ふりかえれば、フランス。

かつて住んでいたフランス。日本とは似ても似つかぬ国ですが、この国を鏡に日本を見ると、あら不思議、いろいろと見えてきます。

雪は降る、あなたは来ない・・・誰の責任?

2010-12-10 21:17:43 | 社会
♫ 雪は降る あなたは来ない・・・
♫ Tombe la neige
Tu ne viendras pas ce soir
Tombe la neige
Et mon coeur s’habille de noir・・・
ご存知、アダモ(Salvatore Adamo)の『雪は降る』です。1963年の曲ですから、もうすぐ半世紀。今だに世界中の(特に日本の)シャンソン・ファンの心に息づく名曲ですね。でも、そんな悠長な気分に浸っていられないのが、今週のフランス人。特にパリ周辺の人々。日本のメディアも伝えているように、久しぶりの大雪に見舞われています。

道路は大渋滞、凍結した道路では事故が多発、鉄道にも大きな影響が。そして飛行場も一時閉鎖され、多くのフライトが遅延やキャンセルに。特に被害甚大だったのが、道路交通。夕方通常通りにオフィスを出たのに、家に着いたのが午前2時とか3時になったり、積雪で動けなくなったクルマの中で一晩過ごすはめになったり、クルマを諦めて徒歩で家路を急いだり。迷惑を被った人が多ければ、当然責任追及も激しくなる。どんな非難が発せられ、誰がどう責任を負うのか・・・9日の『ル・モンド』(電子版)が伝えています。

気象庁はこんなに大雪になるとは予想していなかった。そのため、除雪作業に当たる部署は不意を突かれたようなもので、対応が後手に回ってしまったのだ・・・フィヨン首相は、降雪による大混乱の責任を、適切な予報を出さなかった気象庁に帰そうとした。もちろん、クルマの中や空港で一晩過ごさなければならなかった人たちや、公共交通機関の遅れなどで影響を被った人たちへの気持はわかる、と付け加えることは忘れなかったが。

しかし、気象庁は、火曜日(7日)の午後4時にはパリ周辺のイル・ド・フランス(l’Ile-de-France)地方に降雪注意報を出しており、水曜の夜10時まで継続して出していた。この間が降雪の激しかった時間帯で、しかも気象庁は、水曜の夜、雪がやんでも気温が下がり道路が凍結する恐れが高いので注意が必要だと警報を出していた。このように、気象庁は注意をしっかりと喚起していたのだが、一つだけ問題になるのは、降雪を10センチ程度と予想していたことで、実際には1987年以来となる15センチほどの大雪になってしまった。

木曜の午後になって、ようやく状況は回復してきている。パリ周辺では、4本の国道がまだ通行止めになっており、また10本ほどの主要道路が大渋滞しているが、他の道路では渋滞も解消されている。2,500台ものトラックが主に高速道路上でストップしたまま夜を過ごしたが、次第に動き始めている。雪は水曜の夜にはやんだが、その後、道路は凍結しスケート場と化してしまった。

最も影響が大きかった、パリ南西、イヴリンヌ(Yvelines)県では、2,005人の人々が収容センターで夜を過ごし、職場から帰宅できなかった人々は職場で夜を過ごすことになった。例えば、ルノーの研究所では3,000人がオフィス内で一夜を過ごした。

木曜の朝には、雪山用のブーツを履き、厚手のズボンにダウンジャケット姿という「道路の難破者」たち(les naufragés de la route)が、乗り捨てた自分の車を引き取りにやって来ていた。

労働組合は、こうした混乱は警察や自治体など対応する公務員や装備が削減されてきた結果であり、政府の責任は大きいと非難。それに対し、オルトフー(Brice Hortefeux)内相は、天候が急激に悪化したことが原因だが、ヨーロッパの他の国々での対応を参考に改善するよう専門家チームに命じたと述べている。また、交通担当大臣の報道官は、通常の天候でも渋滞はあるわけで、そこに雪が加わればひどい渋滞になるのは当然だと、あたかも問題がなかったような口ぶり。パリ首都圏の道路交通担当者は、準備が不十分だったのではないかという意見を否定したうえで、除雪作業用の装備は地方ごとの気候に応じてなされており、通常降雪の多くないパリ周辺には、砂を撒きながら除雪する作業車は80台しか備えられていないと説明している・・・

陸の交通も空の交通も、一部を除いて、木曜の夜には通常に戻りつつあるようですが、何しろパリ周辺では23年ぶりの大雪。国や市の対応にも不十分なところがあったのでしょうが、France2のニュース番組によると、スノータイヤの装着率が近隣諸国に比べて非常に低いそうで、市民側の準備不足も混乱に拍車をかけたようです。しかし、困った時には必ず「連帯」精神の発揮されるお国柄。今回も、渋滞で動かなくなってしまった車のドライバーたちに、ホット・チョコレートなど温かい飲み物をサービスする沿線の住民たち、店舗を開放して暖を取れるようにした店、横になれるようマットや布団を用意した寝具店など、ちょっといい話の主人公たちが多くいました。政治が責任転嫁や責任逃れに終始していれば、市民から「ノン」を突き付けられること間違いなしですね。

喉元過ぎればで何ら改善策を講じないのか、たとえ20年とか30年に一度の自然災害であっても、同じ混乱を繰り返さないようにしっかりとした対応策を講じるのか、現政権、そしてフランス政治の姿勢がそこに現れてくるのではないでしょうか。もちろん、同じようなことは、どこの国でも言えることだと思いますが。

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