平和エッセイ

スピリチュアルな視点から平和について考える

虚空の音(2007年4月号)

2007年06月22日 | バックナンバー
 『地球交響曲(ガイア・シンフォニー)第六番』の試写会に招かれた。

 『地球交響曲』は龍村仁監督が制作するドキュメンタリー映画で、その第一番は一九九二年に上映された。この作品は、大手配給会社によって上映される娯楽映画ではないので、第一番は上映してくれる映画館さえなかった。そこで、監督みずからがチケットを買い取り、自分で売り歩いて上映にこぎつけたという。しかし、その内容の素晴らしさに感動した観客が、公民館や市民会館を借り、自分たちで自主上映を開始した。評判が評判を呼び、この映画は口コミで広まっていき、現在では、のべ二百万人以上の人々がこのシリーズを観ている。

 『地球交響曲』は第一番から常に、「地球の声が聞こえますか」という冒頭のメッセージで始まっているが、第六番のテーマはまさに「音」である。試写会に先立ち、龍村監督は、

 「地球の生命システムというものは、オーケストラが奏でる交響曲のようなものだと思う。そのオーケストラには無数の存在が奏者として加わっているけれど、美しい交響曲を奏でるためには、各パートが他の奏者の奏でる音を聞き、自分の音をそれと調和させなければならない。ところが、現在の地球では、人類が他の存在の音に耳を傾けず、ハーモニーを破っているのではないか。第六番は、まさに「音」をテーマにしている。映画の中では音楽のような具体的な音が紹介されるけれど、その背後に「虚空の音」のようなものがある。それを感じていただければうれしい」

 と挨拶した。

 最近発表された、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の報告書も指摘しているように、地球の温暖化、地球環境の悪化は、現在すでに危険水域に達している。人類は、自分たちの快適な文明生活を維持するために、地球環境に大きな負荷をかけ、他の動植物の生存をおびやかしている。地球環境が異変を起こし、多くの生物種が絶滅したら、人類もまた生存できなくなる。今日の人類は、いわば自分がすわっている木の枝を、自分で切り落とそうとしているようなものである。

 このような愚行は、人類が、動植物、水、空気、鉱物など、地球上の諸々の存在が発しているメッセージを聴き取る能力を失ってしまったところから生じている。それらは、耳に聞こえる音ではないが、私たちが感受性を高めれば、確実に受けとめることができるものなのである。いま私たちに必要とされているのは、このような聞こえない音、見えない光を感受する感性の開発ではないか。映画の美しい音と映像にひたりながら、そういうことを考えたのであった。

※この試写会は毎日新聞社の主催で、虎ノ門のニッショーホールで2007年2月17日に開かれたものです。

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