平和エッセイ

スピリチュアルな視点から平和について考える

『ダ・ヴィンチ・コード』というトンデモ本(3)

2006年05月21日 | Weblog
【謎の手?】

『ダ・ヴィンチ・コード』では、謎の手が神秘めかして語られていますが、これもダン・ブラウンの無知を証明しています。

ダン・ブラウンによると、ペテロはイエスの妻であるマリアを殺そうとしているのだそうです。ペテロの左手は「手刀」の形になって、マリアの首を威嚇しているといいます。しかし、これは、原図の破損による不鮮明さが生んだ妄想です。先にあげたサイトの復元図を見てみると、ペテロはヨハネの肩に手をかけ、自分のほうに引き寄せていることがわかります。別に手刀でマリアを威嚇しているわけではありません。また手刀くらいで人を殺せるものではありません。

また本の中では、ナイフを持った宙に浮く、誰の手かわからない謎の手についても語られています。ところが、これも復元図を見ると、ペテロの右手であることがはっきりわかります。

「最後の晩餐」というのは、新約聖書の「マルコによる福音書」14:17-26 や「ルカによる福音書」22:14-23を描いたものです。そのとき、イエスは自分が裏切られることになるだろう、と予言し、弟子たちに最後のメッセージを伝えます。ペテロは激しい性格の男なので、怒りに駆られ、「その裏切り者は誰だ。イエス様に聞いてくれ」と、イエスの隣にすわっていたヨハネの肩を引き寄せ、問いただしているのです。その結果、イエスとヨハネの間に空間ができ、Mのように見えるだけです。

ナイフは、裏切り者を殺してやる、というペテロの怒りを示していますし、その後、捕縛者たちが来たとき、ペテロは実際にナイフを振るって、一人の男の耳を切り落とし、イエスにたしなめられます。福音書に書かれたそういう事実を踏まえてこの絵は描かれているのです。イエスが弟子の裏切りと自分の死を予言する場面で、ペテロがなぜマリアを殺さなければならないのか、まったくわかりません。

ところが、ダン・ブラウンは聖書に関する基本的知識なしに、破損の激しいテンペラ画をもとに妄想を膨らませているわけですが、これも『マグダラとヨハネのミステリー』からのパクリなのだそうです。

コンピュータ・グラフィックスによる復元図はNHKによって作成されたものです。海外のトンデモ本の著者たちは、これを見ていなかったのでしょう。


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