ふりかえれば、フランス。

かつて住んでいたフランス。日本とは似ても似つかぬ国ですが、この国を鏡に日本を見ると、あら不思議、いろいろと見えてきます。

授業は週4日か、4.5日か、それとも5日か・・・フランスの小学校。

2010-12-15 20:19:55 | 社会
2005年にフランスに住み始めて、すぐ気付いたことのひとつが、水曜日、朝から子供たちの遊ぶ元気な声が建物の中庭でこだましていること。何と、フランスの小学校は、水曜日、休みでした。その分、土曜日は登校。もちろん、午前中だけですが。

そしてもう一つ気付いたことは、夕方4時半ころ、多くの大人たちが通りのひとところに人待ち顔でたむろしていること。そこは他と変わらない建物なのですが、よく見ると、学校の名を記したプレートが掲示されています。日本のように、校庭があり、校門があってというのではないのですが、学校は学校。その出口に集まっているのは・・・実は子どもを迎えに来ている父兄や出迎えを仕事にしている人たちです。学校を一歩でも出たら、責任は学校ではなく父兄が負うもの、ということなのでしょう。父兄が送り迎えしています。朝は送って行くものの、仕事の都合で迎えに行けない人は、ベビーシッターのように人を雇って迎えに行ってもらっています。

所変われば、品変わるで、教育制度も大きく異なるものだと、実感したものでした。

その週4.5日授業(月・火・木・金の終日と土の午前中)も2年前に変更になり、週4日授業(月・火・木・金)になっています。小学校が、週休3日です! しかしこの新制度、わずか2年にして修正を余儀なくされそうです。どこが問題なのでしょうか・・・8日の『ル・モンド』(電子版)が伝えています。

小学校の週4日授業は、2年前、時のダルコス(Xavier Darcos)国民教育大臣が実施に踏み切ったものだが、反対意見が次から次へと出されている。まずは、教職員組合。続いて、社会党の国会議員。去年の9月には、教育監察官からの非難。そして、今月8日、下院の調査委員会がまとめた報告書が、子どもへの負担を軽減させるためにも週4日授業は改められるべきだと警鐘を鳴らしている。

4日半でやっていた授業内容を4日に凝縮すれば、子どもたちへの負担が大きくなり過ぎてしまうのは当然だ。時間が身体へ及ぼす影響を研究している専門家(les chronobiologistes)からも、とんでもないことだという意見が出されている。

下院の報告書は、週4日授業は改めるべきであり、一日の授業時間に上限を設けるべきだと述べているが、しかし4.5日授業に戻すべきなのか、それとも5日授業にするのか、その場合も水曜日に授業をするのか、以前のように土曜にするのかは、明記していない。それぞれに賛同者がいて、統一見解には至らなかったようだ。

報告書は続けて、子どもの年齢により一日の授業時間を変更すべきだと述べている。入学したての子どもも11歳児も一日に同じ時間数の授業を受けるのは異常なことだ。また中学校や高校についても、年間の総時間数を決めておけば、週の時間数などは学校単位で調整できるようにすべきだと言及。報告書の提案する改革の目的は、教育システムを多様化することにあるようだ。

報告書はまた、休みについても、7週授業・2週休み、というサイクルを提唱。そのために、万聖節(Toussaint)の休みを長くし、3学期は休みを再調節することを提案している。いくつかの休みが長くなる分、夏休みは当然2~3週短くなる。しかし、それでは観光業に影響が出るのではないかという指摘が出てくるだろう。それについては、全国を二つのゾーンに分けるゾーン制の夏休みを導入することにより、影響を軽減できると言っている・・・

ゾーン制による休暇・・・日本でも社会実験をするとかしないとか、言われていましたね。世界的流行なのでしょうか。

ところで、週4.5日とか週4日では、フランスの子どもたちの受ける授業時間数は非常に少ないのではないかと思ったのですが、調べてみると、あにはからんや、これが長いんですね。ビックリです。2003年のデータしか見つからなかったのですが、小学校6年間の総授業時間数は・・・

・イタリア:5,800時間
・インド:5,800時間
・フランス:5,000時間
・カナダ:5,000時間
・香港:4,900時間
・ドイツ:4,200時間
・シンガポール:4,200時間
・イギリス:4,000時間
・フィンランド:3,900時間
・日本:3,900時間
・台湾:3,900時間
・韓国:3,800時間
・中国:3,500時間

国によっては、授業と授業の間の休憩時間を含んでいたりいなかったり、あるいは州により時間数が異なるなど、若干の誤差はあるようですが、全体的傾向は上記で見てとれるかと思います。長いヴァカンスでも有名なイタリアやフランスの授業時間が長い・・・にわかには信じがたい数字ですが、間違いではないようです。低学年でも一日の授業時間が長い結果、こういう総時間数になっているのだと思います。

これだけ長時間授業を受けても、PISA(OECDが3年に一度実施している学習到達度調査)の結果とは関連性がほとんどないようですから、学力に好影響を及ぼしてはいないようです。低学年の子どもたちにとっては、一日の授業が多いのは負担というか、苦痛になっているのかもしれませんね。

片や長時間学習、こなたゆとり教育・・・それぞれの国で未だに試行錯誤。それだけ教育は難しいということなのでしょうね。しかし、どんなに難しくても、より良い教育をつねに希求していくことが大切なのではないでしょうか。「人が財産」・・・将来を担う人材を育てることこそ、教育なのですから。