〇イラク問題
ハリケーン・カトリーナははからずも、アメリカ国民の目をあらためてイラク問題に向けさせることになりました。
自国がこんな大災害に見舞われているのに、イラクに軍隊を派遣している場合か、という意見が出てきています。とくに、ハリケーンの直撃を受けたルイジアナ州とミシシッピ州から多数の州兵がイラクに派遣されているから、よけいです。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050903-00000042-mai-int
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<米大統領>ハリケーンで高まる批判 初動遅れ深刻
【ワシントン及川正也】米史上最悪ともいわれる大型ハリケーン「カトリーナ」の被害拡大をめぐり、ブッシュ米大統領への風当たりが強まっている。連邦政府の初動の遅れに批判が出ているのに加え、ガソリン価格も大統領の便乗値上げへの警告をよそに上昇しているためだ。支持率低迷を招いているイラク戦争とガソリン高騰への批判にハリケーン災害が追い打ちをかけた形だ。ブッシュ政権は「三重苦」を抱え、01年の同時多発テロ以降、最大の正念場を迎えている。
大統領は2日、視察先のミシシッピ州で、イラクに投入している州兵や資金を国内に振り替えるべきだとの意見がある、との記者団の質問にこう答えた。「賛成できない。テロとの戦いも被災者支援も両方やる。それだけの能力がある」
国防総省や米メディアによると、イラクには、最大の被災地となったルイジアナ州から3000人、ミシシッピ州から3800人の州兵を派遣。復旧や後方支援、治安確保が主な仕事だけに「災害救援に欠かせない集団」とされる。
十分な州兵が残っていれば(1)ハリケーン襲来前の住民避難に動員できた(2)被災直後に迅速に対応できた――が専門家の指摘だ。「無法状態化」したルイジアナ州ニューオーリンズの避難所に州兵の姿が見えず、初動の遅れだと問題になった。
2日になって避難所での州兵の活動が活発化したが、避難者は「海外に軍隊を派遣できても、ここには来ない」と不満を強め、ハリケーン被害拡大が、不透明感を増すブッシュ政権のイラク政策への批判に飛び火する可能性もある。
昨年来のガソリン価格上昇への批判も一段と強まっている。ハリケーン襲来でメキシコ湾岸の石油施設はほとんどが生産を停止し、高騰に拍車がかかった。価格抑制策として大統領は戦略石油備蓄の放出に踏み切ったが、1日付の米ギャラップ社などの調査では、米国民の7割が痛手を被ったと感じ、政権のガソリン高騰対策への支持も2割にとどまっている。
大統領は以前、地元テキサス州で石油発掘会社を興すなど石油業界と縁が深い。民主党のハワード・ディーン全国委員長は「国民に協力を求める前に、大手石油会社の友人に、便乗値上げをやめるよう求めるべきだ」と皮肉った。
大統領は2日の視察では、荒廃ぶりに時に涙を浮かべ、被災者の女性2人を抱きしめ励ます光景も見られた。初動の不手際を批判された同時多発テロでは、後に被災地視察を成功させ空前の支持率を記録、米メディアには「大統領が勝負に出た」との見方もある。
米政府は4日までに被災地に州兵3万人を送り込み、原子力空母「ハリー・トルーマン」まで動員する救援作戦を実施する予定だ。連邦緊急事態管理局(FEMA)のブラウン局長は2日、「状況は数日中にめざましく改善するだろう」と指摘した。
ブッシュ大統領は救援活動をうまくこなし、これを支持率回復の踏み台にしたい考えだが、議会などは初動の遅れや甚大な被害に及んだ連邦政府の結果責任を追及する構えも見せており、大統領の思惑通りに運ぶ見通しはついていない。
(毎日新聞) - 9月3日12時58分更新
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州兵が州に残っていたら、救援活動はもっと迅速に行なえたかもしれません。
ハリケーンは予見できなかった、というのは言い訳になりません。このところ毎年のように、南部諸州は巨大なハリケーンに襲われていたので、いつ大災害が起こっても不思議ではなかったからです。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050903-00000059-kyodo-int
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「とてつもない災害」警告 6年前に米専門家
【ニューヨーク2日共同】1969年に米南部を襲い、256人の死者を出した超大型ハリケーン「カミル」の研究グループが6年前に報告書をまとめ、同じクラスのハリケーンに再び襲われた場合、大半が海抜ゼロメートル以下のルイジアナ州ニューオーリンズは「とてつもない水害」に見舞われ、多数の人命が失われる可能性があると警告していたことが2日分かった。
専門家の警鐘にもかかわらず、連邦や州、市当局が対策を怠ったため超大型ハリケーン「カトリーナ」の被害を防げなかったことになり、政府や地元当局への批判がさらに高まりそうだ。
カミルは米気象当局の5段階の分類で最も強烈な「レベル5」のハリケーン。「カミルから30年」と題した19ページの報告書は99年、被災30年を機にコロラド大の研究者がまとめた。
(共同通信) - 9月3日11時31分更新
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連邦政府は軍事費はどんどん使っても、防災のための金を出し惜しんだのでしょう。
アメリカはついに、アフガニスタンやイラクから軍隊の一部を被災州に引き上げることになりました。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050903-00000094-mai-int
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<米ハリケーン>被災州からイラク、アフガン派遣米兵帰国へ
AP通信によると、カタールに駐留する米中東軍の空軍報道官は3日、米南部を襲った大型ハリケーン「カトリーナ」の被災州からイラク、アフガニスタンに派遣されている空軍兵士300人を米国に戻すと発表した。対象は、米ミシシッピ州ビロクシ郊外の空軍基地から両国に派遣された兵士たち。2週間以内に帰国を始める。
(毎日新聞) - 9月3日22時55分更新
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この兵士たちは「撃ち方も殺し方も知っている」わけです。
しかし、これは全体からすればごく一部です。ブッシュ大統領はいまだにイラクから全面撤兵することは考えていません。
イラク戦争にアメリカはこれまで膨大なお金をつぎ込んでいます。立花隆氏のブログより――
http://nikkeibp.jp/style/biz/topic/tachibana/media/050822_trillion/
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ニューヨーク・タイムス紙を少し丹念に読んでいたら、Aセクションの後ろの方に、「3兆ドル戦争(Three Trillion Dollar War)」という特設欄があって、イラク戦争(アフガニスタン戦争を含む)にどれだけ費用がかかっているか(いまなお、それがどれだけ拡大しつつあるか)を数字できちんとわかりやすく示している(その数字は毎日更新されている)ことに気づいた。
年々膨れ上がるイラク戦争のコスト
その主な数字をここに示しておく(以下わかりやすくするため、1ドル=100円で換算、つまり100億ドル=1兆円)。
■すでに使った戦費…25兆8000億円
■これからの5年間にかかる戦費…46兆円
<その内訳>
・作戦費(武器弾薬、燃料等消耗品の調達費を含む)…34兆5000億円
・新兵補充費…5000億円
・戦争周辺国家(パキスタン、ヨルダン、トルコなど)への援助…1兆円
・装備の更新費用(航空機、ヘリコプター、車両、船舶、武器など)…10兆円
■退役兵にかかるコスト…31兆5000億円
<その内訳>
・医療費と退役兵に与えられる特別手当、給付金(教育ローン、住宅ローンなど)の後年負担分…9兆円
・兵ならびに軍属で戦場で傷害者となった者への長期支払い年金、手当など…22兆5000億円
■戦費の赤字分の繰延べ償却費用(利息のみ)…22兆円
(戦費赤字は自動的に5年単位で何度も繰延べ償却される)
■戦争によって原油価格が5ドル上昇したことでもたらされた米経済全体へのマイナス効果(IMFの試算による)…11兆9000億円
(その後、原油価格はそれどころでなく高騰している)
総計…137兆2000億円
まだ3兆ドル(300兆円)戦争というにはちょっと遠いが、このままいけば確実に近未来にそのラインまで届くことは確実である。
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ハリケーンによる被害総額は11兆円にのぼると試算されています。イラク戦の出費ともあいまって、この被害はボディーブローのようにアメリカ経済に打撃を与えることでしょう。
イラクの治安はいまだ回復していません。イラクが新しい憲法を採択して、安定した政治が行なわれる見通しは立っていません。内戦と分裂の恐れさえあります。しかし、ここでイラクを見捨てたら、イラクを民主化するという開戦の大義名分が立たなくなります(もともといかがわしい大義名分だったわけですが)。ブッシュ大統領としては、イラクが安定するまでは、意地でも撤兵できないわけです。しかし、米軍が駐留するかぎり、反米テロはやみそうもありません。まさにジレンマです。
まもなく、イラクにおける米兵死者数は2000名になるでしょう。イラクから軍を引きあげるように、ブッシュ大統領にはますます強い圧力がかかるでしょう。経済の悪化とも重なって、アメリカは近い将来、否応なしにイラクから撤兵せざるをえない時が来るものと思われます。イラク問題は、国連にまかせるしかなくなるでしょう。
それは、国連安保理の決議なしにイラク戦争を始めたアメリカが、国連に頭を下げ、冷戦終結後の唯一の超大国の座から滑り落ちるということを意味します。
ハリケーン・カトリーナははからずも、アメリカ国民の目をあらためてイラク問題に向けさせることになりました。
自国がこんな大災害に見舞われているのに、イラクに軍隊を派遣している場合か、という意見が出てきています。とくに、ハリケーンの直撃を受けたルイジアナ州とミシシッピ州から多数の州兵がイラクに派遣されているから、よけいです。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050903-00000042-mai-int
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<米大統領>ハリケーンで高まる批判 初動遅れ深刻
【ワシントン及川正也】米史上最悪ともいわれる大型ハリケーン「カトリーナ」の被害拡大をめぐり、ブッシュ米大統領への風当たりが強まっている。連邦政府の初動の遅れに批判が出ているのに加え、ガソリン価格も大統領の便乗値上げへの警告をよそに上昇しているためだ。支持率低迷を招いているイラク戦争とガソリン高騰への批判にハリケーン災害が追い打ちをかけた形だ。ブッシュ政権は「三重苦」を抱え、01年の同時多発テロ以降、最大の正念場を迎えている。
大統領は2日、視察先のミシシッピ州で、イラクに投入している州兵や資金を国内に振り替えるべきだとの意見がある、との記者団の質問にこう答えた。「賛成できない。テロとの戦いも被災者支援も両方やる。それだけの能力がある」
国防総省や米メディアによると、イラクには、最大の被災地となったルイジアナ州から3000人、ミシシッピ州から3800人の州兵を派遣。復旧や後方支援、治安確保が主な仕事だけに「災害救援に欠かせない集団」とされる。
十分な州兵が残っていれば(1)ハリケーン襲来前の住民避難に動員できた(2)被災直後に迅速に対応できた――が専門家の指摘だ。「無法状態化」したルイジアナ州ニューオーリンズの避難所に州兵の姿が見えず、初動の遅れだと問題になった。
2日になって避難所での州兵の活動が活発化したが、避難者は「海外に軍隊を派遣できても、ここには来ない」と不満を強め、ハリケーン被害拡大が、不透明感を増すブッシュ政権のイラク政策への批判に飛び火する可能性もある。
昨年来のガソリン価格上昇への批判も一段と強まっている。ハリケーン襲来でメキシコ湾岸の石油施設はほとんどが生産を停止し、高騰に拍車がかかった。価格抑制策として大統領は戦略石油備蓄の放出に踏み切ったが、1日付の米ギャラップ社などの調査では、米国民の7割が痛手を被ったと感じ、政権のガソリン高騰対策への支持も2割にとどまっている。
大統領は以前、地元テキサス州で石油発掘会社を興すなど石油業界と縁が深い。民主党のハワード・ディーン全国委員長は「国民に協力を求める前に、大手石油会社の友人に、便乗値上げをやめるよう求めるべきだ」と皮肉った。
大統領は2日の視察では、荒廃ぶりに時に涙を浮かべ、被災者の女性2人を抱きしめ励ます光景も見られた。初動の不手際を批判された同時多発テロでは、後に被災地視察を成功させ空前の支持率を記録、米メディアには「大統領が勝負に出た」との見方もある。
米政府は4日までに被災地に州兵3万人を送り込み、原子力空母「ハリー・トルーマン」まで動員する救援作戦を実施する予定だ。連邦緊急事態管理局(FEMA)のブラウン局長は2日、「状況は数日中にめざましく改善するだろう」と指摘した。
ブッシュ大統領は救援活動をうまくこなし、これを支持率回復の踏み台にしたい考えだが、議会などは初動の遅れや甚大な被害に及んだ連邦政府の結果責任を追及する構えも見せており、大統領の思惑通りに運ぶ見通しはついていない。
(毎日新聞) - 9月3日12時58分更新
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州兵が州に残っていたら、救援活動はもっと迅速に行なえたかもしれません。
ハリケーンは予見できなかった、というのは言い訳になりません。このところ毎年のように、南部諸州は巨大なハリケーンに襲われていたので、いつ大災害が起こっても不思議ではなかったからです。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050903-00000059-kyodo-int
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「とてつもない災害」警告 6年前に米専門家
【ニューヨーク2日共同】1969年に米南部を襲い、256人の死者を出した超大型ハリケーン「カミル」の研究グループが6年前に報告書をまとめ、同じクラスのハリケーンに再び襲われた場合、大半が海抜ゼロメートル以下のルイジアナ州ニューオーリンズは「とてつもない水害」に見舞われ、多数の人命が失われる可能性があると警告していたことが2日分かった。
専門家の警鐘にもかかわらず、連邦や州、市当局が対策を怠ったため超大型ハリケーン「カトリーナ」の被害を防げなかったことになり、政府や地元当局への批判がさらに高まりそうだ。
カミルは米気象当局の5段階の分類で最も強烈な「レベル5」のハリケーン。「カミルから30年」と題した19ページの報告書は99年、被災30年を機にコロラド大の研究者がまとめた。
(共同通信) - 9月3日11時31分更新
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連邦政府は軍事費はどんどん使っても、防災のための金を出し惜しんだのでしょう。
アメリカはついに、アフガニスタンやイラクから軍隊の一部を被災州に引き上げることになりました。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050903-00000094-mai-int
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<米ハリケーン>被災州からイラク、アフガン派遣米兵帰国へ
AP通信によると、カタールに駐留する米中東軍の空軍報道官は3日、米南部を襲った大型ハリケーン「カトリーナ」の被災州からイラク、アフガニスタンに派遣されている空軍兵士300人を米国に戻すと発表した。対象は、米ミシシッピ州ビロクシ郊外の空軍基地から両国に派遣された兵士たち。2週間以内に帰国を始める。
(毎日新聞) - 9月3日22時55分更新
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この兵士たちは「撃ち方も殺し方も知っている」わけです。
しかし、これは全体からすればごく一部です。ブッシュ大統領はいまだにイラクから全面撤兵することは考えていません。
イラク戦争にアメリカはこれまで膨大なお金をつぎ込んでいます。立花隆氏のブログより――
http://nikkeibp.jp/style/biz/topic/tachibana/media/050822_trillion/
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ニューヨーク・タイムス紙を少し丹念に読んでいたら、Aセクションの後ろの方に、「3兆ドル戦争(Three Trillion Dollar War)」という特設欄があって、イラク戦争(アフガニスタン戦争を含む)にどれだけ費用がかかっているか(いまなお、それがどれだけ拡大しつつあるか)を数字できちんとわかりやすく示している(その数字は毎日更新されている)ことに気づいた。
年々膨れ上がるイラク戦争のコスト
その主な数字をここに示しておく(以下わかりやすくするため、1ドル=100円で換算、つまり100億ドル=1兆円)。
■すでに使った戦費…25兆8000億円
■これからの5年間にかかる戦費…46兆円
<その内訳>
・作戦費(武器弾薬、燃料等消耗品の調達費を含む)…34兆5000億円
・新兵補充費…5000億円
・戦争周辺国家(パキスタン、ヨルダン、トルコなど)への援助…1兆円
・装備の更新費用(航空機、ヘリコプター、車両、船舶、武器など)…10兆円
■退役兵にかかるコスト…31兆5000億円
<その内訳>
・医療費と退役兵に与えられる特別手当、給付金(教育ローン、住宅ローンなど)の後年負担分…9兆円
・兵ならびに軍属で戦場で傷害者となった者への長期支払い年金、手当など…22兆5000億円
■戦費の赤字分の繰延べ償却費用(利息のみ)…22兆円
(戦費赤字は自動的に5年単位で何度も繰延べ償却される)
■戦争によって原油価格が5ドル上昇したことでもたらされた米経済全体へのマイナス効果(IMFの試算による)…11兆9000億円
(その後、原油価格はそれどころでなく高騰している)
総計…137兆2000億円
まだ3兆ドル(300兆円)戦争というにはちょっと遠いが、このままいけば確実に近未来にそのラインまで届くことは確実である。
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ハリケーンによる被害総額は11兆円にのぼると試算されています。イラク戦の出費ともあいまって、この被害はボディーブローのようにアメリカ経済に打撃を与えることでしょう。
イラクの治安はいまだ回復していません。イラクが新しい憲法を採択して、安定した政治が行なわれる見通しは立っていません。内戦と分裂の恐れさえあります。しかし、ここでイラクを見捨てたら、イラクを民主化するという開戦の大義名分が立たなくなります(もともといかがわしい大義名分だったわけですが)。ブッシュ大統領としては、イラクが安定するまでは、意地でも撤兵できないわけです。しかし、米軍が駐留するかぎり、反米テロはやみそうもありません。まさにジレンマです。
まもなく、イラクにおける米兵死者数は2000名になるでしょう。イラクから軍を引きあげるように、ブッシュ大統領にはますます強い圧力がかかるでしょう。経済の悪化とも重なって、アメリカは近い将来、否応なしにイラクから撤兵せざるをえない時が来るものと思われます。イラク問題は、国連にまかせるしかなくなるでしょう。
それは、国連安保理の決議なしにイラク戦争を始めたアメリカが、国連に頭を下げ、冷戦終結後の唯一の超大国の座から滑り落ちるということを意味します。