平和エッセイ

スピリチュアルな視点から平和について考える

渥美和彦氏と統合医療

2007年06月07日 | Weblog
6月5日に渥美和彦氏の講演を聞きました。

渥美氏は、東大医学部名誉教授で、日本ではじめて人工心臓を開発し、レーザー医療を導入するなど、最先端医療に従事してきた医学者です。手塚治虫の同級生で、「鉄腕アトム」の「お茶の水博士」のモデルの一人だそうです。(もう一人のモデルは小松左京)。そう言われれば、たしかに顔が似ています。

渥美先生は現在、JACT理事長で、西洋医学と代替医療・伝統医療を統合した統合医療の重要性を語ってくれました。

伝統医療というのは、西洋近代医学が導入されるまで、それぞれの文化圏で行なわれていた医療です。日本でいえば、鍼灸、指圧、按摩、漢方薬などがありますが、これは中国から輸入した要素が含まれています。インドにはアーユルヴェーダ医学があり、チベットにはチベット医学があります。ヨーロッパにはホメオパシーがあります

ところが、近代になって西洋医学が科学的医療として独占的な地位を確立すると、そういう伝統医学は非科学的な迷信的医療として、劣等的な地位に追いやられてしまいました。

西洋医学が感染症の治療や予防などに大きな成果をあげてきたことは事実です。しかし、西洋医学ではいまだに治療できない病気が多々あります。そういう病気に、意外と伝統医療が効果があったりするのです。

近年、西洋医学からは蔑視されてきた伝統医療が、再評価され、英語ではalternative medicine(別の医療、代替医療)と呼ばれるようになりました。代替医療には、伝統医療だけでなく、最近になって開発された、非正統的な(つまり、大学医学部でまだ承認されていない)医療も含まれます。

西洋医学と代替医療には以下のような違いがあります。
 西洋医学:分析的、臓器を治す
 代替医療:全体的、健康を回復させる

 西洋医学:原因を特定し、除去する
 代替医療:免疫力を高め、自然治癒を目指す


西洋医学は現在では、細胞、遺伝子、量子のレベルまで細分化されつつありますが、それによって、病人は様々な医療機器に縛りつけられ、当の人間の生活の質が置き去りにされてしまっている感がなきにしもあらずです。

極端な話、西洋医学では、病気は治ったが、人間は死んだ、ということも起こります。代替医療にはそういう非人間性はありません。

もっとも、代替医療は玉石混合というか、たくさんの石の中に少し玉が混じっている程度で、西洋医学の立場から、その効果を検証することが重要だ、と渥美先生は述べていました。つまり、21世紀の医療は、近代西洋医学と代替・伝統医療を統合した統合医療になるべきだ、という考えです。

これまでの西洋医学というものは、この病気に対してこの薬を飲めば、この程度の数の人がよくなりますよ、という確率の医学ですが、その確率に入らなかった人は治らないわけです。治療というものはこれからは個人個人に合わせたオーダーメイドになるべきだし、そういう道が開けつつあるとのことです。

現在では、タンパク質チップというものが開発され、どの治療法がその人にとって最も有効か、ということがかなり正確にわかる道が開けてきた、ということです。つまり、ある薬なり、サプリメントなりを摂取する前と後でタンパク質チップの変化を調べて、それがどの程度効いたのかがわかるようになりつつあるということです。

代替医療、統合医療についてはアメリカが進んでいて、日本は非常に遅れているとのことです。アメリカで代替医療が盛んになったのは、アメリカには日本のような完備された健康・医療保険制度がないことが最大の原因のようです。自腹で医療費を支払わなければならないので、コンシューマーの立場から、真に自分にとって有効で、経費的にもリーズナブルな医療を求めるようになるわけです。

これに対して、日本では立派な保険制度がありますが、保険金は西洋医学的治療にしか支払われず、代替医療では保険が認められないことが多いのです。日本の医学界はそれにあぐらをかいて、世界の医学界の動向については無知もいいところで、まるで鎖国状態だそうです。患者は、コンシューマーの立場から、自分たちにとってよりよい医療を要求していかなければならない、と渥美先生はと言っていました。

さらに、健康な生活には、きれいな水や空気といった自然環境が重要で、そのためにも持続可能な世界、平和な世界が築かれねばならないし、最終的には、身体と心は相関しているので、身体が健康になると同時に、心の立派な人間を育てていく必要がある、というお話でした。

渥美先生は、東大医学部という西洋医学の牙城で最先端のお仕事をしながら、その限界を知り、真に人間のため、患者のための医療を目指す、立派な先生でした。


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