2018年と2022年のFIFAワールドカップの開催国が2日(日本時間3日)、決定されました。ご存知のように、2018年はロシア、2022年の開催はカタールに。日本も当初は2018年と2022年、最終的には2022年のホスト国に立候補していた当事国ですから、結果は多くのメディアが伝えています。
当事国ではないものの、サッカー・ファンの多いフランスは結果をどう伝えているのでしょうか。2日の『ル・モンド』(電子版)によると・・・
まずは概略を紹介する記事。2日、チューリッヒにおけるFIFA理事会で、22人の理事による無記名投票により2大会の開催国が決まった。18年のロシアは2回目の投票で簡単に決まったが、22年のカタールは4回目、アメリカとの決戦投票にもつれ込む接戦となった。
FIFAは両大会とも初めてホスト国となる国を選んだが、両国ともに政府主導のもと、各種のスポーツ・イベントに力を入れている。ロシアは、2014年のソチ・オリンピックを誘致した時と同じように、プーチン首相がかなり深く関わった。一方のカタールは、リオデジャネイロに敗れはしたものの2016年のオリンピックに立候補するなど、国際的な知名度アップのために潤沢なオイル・マネーを注ぎ込んでいる。今回の提案も実現すれば750億ユーロ(約8兆2,500億円)以上の予算規模となっている。
勝者の陰には敗者がいる。2018年大会では、イングランド、ポルトガル・スペイン(共催)、ベルギー・オランダ(共催)、2022年大会はアメリカ、オーストラリア、韓国、日本がそれぞれ涙をのんだ。韓国と日本は開催したばかり(2002年)であり、ベルギー・オランダは提案が十分なものではなく、事前の予想では優勢と見られていたイングランドとアメリカは何が欠けていたのか自問しなくてはならない。
今回、FIFAは初めて2大会の開催国を同時に決めたが、さまざまな疑惑に囲まれての投票となった。サンデー・タイムス(Sunday Times)によるおとり捜査によって、二人の理事(一人は副会長)が投票と引き換えに賄賂を受け取ろうとしたことが発覚。それ以降、BBCなど多くのメディアによってその金まみれの体質が追及されてきた。
サンデー・タイムズもBBCもイギリスのメディア。FIFAの暗部をえぐろうとするこうした報道がイングランドへの投票を阻害しなかったとは言い切れない。その提案の素晴らしさにもかかわらず、イングランドは1回目の投票でわずか2票しか得られず、敗退。まさに屈辱である・・・
そうなんですね、サッカーの母国、サッカー発祥の地・イングランドが、1966年大会以来52年ぶり2回目の開催へ満を持して立候補。早くから有力視され、最終プレゼンテーションにもキャメロン首相、ウィリアム王子、ベッカムなど錚々たる顔ぶれが並びました。それでも、自国出身の理事を含めて2票しか得られなかった。イギリス・メディアによるFIFAの金権体質追求が影響しなかったとは決して言えないと思います。
逆に言えば、ここまで露骨に自分たちの既得権益を守ろうとするFIFAの理事たち! やはり、金まみれ体質は事実だったのだということを自ら証明しているようなものなのではないでしょうか。表面上は、サッカーのさらなる発展のために、旧ソ連・東欧、中近東へ新たにワールドカップの扉を開いた、ということなのでしょうが、実際には、豊富なオイル・マネー、天然ガス・マネーを活用した2カ国に決定。その資金が単に開催費用としてだけ使われ、投票権を持つFIFA理事たちへの個人的アプローチには使われなかったとは断言できないのではないでしょうか。以前ご紹介した『黒い輪―権力・金・クスリ オリンピックの内幕』という本でも、IOC、国際陸連と並んでFIFAもその金権体質が批判されていました。“first come, first served”ではなく、“more paid, first served”・・・
もう一つの記事は、カタールにスポットを当てています。ペルシャ湾岸のこの小さな国は、最も特徴ある提案をした。自然環境の不利を解決する野心的なものだった。
実際、カタールはサッカーの強国ではないし、国際的なスポーツ・イベントも、2006年のアジア大会程度しか開催した経験がない。しかも、夏には45度を超えるほどの酷暑になる。この暑さの中で、どうやってサッカーをやるのか・・・カタールは、太陽光発電による電気で、スタジアム全体、そしてその周辺も含めて快適な環境を作り出すと確約。またスポーツ・イベントの実績づくりとしては、2011年にサッカーのアジア・カップを開催することになっている。
4~5万人収容するスタジアムを12造ることになるが、大会終了後には解体して競技施設の不足する国々へ移設できる構造にするという。また、狭い国土ゆえ、会場から会場への移動は1時間以内で済むという利点もある。
競技場だけでなく、交通機関や宿泊施設の建設にも巨額な予算が必要になるが、カタールの場合、全く心配はない。潤沢なオイル・マネーがあり、目が眩むようなことがいとも簡単に行える国なのだ。スポーツにおいても自らのステイタスを上げるため、その豊富な資金を惜しみなく使っている。オリンピック誘致の失敗を繰り返さないために、ワールドカップ誘致では招致大使にあのジダン(Zinedine Zidane)を起用するなど周到な準備をした。もちろん、ジダンには巨額な報酬が払われることになる。100万ユーロ(約1億1,000万円)と言われている・・・
実際、ジダンに支払われる成功報酬は、上記の10倍という噂があります。ジダンは両親がアルジェリア出身のイスラム教徒。その縁からカタールの招致大使になったのでしょうが、見事成功。資金と有名人がそろえば、怖いものなし、でしょうか。
一方、日本はどうして立候補したのでしょうか。初めは2018年と2022年両方に立候補していました。韓国との共催とはいえ、2002年に開催したばかり。なかなかそう簡単に順番が回ってこないことは容易に分かりそうなものなのに、どうして16年後に再びと急いだのでしょうか・・・自分の生きているうちに、どうしてももう一度、日本で開催されるワールドカップを見たい、それも次は共催ではなく単独開催で。そんな声が蹴球協会の上の方から聞こえてきたのでしょうか。それとも単純にアジアの順番になりそうだということで、立候補しただけなのでしょうか。
日本の立候補を聞いて、韓国もすぐに手を上げました。こちらはあわよくば開催国に、悪くても日本に単独開催で先んじられることを防ごう、ということだったのではないかと思います。そういえば、フランス政界でも、ド・ヴィルパン氏が自分の党を立ち上げ、サルコジ批判を強めているのは、12年の大統領選挙に立候補し、あわよくば当選を、最低でもサルコジ大統領の再選を妨げようとしているからだとも言われています。似た状況だったのかもしれないですね。
テレビ視聴者数ではオリンピックを超えるという、スポーツ界最大のイベント、FIFAワールドカップ。それだけに、その舞台裏ではさまざまなドラマが繰り広げられているようです。
当事国ではないものの、サッカー・ファンの多いフランスは結果をどう伝えているのでしょうか。2日の『ル・モンド』(電子版)によると・・・
まずは概略を紹介する記事。2日、チューリッヒにおけるFIFA理事会で、22人の理事による無記名投票により2大会の開催国が決まった。18年のロシアは2回目の投票で簡単に決まったが、22年のカタールは4回目、アメリカとの決戦投票にもつれ込む接戦となった。
FIFAは両大会とも初めてホスト国となる国を選んだが、両国ともに政府主導のもと、各種のスポーツ・イベントに力を入れている。ロシアは、2014年のソチ・オリンピックを誘致した時と同じように、プーチン首相がかなり深く関わった。一方のカタールは、リオデジャネイロに敗れはしたものの2016年のオリンピックに立候補するなど、国際的な知名度アップのために潤沢なオイル・マネーを注ぎ込んでいる。今回の提案も実現すれば750億ユーロ(約8兆2,500億円)以上の予算規模となっている。
勝者の陰には敗者がいる。2018年大会では、イングランド、ポルトガル・スペイン(共催)、ベルギー・オランダ(共催)、2022年大会はアメリカ、オーストラリア、韓国、日本がそれぞれ涙をのんだ。韓国と日本は開催したばかり(2002年)であり、ベルギー・オランダは提案が十分なものではなく、事前の予想では優勢と見られていたイングランドとアメリカは何が欠けていたのか自問しなくてはならない。
今回、FIFAは初めて2大会の開催国を同時に決めたが、さまざまな疑惑に囲まれての投票となった。サンデー・タイムス(Sunday Times)によるおとり捜査によって、二人の理事(一人は副会長)が投票と引き換えに賄賂を受け取ろうとしたことが発覚。それ以降、BBCなど多くのメディアによってその金まみれの体質が追及されてきた。
サンデー・タイムズもBBCもイギリスのメディア。FIFAの暗部をえぐろうとするこうした報道がイングランドへの投票を阻害しなかったとは言い切れない。その提案の素晴らしさにもかかわらず、イングランドは1回目の投票でわずか2票しか得られず、敗退。まさに屈辱である・・・
そうなんですね、サッカーの母国、サッカー発祥の地・イングランドが、1966年大会以来52年ぶり2回目の開催へ満を持して立候補。早くから有力視され、最終プレゼンテーションにもキャメロン首相、ウィリアム王子、ベッカムなど錚々たる顔ぶれが並びました。それでも、自国出身の理事を含めて2票しか得られなかった。イギリス・メディアによるFIFAの金権体質追求が影響しなかったとは決して言えないと思います。
逆に言えば、ここまで露骨に自分たちの既得権益を守ろうとするFIFAの理事たち! やはり、金まみれ体質は事実だったのだということを自ら証明しているようなものなのではないでしょうか。表面上は、サッカーのさらなる発展のために、旧ソ連・東欧、中近東へ新たにワールドカップの扉を開いた、ということなのでしょうが、実際には、豊富なオイル・マネー、天然ガス・マネーを活用した2カ国に決定。その資金が単に開催費用としてだけ使われ、投票権を持つFIFA理事たちへの個人的アプローチには使われなかったとは断言できないのではないでしょうか。以前ご紹介した『黒い輪―権力・金・クスリ オリンピックの内幕』という本でも、IOC、国際陸連と並んでFIFAもその金権体質が批判されていました。“first come, first served”ではなく、“more paid, first served”・・・
もう一つの記事は、カタールにスポットを当てています。ペルシャ湾岸のこの小さな国は、最も特徴ある提案をした。自然環境の不利を解決する野心的なものだった。
実際、カタールはサッカーの強国ではないし、国際的なスポーツ・イベントも、2006年のアジア大会程度しか開催した経験がない。しかも、夏には45度を超えるほどの酷暑になる。この暑さの中で、どうやってサッカーをやるのか・・・カタールは、太陽光発電による電気で、スタジアム全体、そしてその周辺も含めて快適な環境を作り出すと確約。またスポーツ・イベントの実績づくりとしては、2011年にサッカーのアジア・カップを開催することになっている。
4~5万人収容するスタジアムを12造ることになるが、大会終了後には解体して競技施設の不足する国々へ移設できる構造にするという。また、狭い国土ゆえ、会場から会場への移動は1時間以内で済むという利点もある。
競技場だけでなく、交通機関や宿泊施設の建設にも巨額な予算が必要になるが、カタールの場合、全く心配はない。潤沢なオイル・マネーがあり、目が眩むようなことがいとも簡単に行える国なのだ。スポーツにおいても自らのステイタスを上げるため、その豊富な資金を惜しみなく使っている。オリンピック誘致の失敗を繰り返さないために、ワールドカップ誘致では招致大使にあのジダン(Zinedine Zidane)を起用するなど周到な準備をした。もちろん、ジダンには巨額な報酬が払われることになる。100万ユーロ(約1億1,000万円)と言われている・・・
実際、ジダンに支払われる成功報酬は、上記の10倍という噂があります。ジダンは両親がアルジェリア出身のイスラム教徒。その縁からカタールの招致大使になったのでしょうが、見事成功。資金と有名人がそろえば、怖いものなし、でしょうか。
一方、日本はどうして立候補したのでしょうか。初めは2018年と2022年両方に立候補していました。韓国との共催とはいえ、2002年に開催したばかり。なかなかそう簡単に順番が回ってこないことは容易に分かりそうなものなのに、どうして16年後に再びと急いだのでしょうか・・・自分の生きているうちに、どうしてももう一度、日本で開催されるワールドカップを見たい、それも次は共催ではなく単独開催で。そんな声が蹴球協会の上の方から聞こえてきたのでしょうか。それとも単純にアジアの順番になりそうだということで、立候補しただけなのでしょうか。
日本の立候補を聞いて、韓国もすぐに手を上げました。こちらはあわよくば開催国に、悪くても日本に単独開催で先んじられることを防ごう、ということだったのではないかと思います。そういえば、フランス政界でも、ド・ヴィルパン氏が自分の党を立ち上げ、サルコジ批判を強めているのは、12年の大統領選挙に立候補し、あわよくば当選を、最低でもサルコジ大統領の再選を妨げようとしているからだとも言われています。似た状況だったのかもしれないですね。
テレビ視聴者数ではオリンピックを超えるという、スポーツ界最大のイベント、FIFAワールドカップ。それだけに、その舞台裏ではさまざまなドラマが繰り広げられているようです。