国会議員と知事や市長などの兼務、日本ではどうなっているのでしょうか。最近、何かと話題になっている名古屋市の河村市長が、首長と国会議員の兼職を認めるべきだ、と主張しているそうなので、今のところ兼ねることはできないのでしょうね。
それがフランスでは、認められています。国会議員が地方圏や県、主要都市などのトップを兼ねる場合が多くある・・・例えば、サルコジ大統領も、1983年から2002年までパリ西郊、富裕層の多く住むヌイイ市(Neuilly-sur-Seine)の市長を務めていましたが、そのうち1988年からは国会議員あるいは大臣との兼務でした。フランスでは、国会議員であっても、大臣に任命されると、議員を辞職しなくてはいけない、つまり議員と大臣の兼務は認められておらず、兼務と言えば、首長と国会議員、あるいは首長と大臣の兼務になります。
さて、フランスにおける国会議員や大臣と首長の兼務、どのような利点があり、またどのような問題があるのでしょうか。20日の『ル・モンド』(電子版)が伝えていますが、記事は、社会党系の国会議員で、下院法律委員会の委員でもあるドジエール(René Dosière)氏がインタビューに答えたものです。
国会議員、特に大臣が地方政治の主要ポストを兼務するというのは、フランス独特のスタイルで、他の民主主義国家であまり例を見ない。実際、多くの大臣がすべての時間やエネルギーをその職務に傾注しているのではなく、地方政治での活動にもその一部を割り当てている。このことが、フランス政治が必ずしもうまく機能していないことの一因になっている。
大臣たちが兼務しているのは、地方圏、県、主要都市のトップだが、これらのポストだって、片手間にできるものではない。全精力を傾けて行うべき仕事だ。しかるに、兼務によってどういう事態になっているかというと・・・ある大臣がその職務を全うしている間、その兼務先である地方政治は協力者によって遂行されている。一方、地方に戻り、その地での職務を行っている期間は、大臣としての職務は官房たち、つまり官僚によって行われている。従って、フランスは必ずしも政治家によって運営されているのではなく、官僚、テクノクラートが舵を取っている場合も多いということだ。
こうした兼職の背景にあるのは、地域の声に耳を傾け、その声をより効率的に国政に反映させていくために兼職を認めるべきだ、という意見だ。しかし、地方と国政の利害が衝突する場合はどうすればいいのだろうか。どちらかを優先させるべきなのか、あくまで中立を貫き通すべきなのか。
典型的な例が、リシェルト(Philippe Richert)担当大臣のケースだ。11月の内閣改造で、地方自治体担当大臣に就任したが、以前からアルザス地方圏議会の議長を務めている。アルザス地方圏議長としては、アルザス地方の利害を守ることを優先すべきだが。一方地方自治担当大臣としては、全国の地方自治の利害を守り、均衡のとれた決定を下すことが求められる。それを一人の人間が担うと、ふたつの職務の間でどうバランスを取ることができるのだろうか。このようなケースは、フランス以外では見られない。
兼職に関して指摘されるもう一点は、給与だ。現在、大臣は地方での兼務と合わせて、大臣報酬の1.5倍までの給与を手にすることが認められている。つまり、毎月21,000ユーロ(約230万円)まで貰えることになっている(ということは、大臣報酬は毎月14,000ユーロですから、約150万円ということになります)。兼職部分の給与を削減すべきだと提案したことがあるが、賛同は得られなかった。
しかし、政治活動にかかわるカネを透明化しようという提案が与党・UMPの議員から出されており、その一部に兼職の場合の給与低減が盛り込まれている。大臣の場合、議員報酬の半分に相当する額、つまり2,700ユーロ(約30万円)しか大臣報酬にオンできないとする提案だ(ということは、議員報酬は毎月5,400ユーロ、つまり60万円弱ということになりますね。少ない)・・・
ということなのですが、上記の提案が可決されると、地方政治と兼務している大臣の給与は、現在の14,000+7,000=21,000ユーロから、14,000+2,700=16,700ユーロへ約20%の給与削減になります。はたして受け入れられるでしょうか。
最初にご紹介したように、フランスでは大臣就任とともに国会議員の職を辞さねばならない。立法権と行政権の分立という意味からは正しいと思うのですが、大臣ポストは、いつ首を切られるか分からない。ただの人になっては、収入源が無くなる。その保険の意味もあって、地方政治でのポストを得ているのではないかと思うのですが、確かに、週末だけ地方へ戻って仕事をするという訳にはいかないですから、両立は難しそうですね。ただし、閣議が毎日のようにあるのではなく、毎週火曜だけですので、国会の合間を縫って、頻繁に地方へ戻ることは可能なのでしょうが、その分大臣の職務が疎かにならないか・・・国会議員と首長の兼務なら、まだ何とか両立できそうですけれど。
ところで、議員報酬、フランスでは毎月60万円弱ですが、日本では、歳費として130万1,000円。これだけでもフランスの倍以上になりますが、さらにプラスして、文書通信交通滞在費が100万円。もちろんボーナスもあって、その額、635万4,480円。年収では3,429万480円になるそうです。議員報酬が多いとされるアメリカですら1,700万円、ヨーロッパ諸国では1,000万円程度が多いそうですから、日本の国会議員報酬は突出しているのですね。その報酬に見合うだけのだけの仕事をしてくれていれば何も文句はないのですが・・・出でよ、平成の坂本龍馬、と叫びたくもなります。
それがフランスでは、認められています。国会議員が地方圏や県、主要都市などのトップを兼ねる場合が多くある・・・例えば、サルコジ大統領も、1983年から2002年までパリ西郊、富裕層の多く住むヌイイ市(Neuilly-sur-Seine)の市長を務めていましたが、そのうち1988年からは国会議員あるいは大臣との兼務でした。フランスでは、国会議員であっても、大臣に任命されると、議員を辞職しなくてはいけない、つまり議員と大臣の兼務は認められておらず、兼務と言えば、首長と国会議員、あるいは首長と大臣の兼務になります。
さて、フランスにおける国会議員や大臣と首長の兼務、どのような利点があり、またどのような問題があるのでしょうか。20日の『ル・モンド』(電子版)が伝えていますが、記事は、社会党系の国会議員で、下院法律委員会の委員でもあるドジエール(René Dosière)氏がインタビューに答えたものです。
国会議員、特に大臣が地方政治の主要ポストを兼務するというのは、フランス独特のスタイルで、他の民主主義国家であまり例を見ない。実際、多くの大臣がすべての時間やエネルギーをその職務に傾注しているのではなく、地方政治での活動にもその一部を割り当てている。このことが、フランス政治が必ずしもうまく機能していないことの一因になっている。
大臣たちが兼務しているのは、地方圏、県、主要都市のトップだが、これらのポストだって、片手間にできるものではない。全精力を傾けて行うべき仕事だ。しかるに、兼務によってどういう事態になっているかというと・・・ある大臣がその職務を全うしている間、その兼務先である地方政治は協力者によって遂行されている。一方、地方に戻り、その地での職務を行っている期間は、大臣としての職務は官房たち、つまり官僚によって行われている。従って、フランスは必ずしも政治家によって運営されているのではなく、官僚、テクノクラートが舵を取っている場合も多いということだ。
こうした兼職の背景にあるのは、地域の声に耳を傾け、その声をより効率的に国政に反映させていくために兼職を認めるべきだ、という意見だ。しかし、地方と国政の利害が衝突する場合はどうすればいいのだろうか。どちらかを優先させるべきなのか、あくまで中立を貫き通すべきなのか。
典型的な例が、リシェルト(Philippe Richert)担当大臣のケースだ。11月の内閣改造で、地方自治体担当大臣に就任したが、以前からアルザス地方圏議会の議長を務めている。アルザス地方圏議長としては、アルザス地方の利害を守ることを優先すべきだが。一方地方自治担当大臣としては、全国の地方自治の利害を守り、均衡のとれた決定を下すことが求められる。それを一人の人間が担うと、ふたつの職務の間でどうバランスを取ることができるのだろうか。このようなケースは、フランス以外では見られない。
兼職に関して指摘されるもう一点は、給与だ。現在、大臣は地方での兼務と合わせて、大臣報酬の1.5倍までの給与を手にすることが認められている。つまり、毎月21,000ユーロ(約230万円)まで貰えることになっている(ということは、大臣報酬は毎月14,000ユーロですから、約150万円ということになります)。兼職部分の給与を削減すべきだと提案したことがあるが、賛同は得られなかった。
しかし、政治活動にかかわるカネを透明化しようという提案が与党・UMPの議員から出されており、その一部に兼職の場合の給与低減が盛り込まれている。大臣の場合、議員報酬の半分に相当する額、つまり2,700ユーロ(約30万円)しか大臣報酬にオンできないとする提案だ(ということは、議員報酬は毎月5,400ユーロ、つまり60万円弱ということになりますね。少ない)・・・
ということなのですが、上記の提案が可決されると、地方政治と兼務している大臣の給与は、現在の14,000+7,000=21,000ユーロから、14,000+2,700=16,700ユーロへ約20%の給与削減になります。はたして受け入れられるでしょうか。
最初にご紹介したように、フランスでは大臣就任とともに国会議員の職を辞さねばならない。立法権と行政権の分立という意味からは正しいと思うのですが、大臣ポストは、いつ首を切られるか分からない。ただの人になっては、収入源が無くなる。その保険の意味もあって、地方政治でのポストを得ているのではないかと思うのですが、確かに、週末だけ地方へ戻って仕事をするという訳にはいかないですから、両立は難しそうですね。ただし、閣議が毎日のようにあるのではなく、毎週火曜だけですので、国会の合間を縫って、頻繁に地方へ戻ることは可能なのでしょうが、その分大臣の職務が疎かにならないか・・・国会議員と首長の兼務なら、まだ何とか両立できそうですけれど。
ところで、議員報酬、フランスでは毎月60万円弱ですが、日本では、歳費として130万1,000円。これだけでもフランスの倍以上になりますが、さらにプラスして、文書通信交通滞在費が100万円。もちろんボーナスもあって、その額、635万4,480円。年収では3,429万480円になるそうです。議員報酬が多いとされるアメリカですら1,700万円、ヨーロッパ諸国では1,000万円程度が多いそうですから、日本の国会議員報酬は突出しているのですね。その報酬に見合うだけのだけの仕事をしてくれていれば何も文句はないのですが・・・出でよ、平成の坂本龍馬、と叫びたくもなります。