ふりかえれば、フランス。

かつて住んでいたフランス。日本とは似ても似つかぬ国ですが、この国を鏡に日本を見ると、あら不思議、いろいろと見えてきます。

閣僚たちの冬休み・・・フランスの場合。

2010-12-27 21:32:23 | 政治
日本では、国会が閉会になっても、政治とカネだ、連立組み換えだ、大連立だ、といろいろな動きがありますが、まあ、日本はクリスマス休暇というより、正月休暇ですから、今の時期はまださまざまな動きが起こりえるのでしょうね。さすがに、年末年始は静かになるのでしょうが。

一方フランスはクリスマス休暇ですから、先週から今週は政界もお休み。では、その休暇期間、政治家たちはどこへ行くのでしょうか。もちろん選挙区へ戻って、有権者の声を聞くというか、親睦を深めるという議員も多いのでしょうが、大臣に任命されると議員を辞すことになるフランスですから、選挙区を直接は持たない大臣たちはどこでクリスマス休暇を過ごすのでしょうか。

大臣たちの冬休み・・・フランスのメディアも興味を持つようで、23日の『ル・フィガロ』(電子版)が伝えていました。

うちの大臣は、太陽を求めて外国へ行くことになっている。でもそれは公にしたくないようだ。こう打ち明けてくれた関係者がいるが、その人物が仕える大臣は、ヴァカンスで遠方へ出かけることをいちいち吹聴しない方が良いことをよくわきまえているようだ。ある閣僚経験者も同意見で、ヴァカンスで遠い外国まで出かけるということは、金持ちというイメージを与えるし、クリスマスを路上で過ごさなければならない人たちのことなど眼中にない政治家だと見做されてしまう危険性がある。2年前、ヴァカンスでヨルダンへ行くと記者たちに語ったところ、同僚たちからそのようなことは公言すべきでなかったと忠告されたものだ。

しかし、実際には、幾人かの閣僚たちがこのクリスマス休暇に、太陽を求めて外国に行くようだ。フィヨン首相は、クリスマスは地元のサルト県(la Sarthe:県庁所在地はル・マン)で過ごすが、その後はミッテラン元大統領がよく行っていたエジプトへ行くことになっている。しかし、個人的に大好きで、以前その滞在が話題になったイタリア・トスカーナ地方でない限り、首相は行き先を公言しないだろうと言われている。

エリック・ベソン(Eric Besson)産業担当大臣の周辺も、担当大臣は多くの書類と仕事を携えてすでにヴァカンスに出発したが、来週の水曜日(29日)にはもうパリに戻ってくることになっていると述べている。ただし、行き先は不明。関係者によると、ベソン担当大臣は、プライヴェートを侵害されたくない、特に若い妻と一緒のところを隠し撮りされるのは願い下げだというわけで、行き先は一切公にしていない。

幾人かの閣僚たちは遠く外国まで出かけるようだが、多数派は大統領の言いつけを守って、フランス国内に残る。サルコジ大統領は、休暇を前にした最後の閣議でいつも必ず次のように述べているからだ・・・ヴァカンスだと言っても、あまり遠くに行かないように。何か緊急事態が発生した場合、速やかにパリに戻れるようにしておくことが大切だ。くれぐれも遅れないように。

サルコジ大統領自身は、この冬、モロッコで数日のクリスマス休暇を過ごすそうだが、大晦日恒例のテレビ演説の録画に間に合うように戻ってくるそうだ(毎年12月31日、夜8時からテレビを通して大統領のメッセージ“les voeux de fin d’année”が放送されます)。

他の閣僚で、行き先が分かっているのは・・・バロワン予算相は数日を南フランスで過ごすことになっており、同じく南フランスで過ごすラガルド経済相とどこかですれ違うことになるかもしれない。ル・メール農相はバスク地方、ベルトラン労相は地元である北部・ピカルディ地方、ヴォキエ欧州問題担当大臣は中央部、オート・ロワール県で過ごした後、家族でスキーへ出かけることになっている。ルルーシュ貿易担当大臣は、数日ノルマンディ地方で過ごすが、今後5年間は休暇なしで良い。大臣を退任した後に、休暇はいくらでも取れるのだから、と述べている(サルコジ大統領再選後も大臣の椅子にとどまりたいた言うことなのでしょう。そしてサルコジ大統領に合わせて、猛烈に働く大臣像を示したいようです)。

一方、クリスマス休暇が全く取れないかもしれない大臣たちもいる・・・オルトフー内相は、24・25日の2日だけパリでクリスマスを楽しんだ後、26日(日曜日!)にはもうオフィスで執務を行うことになっている(付き合う官僚たちが気の毒ではあります)。27日からの週には、地方とパリでいくつかのスケジュールがすでに入っている。大晦日の夜も、治安の維持に当たる警官たちと共に過ごすそうだ。アリオ=マリ外相は、二人の大統領がお互いに引き下がらず、国際問題化しているコートジボワールの状況次第では、休暇なしになる可能性も。ジュペ国防相もコートジボワールの状況に左右されかねない可能性があるうえ、25日前後にアフガニスタンを訪問することが決まっており、さらにはジルマ・ルセフ新ブラジル大統領の就任式に出席することになっている。ただし、スケジュールが許せば、数日バスク地方で過ごすことになる。その際には、マンガ“Quai d’Orsay”(フランス外務省)を小脇に抱えて行くことになるだろう・・・

ということなのですが、最後に登場したマンガは、ブラン(Christophe Blain:絵とシナリオ)とランザック(Abel Lanzac:シナリオ)による作品で、今までの通念をひっくり返すようなフランス外交年代記。今年発行が始まったシリーズもので、ジュペ国防相も最近贈られたそうです。何しろ1993年から95年まで外相を務めていたジュペ氏ですから、このマンガに登場しているのでしょう。読まずにはいられないわけですね。

日本ではもうすぐ御用納め。政治家たちは、年末年始をどう過ごすのでしょうか。もしかすると、閣僚たちの冬休み、その過ごし方にもお国ぶりが出ているのかもしれないですね。他の国々では、どうなっているのでしょう・・・