14日 | 今日の一枚(G-H)

◎今日の一枚 232◎

Giovanni Mirabassi

AVANTI !

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 フランスで活躍するイタリア人ピアニスト、ジョバンニ・ミラバッシの2000年録音澤野工房盤『AVANTI !』である。ピアノソロアルバムだ。以前記したように、ジョバンニ・ミラバッシを知ったのは、半年ほど前に澤野工房の懸賞で粗品ライブアルバムを手に入れてからである。以来、ずっと気になっていたのだが、今回やっと購入することができた。

 しみじみとした静かな感動に心が満たされる。付属のやや厚いブックレットには、世界各地の兵士や民衆、あるいは農婦やゲリラや革命家の写真が写されている。アルバムに収められた曲は、革命歌や反戦歌であり、民衆の生活の歌である。ジョバンニ・ミラバッシは、それらをただ淡々と、しかし静かな愛情を込めて奏でていく。各曲はみな短い、世界各地の歌である。しかし、そこには不思議な統一感がある。それは、民衆的世界の何がしかのイメージなのだろうか。あるいは、ジョバンニ・ミラバッシの個性なのだろうか。

 北見柊氏による付属のライナーノーツに次のような箇所がある。

「ここに集められた歌たちは時と場所こそ違え、多くの人々に『人生の一部』として歌われたものだ。人は苦しいにつけ悲しいにつけ歌うのだな、としみじみ思うが、逆境にあっての歌ほどにシンプルな美しさ、切なさを秘めている。きっそこにはやむにやまれぬ『こころ』が込められているからだ。おそらく、立場や思想を超えたところにあるその『こころ』をミラバッシは表現しようとしたのだろう。そう考えてブックレットを眺めるとき、彼の想いは更に染みてくるようだ。それは何か祈りに似ている。」

 なかなか考えさせられる一文である。


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