ふりかえれば、フランス。

かつて住んでいたフランス。日本とは似ても似つかぬ国ですが、この国を鏡に日本を見ると、あら不思議、いろいろと見えてきます。

タンタン、裁判所へ行く。

2010-12-18 20:16:41 | 文化
ベルギーのマンガ家、エルジェ(Hergé、本名のGeorge Remiの頭文字を前後逆にしてRG、そのフランス語発音からHergéとしたペンネーム)。この「ヨーロッパ・コミックの父」が後世に残した傑作と言えば、ご存知「タンタンの冒険旅行シリーズ」。そのシリーズの内、1930年から翌年にかけて描かれた“Titin au Congo”(『タンタンのコンゴ探検』)が、人種差別的表現があるとして、エルジェの本国・ベルギーで訴えられています。

具体的にはどのような場面かというと、例えば、タンタンが当時のベルギー領コンゴで現地の人たちに向かって、「さあ、仕事へ行け、早く」と言い、さらにミルーが「この怠け者めが、早く仕事に取り掛かれ」と追い打ちをかける場面。現地の人たちを見下している・・・

最初に訴えが出されたのは2007年。それから3年。その経過を13日の『ル・モンド』(電子版)が伝えています。

訴えたのは、当時学生だった、コンゴ出身のビヤンブニュ・ムブツ・モンドド(Bienvenu Mbutu Mondodo)氏。今では会計士として働いている、42歳。ベルギー暮らしも20年以上になる(ということは、訴え出た当時でも、学生とはいえ、20年近くベルビーに住んでいたわけですね)。モンドド氏を訴訟に駆り立てたのは、同じ内容の訴訟に対するイギリスでの決定。出版差し止めには当たらないものの、人種差別を想起させるイメージや言葉があり、描かれた当時の状況などを説明する文章を付け加えるべきであるという決定が出された。しかも、この決定を受けて、イギリスとアメリカで店舗展開をしている書店チェーンが、『タンタンのコンゴ探検』を子供向け書籍コーナーから18歳以上の大人向け書籍コーナーへと移した。

イギリスでのこうした状況に励まされ、モンドド氏はまず、タンタン・シリーズの著作権を管理しているムーランサール(Moulinsart)という会社に電話をかけた。その顛末やいかに。モンドド氏曰く・・・ムーランサール社は、わが社には関係ないことだと述べ、がちゃんと電話を切ってしまった。一庶民の指摘になど何ら関心を払わない会社なのだと分かったので、裁判に訴えることにしたのだ。ベルギーの1981年に成立した法律によれば、『タンタンのコンゴ探検』には明らかに人種差別的個所がある。公判には、多くの証人を呼んだ。その中には歴史家や宗教関係者も含まれる。なぜなら、ベルギー領コンゴへの入植者を増やし、宣教師を派遣したいという教会側の思惑がエルジェに働いて、この作品が世に出たのだから。

ところで、ムーランサール社は著作権を管理してはいるが、版元は別。カスターマン(Casterman)という会社が版元であり、ムーランサール社だけを相手取って出版差し止めを要求しても、実現しそうにない。そこで、モンドド氏は、今年の5月、カスターマン社も告訴。2社は、作品が描かれた1930年前後の状況が作品に反映されているものであり、作者に人種差別的意図はなかった、などと主張。

公判が続いている中、モンドド氏は今月3日から5日まで、パリ5区の区役所で開催された「第1回アフリカ人漫画家サロン」に招待され、パリにやって来た。このイベントには、ガボン、カメルーン、ベナン、チャド、コンゴ民主共和国などから30人ほどのマンガ家が参加した。いくつかの講演会や討論会が行われたが、その中のひとつが「マンガにおける植民地化と非植民地化」をテーマを掲げていた。モンドド氏はこの分科会で、『タンタンのコンゴ探検』を訴えた理由を繰り返すとともに、有名になりたいだけじゃないかとか、どうせ弁護士を雇う金なんかないのに、という噂を否定した。

イベントに参加した黒人協会代表者評議会(le Conseil représentatif des associations noires)の会長は、モンドド氏を支持しつつも、より協調的に次のように述べている・・・モンドド氏は出版差し止め以外受け入れないと言っているのではなく、作品が描かれた当時の状況を説明する文章を加えるという解決策でも受け入れる用意がある。検閲には「ノン」、教育には「ウイ」だ。

一方、アフリカからやって来た漫画家たちは、モンドド氏の訴訟にほとんど関心を示さず、「コンゴで出版差し止めにすればいいさ、でも自分の国では困る。自分もエルジェと同じように黒人を描いているからね」、あるいは、「もっと重要なことがある。今のアフリカをありのままに描くことができるかどうかだ。表現の自由との戦いの方が自分にとってはより重要なのだ」・・・

同じアフリカ人とは言え、ヨーロッパに住み、さまざまな差別にあって来た人と、アフリカに住み続け、そこでのさまざまな問題に直面している人たち。お互いの関心事が異なるのも、仕方のないことなのかもしれません。しかし、協力し合う、支援し合うことはできるのではないでしょうか。それとも、人間は、結局自己中心的になってしまうのでしょうか。立場の違い、環境の違いを認め合った上で、手を携え合う・・・言うは易し、行うは難し、ですね。

取る人は、取る。大企業トップの年収。

2010-12-17 20:10:37 | 経済・ビジネス
他人の財布はつい覗き込みたくなってしまうものですが、フランスも同じなのでしょうか、主要企業トップの昨年の年収が公表されました。いくらもらっているのでしょうか・・・14日の『ル・モンド』(電子版)が伝えています。

投資コンサルタント会社“Proxinvest”によると、ユーロネクスト・パリ(旧パリ証券取引所)の主要40銘柄で構成されるCAC40(Cotation Assistée en Continu)に含まれる企業の経営者、その2009年における平均収入は、ストック・オプションなどを含め、306万ユーロ(約3億3,660万円)に上った。長引く不況の影響か、これでも前年に比べて14%減少した。しかし、それでも、最低賃金であるSMIC(salaire minimum interprofessionnel de croissance:全産業一律スライド制最低賃金)の190倍に達している(逆算すると、最低賃金の年収は16,105ユーロ。約177万円ということになります)。

高収入の経営者の中でも、そのトップ3は、ルノー・日産のカルロス・ゴーン(Carlos Ghosn)会長が920万ユーロ(約10億1,200万円)、製薬大手サノフィ・アベンティス(Sanofi-Aventis)のクリストファー・ヴィバシェ(Christopher Viehbacher)会長が820万ユーロ(約9億200万円)、LVMHのベルナール・アルノー(Bernard Arnault)会長が760万ユーロ(約8億3,600万円)。(ため息しか出ないような額ですが)こうした高額報酬は、中小企業の経営者の収入とは似ても似つかぬものであることを、Proxinvestのレポートは指摘している。

中小企業の経営者の平均年収(2008年)は手取りで61,300ユーロ(約670万円)。2009年には不況の影響でさらに減ったものと思われる。中小企業総同盟(CGPME)によれば、サラリーマン社長・会長であるCAC40の経営陣の収入と、オーナー社長・会長である中小企業のトップのそれとの間には、抜き差しならぬ格差がある。

また、同レポートによれば、ここ数年、社会的問題ともなっていた経営者の収入に対する世論と企業側の意見の食い違いが、2010年には少し落ち着いてきたようだ。その背景は、2008年に多くの企業トップの年収が多すぎると非難の俎上に載せられて以降、経団連(le Medef)や私企業協会(AFEP)が倫理規定を導入したことだ。経団連のパリゾ(Laurence Parisot)会長にとっては、まさに革命的なことだった。市場もこうした透明性を好感した。そのお蔭か、CAC40の経営者の報酬はここ2年減少している。

しかし、“Proxinvest”によれば、まだまだ改善の余地があるということだ。特にボーナス。例えば、LVMHのアルノー会長の場合、算出基準となる三つの数値のうち二つが減少しているのにもかかわらず、前年同額のボーナスが支給された。ボーナスの半分が、数量ではなく不透明なクォリティによって判断されているため、こうした状況が生まれている。もう一点は、取締役になっていない会長の場合だ。取締役でないため、株主に公開する義務を負わず、不透明になっている。しかも、こうした立場の人へのボーナスに関して、フランスは他のヨーロッパ諸国に比べ寛大だ。一層の透明性が求められる。

・・・ということで、日本でも有名な経営者、日産のカルロス・ゴーンCEOがフランスの経営者の中でトップの高収入。しかし、この10億円を超える収入のうち、9億円近くは日産からの報酬。ルノーからはあまり多くもらっていません。そのため、企業トップの高額報酬には日本以上にうるさいフランスでも、多すぎるという非難が起きないのでしょうね。日本で質問が出た際には、世界的企業ではこれくらい当たり前の額だ、という一言で乗り切ってしまいました。経営トップとしての実務時間の配分も日産とルノーで9対1くらいになっていればいいのでしょうが・・・

ところで、文化大国、観光大国のフランスですが、ビジネスではどんな企業があるのか、なかなか日本では伝わってきませんね。そこで、CAC40の企業を眺めてみましょう。
Accor(アコー):ホテル
Air Liquide(エア・リキッド):化学・ガス
Alcatel-Lucent(アルカテル・ルーセント):通信
Alstom(アルストム):機械
Arcelor-Mittal(アルセロール・ミッタル):鉄鋼
AXA(アクサ):保険
BNP Paribas(BNPパリバ):金融
Bouygues(ブイグ):建設・通信
Capgemini(キャップジェミニ):通信
Carrfour(カルフール):流通
Crédit Agricole(クレディ・アグリコル):金融
Dexia(デクシア):金融
EADS(EADS):航空・宇宙
EDF(フランス電力):電力
Essilor(エシロール):医療機器
France Télécom(フランス・テレコム):通信
GDF Suez(DGFスエズ):ガス
Danone(ダノン):食品
L’Oreal(ロレアル):化学
Lafarge(ラファージュ):セメント
Lagardère(ラガルデール):出版
LVMH(LVMH)アパレル・宝飾
Michelin(ミシュラン):タイヤ
Pernod Ricard(ペルノ・リカール):酒造
PSA Peugeot Citroën(PSAプジョー・シトロエン):自動車
PPR(PPR):流通
Renault(ルノー):自動車
Saint-Gobain(サンゴバン):ガラス・セラミック
Sanofi-Aventis(サノフィ・アベンティス):医薬品
Schneider Electric(シュナイダーエレクトリック):電気機器
Société Générale(ソシエテ・ジェネラル):金融
ST Microelectronics(STマイクロエレクトロニクス):半導体
Suez Environnement (スエズ・エンバイロメント):水道
Technip(テクニップ):石油・ガス
Total(トタル):石油・ガス
Unibail-Rodamco(ユニボール・ロダムコ):不動産
Vallourec(バロウレック):産業用機械
Veolia Environnement(ヴェオリア・エンバイロメント):水道
Vinci(バンシ):建設
Vivendi(ヴィヴェンディ):メディア

カタカナは、日本で一般的になっている表記にしましたが、どうですか、いろいろありますね。CAC40には入っていないものの、政府がほとんどの株を保有しているAreva(アレヴァ)などという巨大な原子力複合企業もありますし、産業もそれなりにしっかりしていますね。フランスをビジネス面から研究してみるのも面白いのかもしれませんが、40社を記入するだけで疲れているようでは、どだい無理なようです(がっかり)。

この親にして、この娘あり・・・2002年の再現なるか?

2010-12-16 20:52:49 | 政治
2002年の「ルペン・ショック」。大統領選挙で、序盤までは泡沫候補扱いされていた極右・国民戦線(le Front national)のジャン=マリ・ルペン(Jean-Marie Le Pen)党首が、社会不安、外国人への嫌悪感を背景に急速に支持を広げ、第1回投票で現職のジャック・シラク(Jacques Chirac)大統領の19.71%に次ぐ16.86%を獲得して、決選投票へ。16.12%だった現職首相の社会党候補、リオネル・ジョスパン(Lionel Jospin)は第1回投票で姿を消すことに。決選投票では、「反ルペン・反ファシズム」キャンペーンなどに遭い、18%対82%で大敗しましたが、右派対左派(社会党)が通例となっていた決選投票に、外国人排斥を訴える極右候補が登場したわけですから、これはもう、フランスのみならず、ヨーロッパ中に大きな驚きを与えました。

2012年に行われる次期大統領選挙は、この「ルペン・ショック」からちょうど10年。あの「ルペン・ショック」が繰り返されるのではないかという声が、フランス・マスコミの間で上がり始めています。今でも国民戦線の党首であるとは言うものの、82歳という高齢を押して、ジャン=マリ・ルペンが再び旋風を起こすというのでしょうか。それとも・・・13日の『ル・モンド』(電子版)が伝えています。

ルペン党首の娘で国民戦線の副党首を務めるマリーヌ・ルペン(Marine Le Pen)の10日の発言が、大きな波紋を呼んでいる。(モスクのない地域では、多くのイスラム教徒たちが街の通りに集まり、メッカの方角を向いて礼拝を上げています。通りを占拠し、その一帯をイスラム色に染めているようにも見えかねない光景ですが、)こうしたイスラム教徒たちの行動をマリーヌ・ルペンは「第二次大戦の折のドイツ軍によるフランス占領」になぞらえて非難した。(去年からのアイデンティティ論争や、ブルカやニカブなど全身を覆うイスラム女性の服の公共の場所での着用禁止など、イスラム教徒問題に敏感になっている折ですから)彼女のこうした発言は、多くのメディアの取り上げるところとなり、政界のみならず、国民の間でも大きな話題となった。

各メディアの論調は、次のようなものだ。
・国民戦線は変わった。より危険な存在になったのだ。異なる他者への嫌悪感は国民の中に残っており、国民戦線はそれをうまく活用している。その意味では、変わっていない。
・マリーヌ・ルペンがその父の娘であることが明確となった。他の政治家たちはこの事実に、もっと早くから気付くべきだった。
・与党UMP(国民運動連合)や社会党は、マリーヌ・ルペンが単に父親の影響で党首の座を継ぐだけの、影響力のない政治家であってほしいと思っていたのだろうが、そうはいかなくなった。
・サルコジ大統領やその取り巻きが、大統領選へ向けて極右の票も取り込もうとしている折に、どうして国民戦線を批判できるのだろうか。
・マリーヌ・ルペンの発言は、社会党のみならずUMPにも脅威となったに違いない。2012年に、2002年が再現されるのではないかという恐怖だ。しかも、2002年とは逆に、サルコジ大統領が第1回投票で敗退し、決選投票に進出できないという悪夢だ。この恐怖感は簡単には払拭できないものとなってしまった。
・イスラム教徒が、敵が、そこにいるという恐怖感が、国民の中で反響し、増幅している。
・イスラム教徒による災いという恐怖感に立脚するアイデンティティ論は、ヨーロッパ中の選挙で、次から次へとその存在感を高めている。
・マリーヌ・ルペンの発言に憤慨する向きがあろうが、その発言をめぐる論争が熱を帯びれば帯びるほど、彼女の存在が脚光を浴びることになる。

・・・このような論調が、フランス国内のメディアで見られるようなのですが、肝心の国民はどのように受け止めているのでしょうか。15日の『ル・モンド』(電子版)が紹介しています。

IFOP(調査会社)が13・14日に970人を対象に行った調査によると、61%がマリーヌ・ルペンの発言を否定し、賛成は39%だった。しかし、支持政党別にみると、UMP支持者では54%と過半数が彼女の発言を支持している。左派支持層では、82%が反対で、支持はわずかに18%(わずかとは言うものの、社会党や共産党支持者の中に、極右の反外国人的発言に賛同する人が18%もいるということは、政治的主義主張以前に外国人嫌いなんだ、という人がいるということなのでしょうね。頭より心が先に動いてしまう・・・)。国民戦線支持者は、言うまでもなく、98%が賛成している。そして、対象者の80%以上が、マリーヌ・ルペンと父のジャン=マリ・ルペンが似た考えの持ち主で、同じ主張をしていると思っている。

・・・ということで、2002年の再現がなるかどうかは、これから、ということなのでしょうが、2007年の大統領選挙も含めてしばらく鳴りをひそめていた極右・国民戦線が再び息を吹き返してきているようです。しかも、こうした極右、極端な愛国主義はヨーロッパの多くの国々で伸長してきています。国会で議席を占める、地方議会で議席数を伸ばす、といった政治の世界のみならず、外国人排斥のためのデモや暴動、外国人への威嚇や襲撃・・・景気、福祉、治安など国内に問題が山積すると、国民の目を外に向けさせるために、偏狭な愛国心を過度に煽る政治家が出てきますが、その傾向が現れてきているのかもしれませんね。

パリのメトロの駅などでは、スマートフォンを狙った犯罪、それもスリではなく、暴力や凶器を使っての強奪が非常に増えているようです。私たちは、ヨーロッパに行けば、黄色い皮膚の“les minorités visibles”(外見上すぐ分かる少数民族)ですから、犯罪や外国人排斥運動のターゲットにされやすい。今まで以上に気をつけないといけない状況になっているようです。

授業は週4日か、4.5日か、それとも5日か・・・フランスの小学校。

2010-12-15 20:19:55 | 社会
2005年にフランスに住み始めて、すぐ気付いたことのひとつが、水曜日、朝から子供たちの遊ぶ元気な声が建物の中庭でこだましていること。何と、フランスの小学校は、水曜日、休みでした。その分、土曜日は登校。もちろん、午前中だけですが。

そしてもう一つ気付いたことは、夕方4時半ころ、多くの大人たちが通りのひとところに人待ち顔でたむろしていること。そこは他と変わらない建物なのですが、よく見ると、学校の名を記したプレートが掲示されています。日本のように、校庭があり、校門があってというのではないのですが、学校は学校。その出口に集まっているのは・・・実は子どもを迎えに来ている父兄や出迎えを仕事にしている人たちです。学校を一歩でも出たら、責任は学校ではなく父兄が負うもの、ということなのでしょう。父兄が送り迎えしています。朝は送って行くものの、仕事の都合で迎えに行けない人は、ベビーシッターのように人を雇って迎えに行ってもらっています。

所変われば、品変わるで、教育制度も大きく異なるものだと、実感したものでした。

その週4.5日授業(月・火・木・金の終日と土の午前中)も2年前に変更になり、週4日授業(月・火・木・金)になっています。小学校が、週休3日です! しかしこの新制度、わずか2年にして修正を余儀なくされそうです。どこが問題なのでしょうか・・・8日の『ル・モンド』(電子版)が伝えています。

小学校の週4日授業は、2年前、時のダルコス(Xavier Darcos)国民教育大臣が実施に踏み切ったものだが、反対意見が次から次へと出されている。まずは、教職員組合。続いて、社会党の国会議員。去年の9月には、教育監察官からの非難。そして、今月8日、下院の調査委員会がまとめた報告書が、子どもへの負担を軽減させるためにも週4日授業は改められるべきだと警鐘を鳴らしている。

4日半でやっていた授業内容を4日に凝縮すれば、子どもたちへの負担が大きくなり過ぎてしまうのは当然だ。時間が身体へ及ぼす影響を研究している専門家(les chronobiologistes)からも、とんでもないことだという意見が出されている。

下院の報告書は、週4日授業は改めるべきであり、一日の授業時間に上限を設けるべきだと述べているが、しかし4.5日授業に戻すべきなのか、それとも5日授業にするのか、その場合も水曜日に授業をするのか、以前のように土曜にするのかは、明記していない。それぞれに賛同者がいて、統一見解には至らなかったようだ。

報告書は続けて、子どもの年齢により一日の授業時間を変更すべきだと述べている。入学したての子どもも11歳児も一日に同じ時間数の授業を受けるのは異常なことだ。また中学校や高校についても、年間の総時間数を決めておけば、週の時間数などは学校単位で調整できるようにすべきだと言及。報告書の提案する改革の目的は、教育システムを多様化することにあるようだ。

報告書はまた、休みについても、7週授業・2週休み、というサイクルを提唱。そのために、万聖節(Toussaint)の休みを長くし、3学期は休みを再調節することを提案している。いくつかの休みが長くなる分、夏休みは当然2~3週短くなる。しかし、それでは観光業に影響が出るのではないかという指摘が出てくるだろう。それについては、全国を二つのゾーンに分けるゾーン制の夏休みを導入することにより、影響を軽減できると言っている・・・

ゾーン制による休暇・・・日本でも社会実験をするとかしないとか、言われていましたね。世界的流行なのでしょうか。

ところで、週4.5日とか週4日では、フランスの子どもたちの受ける授業時間数は非常に少ないのではないかと思ったのですが、調べてみると、あにはからんや、これが長いんですね。ビックリです。2003年のデータしか見つからなかったのですが、小学校6年間の総授業時間数は・・・

・イタリア:5,800時間
・インド:5,800時間
・フランス:5,000時間
・カナダ:5,000時間
・香港:4,900時間
・ドイツ:4,200時間
・シンガポール:4,200時間
・イギリス:4,000時間
・フィンランド:3,900時間
・日本:3,900時間
・台湾:3,900時間
・韓国:3,800時間
・中国:3,500時間

国によっては、授業と授業の間の休憩時間を含んでいたりいなかったり、あるいは州により時間数が異なるなど、若干の誤差はあるようですが、全体的傾向は上記で見てとれるかと思います。長いヴァカンスでも有名なイタリアやフランスの授業時間が長い・・・にわかには信じがたい数字ですが、間違いではないようです。低学年でも一日の授業時間が長い結果、こういう総時間数になっているのだと思います。

これだけ長時間授業を受けても、PISA(OECDが3年に一度実施している学習到達度調査)の結果とは関連性がほとんどないようですから、学力に好影響を及ぼしてはいないようです。低学年の子どもたちにとっては、一日の授業が多いのは負担というか、苦痛になっているのかもしれませんね。

片や長時間学習、こなたゆとり教育・・・それぞれの国で未だに試行錯誤。それだけ教育は難しいということなのでしょうね。しかし、どんなに難しくても、より良い教育をつねに希求していくことが大切なのではないでしょうか。「人が財産」・・・将来を担う人材を育てることこそ、教育なのですから。

フランスは増え、日本は減る・・・それは、人口です。

2010-12-14 20:25:10 | 社会
何でも大きければ良いっていうものじゃない、何でも増えれば良いっていうものじゃない・・・確かにそうですね。国の赤字、その巨額さを誇ってもしようがないですが、特許件数とか、ノーベル賞受賞者数とか、平均寿命とか、やはり多かったり、増えていたりすればうれしいことってありますね。では、人口は? 

世界規模で考えれば、食糧やエネルギー、飲料水など、考慮に入れなければいけないことも多く、適正人口というものもあるのでしょうが、減るよりは増える方が、国もさらに発展するように感じられますし、安心できるようにも思えます。しかし、報道されているように、日本の人口はすでに減少し始めています。そんなところからも、元気のない、うつむき加減な国、斜陽、陽沈み行く国、そんなイメージを自ら持ってしまいがちですが、人口が若干減っても、まだまだ元気を出して、坂の上の雲をめざして歩んでいきたいものですね。

人口減少の日本に対し、出生率も回復し、人口が増加に転じる国として、さまざまなところで引き合いに出されているのが、フランス。その人口が、30年後の2040年には7,300万人になるという記事が、7日の『ル・モンド』(電子版)に出ていました。

人口推計を発表したのは、INSEE(Institut national de la statistique et des études économiques:国立統計経済研究所)。2040年1月1日時点でのフランスの人口は7,300万人で、そのうち海外県・領土などを除いたフランス本土の人口は7,100万人。最新データである2007年の国勢調査よりも15%増える予想になっている。

もちろん、その増加傾向は、地域により一律ではなく、西部や南部への人口移動が多く見られる。最も増加率の高いのは、地中海に面し、スペインと国境を接するle Languedoc-Roussillon(ラングドック=ルシヨン地方、中心都市はモンペリエ)で、28.5%も増加すると予測されている。続いて、パリから西へ、大西洋に面したles Pays de la Loire(ペイ・ド・ラ・ロワール地方、中心都市はナント)が26%、そのすぐ北、大西洋に突き出したla Bretagne(ブルターニュ地方、中心地はレンヌ)が24%、さらに南西部、大西洋に面し、スペインと国境を接するl’Aquitaine(アキテーヌ地方、中心都市はボルドー)が23%と続いている。西部から南部にかけての海沿いの地方で人口増加が顕著となる。

同じ南部でも、ラングドック=ルシヨンの東隣り、la Provence-Alpes-Côte d’Azur(プロヴァンス=アルプ=コート・ダジュール地方、中心都市はマルセイユ)は15%、地中海に浮かぶコルシカ島のla Corse(コルス地方、中心都市はアジャクシオ)は17%と全国平均と同じ程度の増加にとどまる。

また、l’Auvergne(オーヴェルニュ地方、中心都市はクレルモン=フェラン)など中央地方の人口も増加が予想されてはいるが、その増加率は8~10%で全国平均を下回る。同じ傾向は、パリを中心都市とするl’île-de-France(イル=ド=フランス地方)、東部、ドイツと国境を接するl’Alsace(アルザス地方、中心都市はストラスブール)、その南、スイスと国境を接するla Franche-Comté(フランシュ=コンテ地方、中心都市はブザンソン)などでも見られる。

唯一30年後の人口が現在よりも減少すると見られているのは、シャンパンでおなじみ、パリから北東に位置するla Champagne-Ardenne(シャンパーニュ=アルデンヌ地方、中心都市はシャロン=アン=シャンパーニュ)で、-2%と予測されている。また、北部、ベルギーと国境を接するle Nord-Pas-de-Calais(ノール=パ=ド=カレ地方、中心都市はリール)、アルザス地方とシャンパーニュ=アルデンヌ地方に挟まれたla Lorraine(ロレーヌ地方、中心都市はメス)では2030年ころから人口減少が始まると予想されている。

大西洋沿岸を中心に西部や南部において大きな人口増加が予測されているが、それは出生から死亡を差し引いた自然増よりも、人の移動による社会的増加が大きく寄与することになる。

住民の平均年齢を見てみると、イル=ド=フランス地方とノール=パ=ド=カレ地方がそれぞれ40.3歳、41.9歳で最も若く、逆にコルス地方と中央部に位置するle Limousin(リムザン地方、中心都市はリモージュ)が48.9歳で最も高齢になる・・・

ということで、フランスの人の流れは、西へ、南西へ。例えば、ブルターニュ地方は産業革命以降、パリやその近郊へ労働力として移住した人が多く、その到着駅、モンパルナス駅周辺には今でもブルターニュ名物のクレープ屋さんが多くあります。しかし今後はその人の流れが逆になり、移住先として人気が出るようです。

一方、同じくかつてパリへの流入が多かったオーヴェルニュ地方やアルザス地方は、人口は若干増えるものの、その増え方は少ない。アルザス地方は、確か「アルザス・ロレーヌの振り子」って言いましたね。戦争の結果により、ドイツ領になったり、フランス領になったり。ドイツ的文化の色濃いアルザス地方は、観光には良いですが、移住するにはちょっとなのかもしれないですね。それに、冬の寒さも影響しているのかもしれませんし、また独仏両国がお互いに軍隊を常駐しあうような関係になっても、やはりドイツ国境の近くへわざわざ移り住むのは気が引けるのかもしれないですね。

では、フランスの人口が7,300万人になると、世界の国々中でどのくらいの位置になるのでしょうか。2009年の推計で、人口トップテンは・・・
・中国:13億5,300万人
・インド:11億9,800万人
・アメリカ:3億1,500万人
・インドネシア:2億3,000万人
・ブラジル:1億9,400万人
・パキスタン:1億8,000万人
・バングラデッシュ:1億6,200万人
・ナイジェリア:1億5,500万人
・ロシア:1億4,100万人
・日本:1億2,700万人

フランスに近い国々では、
(16)ドイツ:8,200万人
(17)トルコ:7,500万人

(21)フランス:6,500万人
(22)イギリス:6,200万人
(23)イタリア:6,000万人

フランスが7,300万人に増えても、順位的には大きくアップすることはなさそうですが、それでも増えていくことは将来が明るく感じられるのではないでしょうか。その人口増加も、国が女性が子どもを産み育てやすいように、さまざまな措置を講じて出生率を向上させたわけですから、国家としての戦略がうまくいったと言えるのでしょうね。一人の女性が生涯に産む子供の数である合計特殊出生率は、フランスでは2.0まで増えています

一方、日本は1.37。戦前のような産めよ増やせよではないですが、それでも人口が少しずつでも増える方が良いのではないでしょうか。何しろ今日の日本では、子供がいらないというより、収入が十分でない、託児所がないなどの理由から、産みたくても産めないという国民も多いのですから。人口を増やすためのいっそう効果的な施策が、待たれますね。ウィキリークスの暴露の中に、シンガポール外務省高官の、「日本はアセアンとの関係では中国に後れを取った負け犬だ。その理由は、洞察力のなさ、指導力のなさ、つまり愚かだからだ」といった趣旨の発言が含まれていたそうですが、見返すためにも卓越した国家戦略とそれを実現する政治的指導力の発露が求められますね!

外交官は、ワインがお好き。

2010-12-11 21:00:24 | 社会
『お熱いのがお好き』は、1959年制作のアメリカ映画。名匠、ビリー・ワイルダー監督、出演がトニー・カーティス、ジャック・レモン、そしてあのマリリン・モンロー。見た記憶のある方も多いのではないでしょうか。

そして、「ワインがお好き」なのは、外交官。10月、日本の会計監査院が在外公館の資産などを調査し、その結果を発表しましたが、OECD代表部をはじめいくつかの公館では、1本数万円以上の高級ワインを年間使用量の5倍以上も保有していたことが分かりました。日本人同士では絶対に飲んでいないと断言できるのでしょうか。たくさん購入すれば、シャトーを訪問する際にも、歓待されて気持ちいいでしょう。しかし、その購入資金は国民の税金であることをお忘れなく!

実は、ワインが好きな外交官、何も日本人に限った話ではないようです。中には盗みまでしてしまった外交官までいる・・・11月30日の『ル・モンド』(電子版)が伝えています。フランスの新聞が伝えているのですから、ワインを盗んだ外交官は、当然フランス人。しかし、盗んだ場所は、香港。

香港の上流階級が集う場所のひとつが、“Country Club”。1962年、アバディーン近くにオープンした会員制クラブで、その会長は香港行政長官のドナルド・ツァン(Donald Tsang:曽蔭権)。設備は、プール、テニスコート、レストラン、そして高級ワインが壁一面に並んだ地下のワイン・セラー。田舎風の寛いだ雰囲気のレストランでは、会員たちが予約なしで食事を楽しんでいる。このカントリー・クラブがなんと盗難現場。

さて、犯人は・・・駐香港・マカオ総領事のフォンボスティエ(Marc Fonbaustier)氏。46歳のエナルク(énarque:国立行政学院の卒業生)。この領事は、あろうことか、ワインのボトルをズボンの中に隠して持ち出したようだ。酔った上での、持ち出せるかどうかの賭けだったのだろうか。しかし、このワイン・セラーには、梁の陰に監視用カメラが設置されており、悪事が全て録画されていた。しかも、場所がまずい。行政長官が会長を務めるクラブでの外交官による盗難。国際関係にも影響しかねない。即、任を解いて、帰国だ!

という訳で、11月23日の夜、大急ぎで帰国の途に(夜の出発だっただけに、夜逃げのようにも見えてしまいます)。あくまで個人的理由による帰国と発表されたが、赴任してわずか1年余り。香港・マカオにいる13,000人のフランス人の間では非常に人気のある総領事だけに、さまざまな憶測が。ゴシップ好きな人たちにとっては、まさに格好の餌食。

香港のタブロイド紙(Apple Daily)は、フォンボスティエ総領事は、数か月前にも、名門の香港・ゴルフ・クラブ(Hong Kong Golf Club)で3,000ユーロ(約33万円)以上もするワインを盗んでいたと伝えている。この件は、盗んだのではなく、プレゼントとして頂いたものだと、釈明している。

フランス外務省のヴァルロ(Bernard Valero)報道官は、フォンボスティエ総領事は事実を認め、すでに弁済していると発表。その後さらに、詳細を調べるための調査を始めているが、フランス外交に携わるプロとしてあってはならない行為だった、とも述べている。一方、現地、香港のフランス総領事館は、ノー・コメントを貫いている・・・

エナ(ENA)を出て外交官になっているのですから、裕福な家系に育ったのでしょう。それがどうしてワインをくすねるようなことをしたのでしょうか。イギリス領だったせいか、欧米人にとっては親しみやすいのかもしれませんが、やはりアジア。香港のエキゾチックな雰囲気に、タガが外れてしまったのでしょうか。あるいは、もとからそうした性向があったのでしょうか。

もし、単なる悪ふざけだとすると、高くついたものですね。何しろ、『ル・モンド』の電子版で紹介されてしまいましたから、それこそ世界各国の人が読んでしまった。一躍有名人でしょう。でも、有名人になるなら、良い方でなりたいものですね。その点、日本の在外公館の大量のワイン保有は、個人名が出ないので良かったというか、甘いというか・・・

雪は降る、あなたは来ない・・・誰の責任?

2010-12-10 21:17:43 | 社会
♫ 雪は降る あなたは来ない・・・
♫ Tombe la neige
Tu ne viendras pas ce soir
Tombe la neige
Et mon coeur s’habille de noir・・・
ご存知、アダモ(Salvatore Adamo)の『雪は降る』です。1963年の曲ですから、もうすぐ半世紀。今だに世界中の(特に日本の)シャンソン・ファンの心に息づく名曲ですね。でも、そんな悠長な気分に浸っていられないのが、今週のフランス人。特にパリ周辺の人々。日本のメディアも伝えているように、久しぶりの大雪に見舞われています。

道路は大渋滞、凍結した道路では事故が多発、鉄道にも大きな影響が。そして飛行場も一時閉鎖され、多くのフライトが遅延やキャンセルに。特に被害甚大だったのが、道路交通。夕方通常通りにオフィスを出たのに、家に着いたのが午前2時とか3時になったり、積雪で動けなくなったクルマの中で一晩過ごすはめになったり、クルマを諦めて徒歩で家路を急いだり。迷惑を被った人が多ければ、当然責任追及も激しくなる。どんな非難が発せられ、誰がどう責任を負うのか・・・9日の『ル・モンド』(電子版)が伝えています。

気象庁はこんなに大雪になるとは予想していなかった。そのため、除雪作業に当たる部署は不意を突かれたようなもので、対応が後手に回ってしまったのだ・・・フィヨン首相は、降雪による大混乱の責任を、適切な予報を出さなかった気象庁に帰そうとした。もちろん、クルマの中や空港で一晩過ごさなければならなかった人たちや、公共交通機関の遅れなどで影響を被った人たちへの気持はわかる、と付け加えることは忘れなかったが。

しかし、気象庁は、火曜日(7日)の午後4時にはパリ周辺のイル・ド・フランス(l’Ile-de-France)地方に降雪注意報を出しており、水曜の夜10時まで継続して出していた。この間が降雪の激しかった時間帯で、しかも気象庁は、水曜の夜、雪がやんでも気温が下がり道路が凍結する恐れが高いので注意が必要だと警報を出していた。このように、気象庁は注意をしっかりと喚起していたのだが、一つだけ問題になるのは、降雪を10センチ程度と予想していたことで、実際には1987年以来となる15センチほどの大雪になってしまった。

木曜の午後になって、ようやく状況は回復してきている。パリ周辺では、4本の国道がまだ通行止めになっており、また10本ほどの主要道路が大渋滞しているが、他の道路では渋滞も解消されている。2,500台ものトラックが主に高速道路上でストップしたまま夜を過ごしたが、次第に動き始めている。雪は水曜の夜にはやんだが、その後、道路は凍結しスケート場と化してしまった。

最も影響が大きかった、パリ南西、イヴリンヌ(Yvelines)県では、2,005人の人々が収容センターで夜を過ごし、職場から帰宅できなかった人々は職場で夜を過ごすことになった。例えば、ルノーの研究所では3,000人がオフィス内で一夜を過ごした。

木曜の朝には、雪山用のブーツを履き、厚手のズボンにダウンジャケット姿という「道路の難破者」たち(les naufragés de la route)が、乗り捨てた自分の車を引き取りにやって来ていた。

労働組合は、こうした混乱は警察や自治体など対応する公務員や装備が削減されてきた結果であり、政府の責任は大きいと非難。それに対し、オルトフー(Brice Hortefeux)内相は、天候が急激に悪化したことが原因だが、ヨーロッパの他の国々での対応を参考に改善するよう専門家チームに命じたと述べている。また、交通担当大臣の報道官は、通常の天候でも渋滞はあるわけで、そこに雪が加わればひどい渋滞になるのは当然だと、あたかも問題がなかったような口ぶり。パリ首都圏の道路交通担当者は、準備が不十分だったのではないかという意見を否定したうえで、除雪作業用の装備は地方ごとの気候に応じてなされており、通常降雪の多くないパリ周辺には、砂を撒きながら除雪する作業車は80台しか備えられていないと説明している・・・

陸の交通も空の交通も、一部を除いて、木曜の夜には通常に戻りつつあるようですが、何しろパリ周辺では23年ぶりの大雪。国や市の対応にも不十分なところがあったのでしょうが、France2のニュース番組によると、スノータイヤの装着率が近隣諸国に比べて非常に低いそうで、市民側の準備不足も混乱に拍車をかけたようです。しかし、困った時には必ず「連帯」精神の発揮されるお国柄。今回も、渋滞で動かなくなってしまった車のドライバーたちに、ホット・チョコレートなど温かい飲み物をサービスする沿線の住民たち、店舗を開放して暖を取れるようにした店、横になれるようマットや布団を用意した寝具店など、ちょっといい話の主人公たちが多くいました。政治が責任転嫁や責任逃れに終始していれば、市民から「ノン」を突き付けられること間違いなしですね。

喉元過ぎればで何ら改善策を講じないのか、たとえ20年とか30年に一度の自然災害であっても、同じ混乱を繰り返さないようにしっかりとした対応策を講じるのか、現政権、そしてフランス政治の姿勢がそこに現れてくるのではないでしょうか。もちろん、同じようなことは、どこの国でも言えることだと思いますが。

韓国の「がり勉」に、フランス、驚く。

2010-12-09 21:18:57 | 社会
7日の『ル・フィガロ』(電子版)が、韓国の教育事情について紹介していました。今やGDP世界13位の経済大国。韓国製品がヨーロッパでも市場を席巻し始めています。まして、EUとFTAを締結したとあっては、韓国の動向にも注目することが必要だ、ということなのでしょう。韓国躍進のカギは教育システムにあるのではないか・・・早速、記事の内容を見てみましょう。

“le pays du Matin-Calme”(静かな朝の国:韓国在住の長いフランス人イダドシの著“Ida au pays du Matin Calme”に因む)、こう言われる韓国の教育制度の特徴は、遅く寝たものほど報われるという過激なもの。OECD加盟国の中でも、韓国の生徒たちは最も勤勉であり、夜12時を過ぎても実に多くの子どもたちが勉学にいそしんでいる。韓国人の大学生自身、かつての日々を振り返り、韓国は勉強が好きで勤勉な生徒には天国だが、そうでない子どもにとっては地獄のようなものだ、と語っている。

授業は朝の8時には始まり、家に帰っても勉強。夕方6時頃に夕食を取っても、また勉強。さらに、夜9時30分ごろには、何と予備校の送迎バスが迎えに来る。そして予備校で12時過ぎまで試験問題に取り組む。中学生ともなると、平均睡眠時間はわずか5時間24分。自由になる時間は一日に1時間もない。あまりにも受験競争が激化したため、ついにソウル市長は生徒たちの夜10時以降の外出を禁止したが、ほとんど守られていない。

こうした勤勉さが、GDP世界13位の経済発展につながり、OECDの実施する学力テスト(Pisa:国際学習到達度調査)でも満足いく結果をもたらしている。Pisaでは、韓国はフランスやアメリカよりもはるかに上位におり、オバマ大統領がアメリカの生徒より年間で1カ月分も多い時間、勉強している韓国のシステムを参考にしてはどうかと述べたほどだ。

生徒たちが10の基本的能力を身につけたかどうかを評価する試験を事前に行っていることが功を奏していると、韓国のPisa担当者は言っている。学業での優秀さが社会的成功への道だと信じる親たちのプレッシャーの下、教育関係者はPisaでの順位を少しでも上げようと執念を燃やしている。

儒教精神が今に残るこの国で、国家はGDPの3%を教育関連費に割り当てているが、家庭が教育に費やす金額は、それを超えてGDPの3.5%に達している。世界に例のない教育への積極的な投資だ。

しかし、専門家の中には、物事には両面があることを指摘する向きもある。韓国の授業では暗記に力点が置かれ、創造性は見向きもされない。授業も教師の一方的な説明で、質問をする生徒もいない。試験はほとんどが択一問題で、論述がない。アメリカへの留学を希望する学生にとっては、ディベートの経験がないことが心配の種になっている。しかも、授業内容への興味・関心度では、韓国の生徒たちはその他大勢の国々と同じレベルにすぎない・・・

韓国の直面している問題、かつて日本でも指摘されたり、議論された事柄ですね。いつか来た道・・・日韓、相互には反発することがあっても、世界の中で見れば、よく似た国同士なのかもしれません。「君は君 我は我なり されど仲良き」、「仲良きことは美しき哉」(武者小路実篤)、といきたいものです。

ところで、『ル・フィガロ』の記事にあったPisa(Program for International Student Assessment:国際学習到達度調査)。OECD(経済協力開発機構:1961年設立、本部=パリ、加盟33カ国)が2000年以降、3年に一度実施している調査で、2009年実施分の結果が7日に公表されました。

今回は加盟国以外も含め、65カ国・地域の15歳、約47万人が参加しました。読解力、数学的リテラシー、科学的リテラシーの3分野が対象ですが、それぞれの上位10カ国を毎日新聞(電子版)が紹介していましたので、下記に転載します。左端の数字が、今回の順位です。

 <読解力>
 09年調査             00年 03年 06年
(1)上海※        556点  --  --  --
(2)韓国         539点  6位  2位  1位
(3)フィンランド     536点  1位  1位  2位
(4)香港※        533点  --  10位 3位
(5)シンガポール※    526点  --  --  --
(6)カナダ        524点  2位  3位  4位
(7)ニュージーランド   521点  3位  6位  5位
(8)日本         520点  8位 14位 15位
(9)オーストラリア    515点  4位  4位  7位
(10)オランダ      508点  --  9位 11位
 
<数学的リテラシー>
(1)上海※        600点  --  --  --
(2)シンガポール※    562点  --  --  --
(3)香港※        555点  --  1位  3位
(4)韓国         546点  2位  3位  4位
(5)台湾※        543点  --  --  1位
(6)フィンランド     541点  4位  2位  2位
(7)リヒテンシュタイン※ 536点 14位  5位  9位
(8)スイス        534点  7位 10位  6位
(9)日本         529点  1位  6位 10位
(10)カナダ       527点  6位  7位  7位
 
<科学的リテラシー>
(1)上海※        575点  --  --  --
(2)フィンランド     554点  3位  1位  1位
(3)香港※        549点  --  3位  2位
(4)シンガポール※    542点  --  --  --
(5)日本         539点  2位  2位  6位
(6)韓国         538点  1位  4位 11位
(7)ニュージーランド   532点  6位 10位  7位
(8)カナダ        529点  5位 11位  3位
(9)エストニア      528点  --  --  5位
(10)オーストラリア   527点  7位  6位  8位
注)--は不参加など。※は非OECD加盟国・地域
(12月7日:毎日)

初参加の上海が全てでトップ。地域格差が非常に大きい国ですから、中国全土で参加すればこうはいかないのでしょうが、沿海部だけでも多くの人口を抱え、巨大な市場になっています。人材市場という意味でも、看過するわけにはいきません。上位には、上海以外にも、香港、シンガポール、台湾、韓国とアジアの国々が並んでいます。沸騰するアジア。日本は、3分野とも前回よりは少し改善しましたが、それでもまだアジアの国々の後塵を拝しています。2000年の成績は素晴らしかったのですが・・・

でも欧米の国々よりは上位じゃないか、という見方もあるかと思いますが、欧米は明確な階級社会。優秀な学生はとびきり優秀で、そうでない学生は、学力に関してはビックリするくらいおぼつかない。しかし、一握りであれ、とびきり優秀な人たちが国や企業を運営していくわけで、安心なわけです。その点、日本は均質社会だけに、平均点が下がるということは、全員のレベルが下がるということで、国全体としての問題は深刻です。

上海の3冠を見て、あるテレビ・キャスターが、一つくらい不得手なものがあった方が自然なんですがね~、と言っていました。日本では、そうです。がり勉なんかしたってしようがない、のんびり、ゆっくり、好きなことを探せばいい。得意なところを一つ伸ばせば十分じゃないか。それより、友達をたくさん作って、宝は仲間です。苛められないように、空気を読んで、出過ぎないように。まったりと、癒されて過ごすことが大切だ・・・高度成長以降、こうした生き方がもてはやされてきました。

しかし、国際競争の真っ只中に放り出された日本企業は、そんなふうには思っていないようです。日本の学生より、アジアを中心とした海外からの留学生の方が優秀だ。積極的だし、勉強もできる。言葉だって3,4ヶ国語もしゃべれる。日本人学生の採用を減らしてでも留学生を採用したい。海外法人で採用した社員の中にも優秀な人物が多い。将来は、海外採用組も含めて、外国人を本社の経営陣に積極的に登用していきたい・・・

ただでさえ就職氷河期と言われているのに、日本企業への就職においてすら外国人留学生との競争が待っており、運良く採用されたとしても、海外現地法人採用組も含めての出世競争が待っている。アジア諸国からの留学生や現地法人採用組は、韓国で見られるような、過酷な受験勉強をある程度勝ち抜いてきた人たちです。パワーがあります。日本人は、日本の企業の中ですら、生き残っていけなくなるのではないでしょうか。

一般社会で推奨される生き方と、企業の求める人物像が乖離してしまっているような気がします。そのギャップを埋める役割を、社会の公器とも言われるマスコミに期待したいのですが、相変わらず、のんびり、まったりを是としているようで、期待してはいけないのかもしれません。

極東の中規模国として、目立たずひっそりと、そこそこ幸せに生きていこうという国民的コンセンサスができているなら、それはそれで問題ないと思うのですが、日本企業は、もっと大きなマーケット・シェアを! 二番ではなく、一番に! と発破をかけています。政治も、産業界を後押しして景気回復を、と言っています。外交面でも、他国になめられるべきではない、という声が大きくなってきています。日本はどこへ向かっているのでしょうか。目指すべき国家像は、明確なのでしょうか。

ただ、教育の現場が危機感を持って改革に取り組み始めているようで、その点が救いです。明確な国家目標を持って、生き生きとした社会へ。頑張れ、日本。もう一度、日出る国(le soleil levant)へ。陽はまた昇る時代へ。

サルコジの「甘い生活」は、1年半後か、6年半後か。

2010-12-08 21:12:37 | 政治
イタリアの巨匠、フェデリコ・フェリーニの代表作『甘い生活』。1960年制作のこの映画にはローマの旧所・名跡がふんだんに取り入れられ、まるでローマを旅行したような気分にさせてくれますが、演じているのはイタリア人だけではなく、スウェーデン人やフランス人も。この映画の主要登場人物(イタリア人のマルチェロ・マストロヤンニとフランス人のアヌーク・エーメ)の出身国を男女逆にしたようなフランス大統領夫婦(フランス人のニコラとイタリア生まれのカーラ)も、実は「甘い生活」を夢見ている・・・11月30日の『ル・モンド』(電子版)が伝えています。

11月30日、サルコジ大統領は、与党UMP(国民運動連合)の主要メンバーの一人、ヨーロッパ問題担当大臣のローラン・ヴォキエ(Laurent Wauquiez)のグループに属する30名ほどの下院議員・上院議員を大統領府に招いて懇談した。

気心の知れた仲間を前に、サルコジ大統領は、二期の任期を全うするつもりだが、そこまでだ。その後は「甘い生活」さ、と述べた。カーラ・ブルーニ=サルコジがイタリア人(国籍はフランスに変更済み)だけに、イタリア語で“la dolce vita”と名画のタイトルを思い出させる言葉を使い、大統領引退後は別の暮らしを考えなくてはいけない、と続けた。この発言が曖昧に伝わるや、サルコジ大統領は2012年の大統領選に立候補せず、引退して“la dolce vita”を送ることにしたらしいという噂になって、一人歩きを始めた。

そこで、大統領府は、あわてて、大統領は二期以上は立候補しないと言ったに過ぎないと、火消しに躍起になった(言葉の一部だけを歪曲して騒ぎたがる政界雀がいるのは、日本だけではないようです)。

2008年の憲法改正に伴い(状況の変化、時代の要請により、フランスでは憲法も修正されます)、大統領の任期(5年)は連続二期までとなっている。サルコジ大統領は、エリゼ宮(大統領府)の後には別の人生が待っている。しかも、我が党には優秀な人材が豊富におり、後継者が誰になろうとその就任を妨げるようなことはしたくない。2017年になれば、そのとき最もふさわしい人物が、選挙で勝利し、自分の後を継ぐことになるだろう。こう述べるとともに、後継候補をアトランダムに列挙した・・・与党・UMP幹事長のジャン・フランソワ・コペ(Jean-François Copé)、農業大臣のブリュノ・ルメール(Bruno Le Maire)、政府報道官のフランソワ・バロワン(François Baroin)、ヨーロッパ問題担当大臣のローラン・ヴォキエ(Laurent Wauquiez)、労働大臣のグザヴィエ・ベルトラン(Xavier Bertrand)。

サルコジ大統領自身は、2012年の再選へ向けて、次第に立候補の意思を表に出し始めている。30日の懇談会に出席した一人は、正式には来年の秋に態度を表明すると言っているが、すでに次期大統領選挙の立派な候補者だ、と嬉しそうに語っている・・・

ということで、たぶん保守陣営からはサルコジ大統領が二期目を目指して立候補することになるのでしょうが、現状では、その当選は楽観視できません。支持率が30%を切ったとか言われていました。では、最新の世論調査では・・・

6日の『ル・モンド』(電子版)が、Ipsos(調査会社)による支持率(人気度)調査の結果を伝えています。

サルコジ大統領の支持率は前月より5%改善されたが、これは内閣改造によって国民の期待が高まった結果といえる。しかし他の政治家も対前月でみな支持率を上げており、調査対象者の寛大さが出ているかもしれない。

その支持率を下記に、高い順に並べてみます。

・ドミニク・ストロス=カン(社会党:IMF専務理事)=60%(対前月+10)
・ベルトラン・ドラノエ(社会党:パリ市長)=53%(+2)
・ラマ・ヤド(UMP:前スポーツ担当大臣)=53%(±0)
・クリスティーヌ・ラガルド(UMP:経済・財政・産業大臣)=50%(+5)
・フランソワ・フィヨン(UMP:首相)=48%(+5)
・ファデラ・アマラ(左派:前都市対策担当大臣)=47%(+8)
・マルティーヌ・オブリー(社会党:党第一書記)=44%(+1)
・アラン・ジュペ(UMP:国防大臣・元首相)=42%(+4)
・フランソワ・オランド(社会党:前党第一書記)=41%(+3)
・グザヴィエ・ベルトラン(UMP:労働大臣)=36%(+6)
・ニコラ・サルコジ(UMP:大統領)=35%(+5)
・セゴレーヌ・ロワイヤル(社会党:2007年大統領選社会党候補)=31%(-1)
・ドミニク・ドヴィルパン(中道右派:前首相)=30%(-6)
・マリーヌ・ルペン(極右:国民戦線副党首)=27%(過去最高の支持率)

政治家としての実績評価および期待値を表した数字なのでしょうが、国民の過半数が支持する政治家が4人もいます。政治家への期待、信頼が高いようですね。ただし上位2名は社会党。サルコジ大統領の再選、容易でないのはこの結果からも見て取れます。

2017年はさらに先のこと。サルコジ大統領が後継候補として名を上げた政治家は、このリストにはベルトラン労働大臣しか入っていませんが、時間の経過とともに、頭角を現し、風格を備えた政治家も出てくるでしょう。そして新しい大統領像を実現してくれるかもしれません。何しろ、国民の過半数から政治家として支持される人物が、それなりにいるわけですから。政治不信というか、諦観が広がっている国、「出でよ、平成の坂本龍馬」などというキャッチフレーズが必要な国とはちょっと違うようです。羨ましい・・・

受動喫煙で、年間60万人が死亡! 喫煙は殺人行為か?

2010-12-07 21:14:03 | 社会
6日、日本のニュース番組が、受動喫煙による死者が日本で年間6,800人に上ると紹介していました。職場での受動喫煙の影響が大きいそうで、働く場所でいかに受動喫煙を減らす事ができるのか。禁煙にしたり、分煙にしたり。しかし、企業によってはそのようなスペースも予算もないというところも少なくありません。国によるアイディア紹介、予算補助などが必要だということでしたが、日本だけで6,800人という受動喫煙による死亡者、世界ではどのくらいになるのでしょうか。日本の人口は世界人口の約60分の1。6,800X60で40万8,000人となりますが、実際にはさらに多い・・・などと面倒な講釈を述べる必要はありませんね。タイトルに出ています、60万人!

この60万人という数字は、1823年に創刊され、世界で最も権威ある医学雑誌のひとつと言われる“The Lancet”(『ザ・ランセット』)が公表したもので、実際に調査に携わり、論文にまとめたのは、スウェーデンのストックホルムに拠点を置くカロリンスカ研究所(l’Institut Karolinska:ノーベル生理学医学賞の選考委員会はここにあります)と世界保健機構(WHO:仏語ではOMS)。その概要を11月26日の『ル・モンド』(電子版)が伝えていました。

世界中の死亡者100人に1人が受動喫煙の影響によって亡くなっている。その数60万人。その中には、16万8,000人の子どもたちが含まれている。子どもたちは、受動喫煙の素、つまり喫煙者から逃れることができない。なぜなら、家族に喫煙者がいれば、子どもたちは家庭で否応なく受動喫煙を強いられてしまうからだ(日本では、子どもの健康を考えてなのか、壁紙とかに匂いが移ってしまうのを嫌がる奥さんに言われてか、ベランダでタバコを吸うホタル族が多いですね。その反動か、公共の場での喫煙は、相変わらずですね)。

能動喫煙、つまり自らの喫煙が原因による死者は年間510万人。受動喫煙を加えると、570万人が毎年タバコに煙のよって命を落としていることになる。

受動喫煙による死亡の直接的死因は、冠状動脈疾患によるものが37万9,000人、気管支疾患によるのが16万5,000人、喘息が3万6,900人、肺癌は2万1,400人。合計60万2,300人が調査対象となった2004年に受動喫煙で亡くなっている。

受動喫煙による死亡の28%を占める子どもの死者、その3分の2がアフリカと南アジアで起きている。これらの国々では、伝染病と受動喫煙の相乗効果で、死亡者数が多くなっていると見られる。

また受動喫煙による死亡者の家庭環境を世帯収入で見てみると、子どもの場合は低所得から中間所得層にかけてが多いのに対し、大人の場合は各所得層にまたがって広く分布している。例えばヨーロッパの高所得者層では、子どもの受動喫煙による死者はわずか7人だが、大人では3万5,388人に上る。それが調査対象となったアフリカの国々では、子どもの4万3,375人に対し、大人は9,514人(衛生状況、医療制度などが整備され、所得が上がれば、発展途上国での子どもの受動喫煙による死亡は減少するということなのでしょうね。それでも大人の受動喫煙は減らない。対策が急がれるわけです)。

公共の場での喫煙が全面禁止されている国に住む人口は、まだまだ少ない。カロリンスカ研究所と世界保健機構は、喫煙との戦いに関するWHOの枠組み協定の実施を強化するよう求めている。具体的には、タバコへの課税率のアップ、タバコのパッケージからブランド名を削除すること、同じくパッケージに健康に関する注意書きを明示することなどだ・・・

ということで、喫煙なのですが、2010年における日本の喫煙率は、23.9%。男女別では、男36.6%、女12.1%だそうです。実感と比べて、多いですか、それとも少ないですか。さまざまなデータがあるのですが、2002年には33.1%あったそうですから、わずか8年で10ポイントも減ったことになります。増税によるタバコ小売価格の上昇、健康志向も影響しているのでしょう。若い女性の喫煙率はどちらかというと上昇傾向にありますが、男性の減少幅が大きいようです。

2007年のOECD加盟国の男女別喫煙率では、日本の男性は41.3%で4位ですが、女性は12.4%で28位。女子たるもの、タバコなど吸うべからず、でしょうか。日本以上にこうした傾向が強いのが、韓国。男性は46.6%で2位ですが、女性はわずか4.5%で30位と調査対象国の中で最も少なくなっています。男女の差がさまざまな分野で残っている日本。そして日本以上に色濃く残っているように見える韓国。そんなことが喫煙率の男女差にも出ているのかもしれません。こうした男女差、もしかすると儒教の影響かもしれないと思います。中国駐在の経験から、儒教精神は本家・中国ではほぼ死滅してしまっているのではないかと思えるのですが、一方、日本ではまだ生き残っている。そして、日本以上にしっかり保たれているのが韓国だとも言われています。しかし、そんなふうに見えるのは、日本人が儒教を正しく理解していないからだ、と言う日本在住の中国人学者もいますが・・・

閑話休題。喫煙は、受動喫煙を通して、他人を病魔に引き渡す一助にもなる。喫煙者にはぜひ、吸い込んだタバコの煙をすべて自分の肺で吸収してほしいものです。そうできるようなタバコを、タバコ・メーカーは開発できないものでしょうか。そうできれば、非喫煙者からの文句も減るでしょうから。