ふりかえれば、フランス。

かつて住んでいたフランス。日本とは似ても似つかぬ国ですが、この国を鏡に日本を見ると、あら不思議、いろいろと見えてきます。

受動喫煙で、年間60万人が死亡! 喫煙は殺人行為か?

2010-12-07 21:14:03 | 社会
6日、日本のニュース番組が、受動喫煙による死者が日本で年間6,800人に上ると紹介していました。職場での受動喫煙の影響が大きいそうで、働く場所でいかに受動喫煙を減らす事ができるのか。禁煙にしたり、分煙にしたり。しかし、企業によってはそのようなスペースも予算もないというところも少なくありません。国によるアイディア紹介、予算補助などが必要だということでしたが、日本だけで6,800人という受動喫煙による死亡者、世界ではどのくらいになるのでしょうか。日本の人口は世界人口の約60分の1。6,800X60で40万8,000人となりますが、実際にはさらに多い・・・などと面倒な講釈を述べる必要はありませんね。タイトルに出ています、60万人!

この60万人という数字は、1823年に創刊され、世界で最も権威ある医学雑誌のひとつと言われる“The Lancet”(『ザ・ランセット』)が公表したもので、実際に調査に携わり、論文にまとめたのは、スウェーデンのストックホルムに拠点を置くカロリンスカ研究所(l’Institut Karolinska:ノーベル生理学医学賞の選考委員会はここにあります)と世界保健機構(WHO:仏語ではOMS)。その概要を11月26日の『ル・モンド』(電子版)が伝えていました。

世界中の死亡者100人に1人が受動喫煙の影響によって亡くなっている。その数60万人。その中には、16万8,000人の子どもたちが含まれている。子どもたちは、受動喫煙の素、つまり喫煙者から逃れることができない。なぜなら、家族に喫煙者がいれば、子どもたちは家庭で否応なく受動喫煙を強いられてしまうからだ(日本では、子どもの健康を考えてなのか、壁紙とかに匂いが移ってしまうのを嫌がる奥さんに言われてか、ベランダでタバコを吸うホタル族が多いですね。その反動か、公共の場での喫煙は、相変わらずですね)。

能動喫煙、つまり自らの喫煙が原因による死者は年間510万人。受動喫煙を加えると、570万人が毎年タバコに煙のよって命を落としていることになる。

受動喫煙による死亡の直接的死因は、冠状動脈疾患によるものが37万9,000人、気管支疾患によるのが16万5,000人、喘息が3万6,900人、肺癌は2万1,400人。合計60万2,300人が調査対象となった2004年に受動喫煙で亡くなっている。

受動喫煙による死亡の28%を占める子どもの死者、その3分の2がアフリカと南アジアで起きている。これらの国々では、伝染病と受動喫煙の相乗効果で、死亡者数が多くなっていると見られる。

また受動喫煙による死亡者の家庭環境を世帯収入で見てみると、子どもの場合は低所得から中間所得層にかけてが多いのに対し、大人の場合は各所得層にまたがって広く分布している。例えばヨーロッパの高所得者層では、子どもの受動喫煙による死者はわずか7人だが、大人では3万5,388人に上る。それが調査対象となったアフリカの国々では、子どもの4万3,375人に対し、大人は9,514人(衛生状況、医療制度などが整備され、所得が上がれば、発展途上国での子どもの受動喫煙による死亡は減少するということなのでしょうね。それでも大人の受動喫煙は減らない。対策が急がれるわけです)。

公共の場での喫煙が全面禁止されている国に住む人口は、まだまだ少ない。カロリンスカ研究所と世界保健機構は、喫煙との戦いに関するWHOの枠組み協定の実施を強化するよう求めている。具体的には、タバコへの課税率のアップ、タバコのパッケージからブランド名を削除すること、同じくパッケージに健康に関する注意書きを明示することなどだ・・・

ということで、喫煙なのですが、2010年における日本の喫煙率は、23.9%。男女別では、男36.6%、女12.1%だそうです。実感と比べて、多いですか、それとも少ないですか。さまざまなデータがあるのですが、2002年には33.1%あったそうですから、わずか8年で10ポイントも減ったことになります。増税によるタバコ小売価格の上昇、健康志向も影響しているのでしょう。若い女性の喫煙率はどちらかというと上昇傾向にありますが、男性の減少幅が大きいようです。

2007年のOECD加盟国の男女別喫煙率では、日本の男性は41.3%で4位ですが、女性は12.4%で28位。女子たるもの、タバコなど吸うべからず、でしょうか。日本以上にこうした傾向が強いのが、韓国。男性は46.6%で2位ですが、女性はわずか4.5%で30位と調査対象国の中で最も少なくなっています。男女の差がさまざまな分野で残っている日本。そして日本以上に色濃く残っているように見える韓国。そんなことが喫煙率の男女差にも出ているのかもしれません。こうした男女差、もしかすると儒教の影響かもしれないと思います。中国駐在の経験から、儒教精神は本家・中国ではほぼ死滅してしまっているのではないかと思えるのですが、一方、日本ではまだ生き残っている。そして、日本以上にしっかり保たれているのが韓国だとも言われています。しかし、そんなふうに見えるのは、日本人が儒教を正しく理解していないからだ、と言う日本在住の中国人学者もいますが・・・

閑話休題。喫煙は、受動喫煙を通して、他人を病魔に引き渡す一助にもなる。喫煙者にはぜひ、吸い込んだタバコの煙をすべて自分の肺で吸収してほしいものです。そうできるようなタバコを、タバコ・メーカーは開発できないものでしょうか。そうできれば、非喫煙者からの文句も減るでしょうから。